資生堂は、赤外線の影響を正確に評価する実験手法を独自に確立し、赤外線が肌に悪影響を与えるメカニズムの一端を解明したことを発表した。
実験の結果、赤外線の光ではなく、赤外線によって産生される熱が肌内部にダメージを与えることを確認し、また、赤外線の熱によって生じる肌ダメージをケアする薬剤として、数種類の植物由来エキスを見出したという。
同社の先行研究において、紫外線が肌にもたらす酸化ストレス（※1）は光老化（※2）の原因の一つであることや、太陽光強度のブルーライトが肌にダメージを与えることを見出していたが、今回新たに赤外線による影響も確認。
健やかで美しい肌を保つためには、紫外線やブルーライトだけではなく、赤外線を含めた、光が原因となって起こる3つの酸化から肌を守ることが重要だと判明したとしている。
同社は「美の力を通じて「人々が幸福を実感できる」サステナブルな世界」の実現を目指すとし、今後も得られた研究成果を活用し、環境と共生しながら人々がイキイキと自由に生活を楽しむことができる製品やサービスの開発を進めていくとのことだ。
今回、細胞を用いた実験と皮膚中成分の分析という2つの方法で影響を確認したとしている。
まず、独自の実験手法を用いて、温度条件をコントロールしながら、線維芽細胞に日常的に浴びうるレベルの赤外線を照射して、その影響を観察。
その結果、赤外線の「光」ではなく、赤外線によって生じる「熱」によって血管内皮増殖因子(VEGF-A)が増加することが判明したという。
VEGF-Aは、シミや赤み、シワなどの肌悩みとの関与が示唆されていることから、過剰な増加は肌へ悪影響を及ぼすと考えられるとのことだ。
続いて、皮膚中に存在する成分の変化を成分分析で確認したところ、こちらも赤外線の照射時の温度（熱）で、皮膚中の肌トラブルの原因となる成分(過酸化脂質)が増加することが明らかになったという。
これらの結果から、日常的に浴びうる赤外線によって生じる「熱」が、肌に悪影響を与えることがわかったとしている。
【右】赤外線の照射時の温度による、過酸化脂質の増加比較
日常的に浴びうる赤外線による肌への影響をケアするために、有用な薬剤の探索を行ったところ、今回、数種類の植物由来エキスに、赤外線の熱によって肌内部で起こるVEGF-Aや過酸化脂質の増加を正常な状態へ導く作用が認められたという。
これらの薬剤は赤外線の熱によって生じる肌ダメージを防ぐ可能性があるとのことだ。
今回の研究成果により、健やかで美しい肌を保つためには、紫外線やブルーライトだけではなく、赤外線（熱）からも肌を守ることが重要だということが判明したという。
紫外線酸化、ブルーライト酸化、赤外線酸化（熱酸化）の3つのタイプの光酸化へ対応し、環境と共生しながら、人々の健やかで美しい肌をサポートする研究を今後も続けていくとのことだ。
（※1）酸化ストレス：紫外線ダメージなどにより酸化ストレスが高まると、肌本来がもつうるおい、透明感、ハリなどを保つ機能が低下するとしている
（※2）光老化：太陽光に含まれる紫外線によって生じる「シミ・シワ」などの肌の老化現象のこと。肌老化の主要な原因とされている。