帝国データバンク(TDB)は、遊園地・テーマパーク経営企業の実態調査(2020年決算)を実施。結果を以下の通り発表した。
2020年夏の繁忙期に新型コロナウイルスの影響を受け、遊園地・テーマパークを運営する企業にとって厳しい年となった。緊急事態宣言の発出に伴う外出自粛の動きは、飲食店をはじめ、観光業ほか様々な業界に影響を与えているが、遊園地・テーマパーク業界も例外ではないという。
現在も、東京都と沖縄県では緊急事態宣言が発出されているほか、神奈川県では県独自の緊急事態宣言が発出されるなど、今後、同様の動きが広まっていく可能性も否定できないとのことだ。
<調査結果>
1.2020年の決算における235社の収入高合計は前年比9.7%減の9,128億3,100万円。うち、減収企業は116社で全体の49.4%
2.2019年、2020年の2期連続で損益が判明した142社をみると、2020年において2期連続の黒字企業は65社で全体の45.8%。一方で2期連続の赤字企業は32社(構成比22.5%)
3.235社を収入高規模別にみると、4区分で半数以上の企業が減収となった。全区分で減収企業数が増収企業数を上回り、中小事業者のみならず、大手・中堅事業者も苦戦を強いられる
4.地域別では、11地域中全11地域で減収。特に「九州・沖縄」などで苦戦
「遊園地・テーマパーク経営企業」とは、原則として収入高のうち、遊園地・テーマパークおよび動物園・植物園・水族館経営による収入が最も大きい企業。業績は単体数値で推定値も含み、損益は当期純損益としている。
半数の企業で前年比減収
2020年の235社の収入高合計は9128億3100万円で、前年比9.7%の減少となった。各社の収入高の増減をみると、2020年に減収となった企業は235社中116社(構成比49.4%)で、約半数の企業で減収。
一方で増収となった企業は39社(同16.6%)となり、減収企業数が増収企業数を大きく上回ったという。
なお、収入高トップは、オリエンタルランド(東京ディズニーリゾート)の3,963億800万円。次いでバンダイナムコアミューズメント(ナムコ・ナンジャタウン)で709億4,800万円、東京ドーム(東京ドームシティアトラクションズ)で676億9,800万円と続く。
減少率30%未満の企業が81%
2020年決算で減収となった企業116社を、減少率分布(10区分)でみると、前年比「3~10%未満」が42社(構成比36.2%)で、最多に。
次いで「10~20%未満」「20~30%未満」が各26社(同22.4%)と続き、減少率30%未満の企業が全体の81.0%を占めた。一方、50%以上減収となったのは7社(同6.0%)にとどまっている。
黒字企業減少、赤字企業増加
235社のうち2019年、2020年の2期連続で損益が判明した142社をみると、2020年の黒字企業は74社(構成比52.1%)で、前年から27社減少。また、このうち2期連続の黒字企業は65社(同45.8%)となったとのことだ。
他方、赤字企業は68社(同47.9%)。うち、2期連続で赤字となった企業は32社(同22.5%)となった。黒字企業と赤字企業が拮抗する形となった。
全区分で減収企業が増収企業を上回る
収入高規模別にみると、2020年はすべての区分で減収企業が増収企業を上回った。「500億円以上」(2社)と「50億~100億円未満」(6社)には増収企業はなく、7社が減収となるなど6区分中4区分で減収企業が半数を超えたという。
依然、大手・中堅業者が業界をけん引しているが、「横ばい」を含めると中小事業者のみならず大手・中堅事業者まで苦戦を強いられた様子がうかがえるという。
全地域で減収
地域別では、11地域中全11地域で収入高合計が減少。減少率トップは「九州・沖縄」(前年比26.0%減)、次いで「中国」(同17.8%減)、「関東(東京除く)」(同10.9%減)が続いた。
緊急事態宣言の発出や感染拡大に伴う外出自粛の動きにより、来園者数の減少が収入高に響いたことに加え、令和2年7月豪雨の影響を受けた地域では減少幅が広がったとのことだ。
2020年の地域別収入高合計トップは、「関東(東京除く)」の4,574億900万円。次いで「東京」が1,965億3,000万円となり、関東全体の収入高合計は6,539億3,900万円と全体の71.6%を占めた。
移動自粛が収入減の主要因、今後の行楽シーズンの集客落ち込みで20年以上に厳しい水準見込む
2020年は2019年までの増加基調から一転、新型コロナウイルスの感染拡大が全国の遊園地・テーマパーク業界に大きな影響を与え、収入高は減収となった。なお、人々の外出自粛の動きが大きな減収要因となったとしている。
一方、動物園や公園など屋外で密になりにくい業態の事業者では、地方を中心に地元住民やファミリー層の獲得につなげ、増収となった事業者もあり、業態間で差がみられたとのことだ。
これまで大手企業を中心に積極的なアトラクションや施設などの設備投資の動きがみられ、中小事業者との差別化を図っていたが、コロナ禍の減収・赤字の状況において、減価償却負担が高まるなど設備投資がかえって負担になっているケースも見受けられるという。
足元では新規感染者数が再び増加傾向にあり、今後も、行楽シーズンに発出されている緊急事態宣言による外出自粛など、本来の収益源である集客の落ち込みに加え、設備などの固定費負担が事業者に打撃を与え、2020年以上に厳しい年となることが予想される。