SNSで候補者をスクリーニングする企業は70%
SNSに写真・動画・コメントを投稿する際、それらが就職やローン査定に影響する可能性を考慮している人は少ないだろう。
しかし、SNSは人材や顧客のリスクを評価する上で、重要な情報を与えてくれるものであり、企業や金融機関の間では、SNSの情報が重宝されるようになっている。
たとえばSNS情報が就職に及ぼす影響に関しては、北米や欧州で事業展開する求人サイト大手CareerBuilderの調査が参考になる。企業の人事担当や人材会社担当者2300人以上を対象に聞き取りを実施したものだ。
この調査によると、雇用プロセスにおいて、SNSで候補者をスクリーニングすると回答した企業の割合は70%に上ることが判明。
また、候補者の情報をオンライン検索できない場合、面接しない可能性があるとの回答は57%、SNS情報が決め手となり候補者の雇用を取りやめたことがあるとの回答は54%であることも明らかになったのだ。
就職でSNSが不利・有利になる境界線
候補者のどのようなSNS情報が雇用キャンセルにつながったのか。
最も多かったのは39%の「候補者が扇動的かつ不適切な写真・動画・情報を投稿していた」というもの。
このほか多かった理由としては、「候補者が薬物を使用している情報」(38%)、「人種・性別・宗教などに関する差別的発言」(32%)、「前職の企業や同僚に対する悪口」(30%)、「技能・能力に関するうそが発覚」(27%)、「コミュニケーションスキルの欠如を示す情報」(27%)、「犯罪行為に関連した情報」(26%)、「前職の機密情報漏洩」(23%)、「プロフェッショナルにふさわしくないSNSのアカウント名」(22%)、「過剰なSNS投稿頻度」(17%)などが挙げられている。
一方で、SNSはうまく活用すれば、就職の可能性を高めるツールにもなり得る。
同調査では、企業の44%がSNS情報がきっかけとなり人材を雇用したことがあると回答したのだ。
どのようなSNS情報が雇用につながったのか。
1位は「履歴書以外に、候補者が適切な人材であることを裏付ける情報がSNSで得られた」というもの(38%)。このほか「コミュニケーションスキルの高さを示すSNS情報」(37%)、「プロフェッショナルな印象」(36%)、「クリエイティビティを示す情報」(35%)などがランクインした。
ローンや保険の査定でもSNS情報が重要に
企業が人材を雇用する上で、ここまでSNS情報を調べるのは、リスクを最小化したいという動機が働いているのだろう。
不適切な人材を雇用することは、企業の収益だけでなく、レピュテーションリスクなどにも悪影響を及ぼすことになる。履歴書や面接では得られない情報をSNSから取得し、できるだけ多くの情報から、リスク査定を行っていると考えられる。
ことリスクに関していえば、一般企業よりも金融機関の方が敏感といえるだろう。その金融機関にローンや保険を申し込む際、SNS情報の重要度は一層増すことになる。
ローンを返済する能力があるのかどうか、これまで米国などでは個人の信用リスクはFICOスコアなどで評価されていた。英国の不動産メディアProperty Wireによると、現在は既存の評価方法に加え、SNS情報も加味されるようになっているという。
そのような状況を踏まえ、同メディアは、ローンや保険の申請が通過する可能性を高めるプラットフォームごとのSNSティップスを紹介している。
たとえば、フェイスブックでは、画質の悪いプロフィール写真を避けること、プロフェッショナルなイメージを損なう不適切な写真・タグを取り除くこと、過剰な消費を示唆する写真・動画を投稿しないなどのティップスが紹介されている。
たしかに、収入に見合わない消費の癖があることが判明した場合、ローンの貸し手に悪いイメージを与え、ローン申請は却下される可能性が高まることになる。
Property Wireによると、SNSの中でも就職やローン申請において最も重要となるのがビジネスSNSのリンクトインだという。
リンクトインの職歴や役職に関する情報がローン申し込み情報と合致していない場合、金融機関の不信を招くことになる。
リンクトイン利用におけるティップスの1つは、職歴の長さをアピールできる情報を前面に出すというもの。金融機関が気にするのは、ローン申請者の返済能力。もし、申請者が比較的長く同じ企業で働く傾向があるのなら、金融機関からの評価は高くなることも考えられる。
リンクトインでは、自己スキルを他人から承認してもらえる機能があるが、これも金融機関の信用を高める方法の1つになるとのこと。
就職やローンに影響を与えるだけでなく、SNSのフォロワーなどを担保にするクレジットカードが登場するなど、SNS情報が持つ価値やリスクは無視できないようになってきている。SNS情報を防衛する「SNSのリスク管理」は、SNS時代を生き抜く必須のスキルといえるのではないだろうか。
文:細谷元(Livit)