1兆5000億円超えのインフルエンサーマーケティング市場、VCも関心・インフルエンサー向けサービス続々

パンデミックでも拡大続けるインフルエンサー市場、2021年は1兆5000億円超え

インスタグラムやYouTubeなどで多くのフォロワーを持つ人々は「インフルエンサー」と呼ばれ、このインフルエンサーたちに企業がプロダクトやサービスの紹介を依頼することをインフルエンサーマーケティングという。

このインフルエンサーマーケティング市場、一時は飽和したように思われていたが、パンデミックをきっかけにしたデジタルシフトの加速で依然拡大を続けている。

Influencer Marketing Hubがこのほど実施した調査「Influencer Marketing Benchmark Report 2021」によると、インフルエンサーマーケティングの世界市場は2021年に138億ドル(1兆5164億円)に拡大する見込みだ。2018年の46億ドル(約5000億円)、2019年の65億ドル(約7142億円)、2020年の97億ドル(約1兆円)と右肩上がりの拡大を続けている

インフルエンサーマーケティングに携わるエージェンシーの数も増加傾向を続けている。2017年は420社にとどまるものだったが、2018年に740社、2019年に1120社に拡大。そして2021年は1360社と前年比で240社増となる見込みという。

インフルエンサーと聞くと、何十万・何百万人のフォロワーを持つ著名人を思い浮かべるかもしれないが、インフルエンサーマーケティング市場の根幹を支えるのは、フォロワー1万人前後のマイクロインフルエンサーと呼ばれる人々だ。

上記レポートは、インフルエンサーマーケティング・プラットフォームUpfluenceのデータを参考に、その状況を伝えている。

インフルエンサーマーケティング企業の間では、インフルエンサーをフォロワー規模に応じて以下のように分類している。

まず、一般的にインフルエンサーというイメージを持たれている100万人以上のフォロワーを持つ人々は「メガインフルエンサー」に分類される。

次いで、フォロワーが50万〜100万人を「マクロインフルエンサー」、10万〜50万人を「ミッドインフルエンサー」、5万〜10万人を「ライジングインフルエンサー」、1万5000〜5万人を「レギュラーインフルエンサー」、1万5000人以下を「マイクロインフルエンサー」と分類している。

Upfluenceのデータが示すところでは、インフルエンサーマーケティング企業が注目する層は、メガインフルエンサーではなく、マイクロインフルエンサーやレギュラーインフルエンサーであることが明らかになったのだ。

たとえば、2020年のインスタグラムで、インフルエンサーマーケティング企業が案件対象に選定したインフルエンサー層で最も多かったのは、57.8%のマイクロインフルエンサーだった。次いで、レギュラーインフルエンサーが23.57%、ライジングインフルエンサーが7%、ミッドインフルエンサーが8.62%、マクロインフルエンサーが1.4%、メガインフルエンサーが1.55%という結果になった。YouTubeでも同様の傾向が見られる。

インフルエンサーが抱える問題とソリューション

インフルエンサー人口構造は、おそらくメガインフルエンサーを頂点にピラミッド構造になっていると思われる。

上記レポートでは、ピラミッドの下部を支えるマイクロ/レギュラーインフルエンサーがインフルエンサーマーケティング企業に重宝されている状況が浮き彫りとなった。

今では多くのインフルエンサーが存在し、米国では100兆円超えといわれるフリーランスエコノミーを支える重要な存在になっている。

しかし、インフルエンサーを職業とする人々が増える一方で、インフルエンサーの社会的地位や信用に関する問題が依然存在しており、多くのインフルエンサーの頭を悩ましているのが現状だ。

特に支払いに関する問題は、インフルエンサーの生活に直結するため、多くが早急な課題解決を求めている。

たとえば、フリーランスとして働くインフルエンサーがいわゆる企業案件を受けるとき、企業からの支払いが遅延するという事態が頻繁に起こるため、インフルエンサーは家賃やクレジットカードの支払いが滞りがちになり、信用レーティングを下げてしまうということが問題視されている。

このインフルエンサーのお金の問題に、今多くのフィンテックスタートアップが参戦し、またこれらの企業に投資するベンチャーキャピタルも増え、インフルエンサー向けのサービス市場がにわかに盛り上がりを見せている。

注目サービスの1つは、スウェーデンと米国を拠点とする2019年創業のWillaだ。通常、フリーランスの人々が企業から支払いを受ける際、煩雑なペーパーワークが必要となり、支払いが遅くなることが多い。しかし、iOSアプリとして提供されているWillaを使うと、ペーパーワークを必要とせず、30秒で支払いを受けることができる。一方、フリーランサーの顧客企業はWillaに対し、30日、60日、90日などの期間で支払うことが可能だ。

Willaは2020年に米国でインバイトオンリーのベータ版を開始したが、口コミで人気が広がり2021年春頃にはAppStoreのトップ無料アプリにランクイン、また2021年7月時点では参加を待つウェイティングリスト人数が15万人に達している

Crunchbaseのデータによると、Willaは現時点でシリーズAの資金調達を終え、累計調達額は2100万ドル(約23億円)となっている

英国でもインフルエンサー向け支払いサービス、2021年8月に登場

米国だけでなく、英国でも同様のトレンドが起こっている。

2021年8月初めにローンチされたXPOは、Willaと同じくインフルエンサーやフリーランサー向けのフィンテックサービスだ。企業案件を終了してから24時間以内に支払いを受け取ることができる。

ローンチ時には、英国の数千人のクリエイターが参加し、2日間のライブで2万ポンド(約300万円)の支払いが行われたという。

XPO共同創業者の1人ロタンナ・エゼイケ氏は元金融大手バークレイズに務めた経歴を持つ人物。エゼイケ氏はSiftedの取材で、既存の金融機関はクリエイターらがどのように収益を得ているのか理解していないだけでなく、興味も持っていないと指摘。その上で、XPOでは若いクリエイターやインフルエンサー向けの金融エコシステムを構築することを計画していると語っている

CBSが報じたMorning Consultの調査では、米国の若い世代でインフルエンサーになりたいと考える割合は86%に上った。金融以外でもインフルエンサーやクリエイター向けのサービスが続々登場している。こうした欧米の動きが日本にどう影響してくるのか非常に気になるところだ。

文:細谷元(Livit

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