国際協力機構(JICA)は、2020年12月から、途上国のICU治療をサポートするため遠隔技術を駆使した医療支援について本格的な検討を開始していることを発表した。
日本の集中治療専門の医師や看護師と途上国の各病院のICU医療者を日本独自の通信システムで結び、技術的な助言や研修をすべて遠隔で行うというJICA初の取り組みだという。
新型コロナウイルス感染症が拡大・長期化するなか、各国で集中治療室(ICU)を必要とする重篤患者が増えている一方で、途上国ではICUの医療者の専門知識や技術、そして隔離病床の施設や設備の不足により、治療体制が追い付かない状況をふまえ、同取り組みの実施に至ったとしている。
人の往来が難しいなかでも、デジタル技術を活用して途上国の新型コロナウイルス感染症の治療体制を向上させるため挑戦していくとのことだ。
まずは試験的に、バングラデシュの首都ダッカにあるイーストウエスト医科大学病院などを対象に、日本独自の遠隔ICU通信システムの導入やオンライン研修、そして知見を共有するために医師らに向けた準備会合などが始まっているとしている。
なお、この遠隔ICUサービスは、遠隔での集中治療サポートを手がけるT-ICUに委託して実施。
JICAはT-ICUと共に、これまで世界15か国で遠隔ICU通信システムが途上国でどのように活用できるかを調査してきたという。
その結果に基づいて、今後は、インドネシア、トンガ、パラオ、ケニア、セネガル、エルサルバドル、ボリビア、グアテマラ、メキシコと世界各地に支援を拡大していくとのことだ。
新型コロナウイルス感染症の拡大は、まだまだ終わりが見えず、この未曽有の感染症流行下で、JICAは昨年、途上国の保健医療システムの強化に向け「JICA世界保健イニシアティブ」を立ち上げたとしている。
移動や接触が出来ない物理的な制約下での効果的な協力に向けた工夫が必要とされるなか、ウィズコロナ時代に向け、この遠隔ICUの活用を含め、デジタル技術を駆使した遠隔を基本とする協力のあり方を模索しているとのことだ。