カナダで43度を記録、今年も続く異常気象

世界各地で洪水、熱波、干ばつなど気候変動が要因と思われる異常気象が増えており、人々の環境問題に対する懸念は増大傾向にあるといわれている。

直近の異常気象例として挙げられるのがカナダの熱波。涼しいイメージのカナダだが、このところ記録的な気温上昇が続き、熱波警報が発せられている。

BBC2021年6月28日の報道によると、カナダ・ブリティッシュコロンビアでは、史上最高値となる気温43度を記録。他にも、サスカチュワンやアルバータでも熱波警報が出されている。また米シアトルでも華氏101度(摂氏38.3度)と6月の気温としてはこれまでの最高値を記録したという。

人々の気候変動/環境問題への懸念の高まりとともに、サステナブル/グリーンテック市場の拡大が見込まれる。

Research and Marketsの2021年1月19日のレポートによると、サステナブル/グリーンテックの世界市場は、2020年時点で112億ドル(約1兆5000億円)だったが、2025年には366億ドル(約4兆9100億円)と3倍以上拡大することが予想される。今後5年の年間平均成長率は26.6%に上る。

グーグルのサステナブルテックコンペ

年間平均26%超えの成長市場であるサステナブル/グリーンテック市場だが、日本ではまだあまり知られていない印象だ。

グーグルが注目する欧州スタートアップの取り組みから、その現状と今後の可能性を知ることができるだろう。

今回は、グーグルのフィランソロピー部門Google.orgが2021年4月に実施したサステナブルテックコンペ「Impact Challenge on Climate」で選出された取り組みに焦点を当ててみたい。

Impact Challenge on Climateは、欧州の企業・スタートアップ・組織を対象に実施されたグリーンテックコンペだ。多くの応募の中から、有望な11の取り組みが選出され、計1000万ユーロ(約13億円)が出資された。

以前お伝えした、グーグル傘下のAI企業ディープマインドのリサーチエンジニアだったジャック・ケリー氏が立ち上げたAI非営利組織Open Climate Fixの取り組みはその1つ。Open Climate Fixは数時間後の雲の動きと太陽光の量を予測し、太陽光発電と既存の発電のシフトを最適化するAIを開発している。

ブロックチェーンで二酸化炭素排出削減にトークン発行、ポルトガル企業の取り組み

Open Climate Fixのほか、どのような取り組みがGoogle.orgの出資を受けたのか。いくつかピックアップしてみたい。

ポルトガルのエンジニアリング企業CEiiAが開発している個人の排出権取引を可能にするブロックチェーンプラットフォームは、都市モビリティのあり方を大きく変える可能性を持つ取り組みだ。

このプラットフォームは「AYR」と呼ばれ、アンドロイド版アプリはすでにリリースされ、iOS版も近々公開される予定。

CEiiAの「AYR」(CEiiAウェブサイトより)

利用者はこのアプリを起動し、都市移動で自転車や徒歩など二酸化炭素を排出しない手段を選んだ際、二酸化炭素排出削減量が計算され、それに応じてブロックチェーンを使った「グリーントークン」が発行される仕組みとなっている。利用者はこのグリーントークンを企業のプロダクトやサービスと交換することができる。

一方、企業はこのグリーントークンと商品・サービスを交換することで、排出権取引と同じように、自社の二酸化炭素排出を削減できるようになる。

このAYRは、2019年のスマートシティサミットでも言及されており、世界各都市の市長らからも都市移動における二酸化炭素排出削減の促進手段として注目されているようだ。

企業のサステナブルレポーティング自動化システムを開発するスウェーデンスタートアップ

スウェーデンのスタートアップ「Normative」の取り組みも興味深い。

同社は、企業のサステナブルレポーティングを自動化するSaaSテクノロジーを開発している。

ESG投資への関心の高まりから、投資家などにサステナビリティレポーティングを通じて、自社の環境インパクトは現在どれほどで、それが環境取り組みでどれほど縮小しているのかを伝えることが年々重要となってきている。

しかし、サステナビリティレポーティングの作成では依然大きな課題が横たわっているのが現状だ。

課題の1つは、企業活動にかかるすべての二酸化炭素排出を正確に把握することが難しく、把握しやすい項目だけがレポーティングされているという点が挙げられる。

把握しやすい項目とは、電力使用や自動車の利用など。しかし、これらが企業活動全体の二酸化炭素排出に占める割合は10%ほどしかない。多くは、サプライチェーン、移動、製造で発生している。

Normativeのシステムは、SAP、オラクル、マイクロソフトなど企業が利用するシステムからサプライチェーンなどで発生する二酸化炭素排出量を計算し、それを自動でレポートにまとめてくれるものだ。

欧州や米国では、投資家や消費者だけでなく、当局も企業の環境インパクトの開示を求める声を強めている。今後必須のツールとして欧米を中心に広がっていくことが見込まれるテクノロジーといえるだろう。

Impact Challenge on Climateではこのほか、水資源データの可視化プラットフォームを開発するオランダのDeltaresやリジェネレーティブ農業を推進するドイツのClimate Farmersなどが選出され、Google.orgから出資を受けた。

2025年に5兆円に拡大する見込みのサステナブルテック市場。上記スタートアップ以外にも様々な取り組みが登場してくるはず。今後の展開を楽しみにしたい。

文:細谷元(Livit