サントリー・日立、協創 工場経営・働き方のDXを実現するIoT基盤を構築

サントリー食品インターナショナル(以下、サントリー食品)とサントリープロダクツは、グループ会社と協働し、日立製作所(以下、日立)との協創を通じて、稼働開始した新工場「サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場」(以下、新工場)において、高度なトレーサビリティと工場経営・働き方のデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するIoT基盤を構築し、活用を開始したと発表した。

新工場におけるIoT基盤を活用したDX
(左がトレースに必要な商品1本ごとのID、右がさまざまな情報を表示するダッシュボード)

これまでは、工程・ライン単位でデータを集約・活用する個別最適に留まっていたが、今回新工場に構築したIoT基盤は、日立のLumadaソリューションを結集し、工場全体の生産設備・機器に加え、調達、製造、品質管理、出荷などのITシステムからさまざまなデータを高速に収集・統合し、それらのデータを紐づけ、搭載したアプリケーションで活用することで、全体最適かつ進化し続ける次世代ファクトリーモデルをめざすとしている。

サントリー食品の新工場におけるIoT基盤の特長

(1)商品の安全・安心の追求

 これまで、商品ごとの製造・検査履歴のトレースには、担当者が作業記録の中から関連する情報を収集して影響範囲の調査を行っていたことから、作業に時間と経験・ノウハウが必要。

今回、商品1本ごとに製造・検査履歴情報と品質情報を紐づけて統合管理する、高度なトレーサビリティシステムを搭載。

これにより、消費者から商品に関する問い合わせを受けた際、情報の照会および説明対応を迅速に行うことが可能になるとしている。

また、生産設備・機器に軽微なエラーが発生した際、即座に製造・検査履歴をトレースして影響範囲を特定し、その設備を通過した商品の品質に問題がないかどうか迅速に確認を行えるとともに、蓄積したデータを分析することで、エラー原因究明を迅速に行うことができ、恒常的な品質改善につなげていくことが可能となるとしている。

(2)働き方改革の推進

工場内では、報告書作成や問い合わせ対応に必要なデータの収集・加工など、人手に頼ったルーチン業務が依然として多く残っていたという。

今回、工場内の生産設備・機器やITシステムからのデータを基に、必要な時に必要な情報を目的別にダッシュボード上で見える化・分析できるアプリケーションを搭載。

これにより、従来人手に頼っていたデータ収集・加工のルーチン業務をデジタル化・自動化できることから、リモートワークの推進と業務効率の向上の両立を図ることが可能になるという。

このように、ニューノーマル時代に対応した働き方改革を推進するとともに、人にしかできない、より創造的な業務へのシフトを図るとしている。

(3)デジタル化推進による工場経営の高度化

これまでは工程・ライン単位でデータを集約・利活用する個別最適に留まっていたが、日立の複数のLumadaソリューションを組み合わせたIoT基盤により、各ラインで毎分1,000本の製造能力を持つ工場全体の生産設備・機器と各ITシステムからデータを収集・統合し、全体最適視点で活用していくとのことだ。

具体的には、高頻度で発生する生産データを「Hitachi Digital Supply Chain/IoT」を用いて高速かつ安定的に収集・伝送し、それらのデータをデータ統合・分析基盤「Hitachi IoT-Platform for industry」で統合することにより、生産の現場視点でのデータ分析や最適化に必要なデータの抽出・紐づけとアプリケーションでの利用を容易にするという。

このようにIoT基盤を活用して工場全体での見える化・デジタル化を推進することで、PDCAサイクルの迅速化や新たな気づきを与えるなど、工場経営のさらなる高度化を図っていくとのことだ。

取り組みの背景

飲料メーカーでは、安全・安心の実現に向けて、厳格な生産・品質管理とともに、商品のサプライチェーン全般に関するさまざまな問い合わせに対して迅速に対応・説明することが求められている。

また、近年の急速なデジタル化の進展や昨今の新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、工場内のデータと先進デジタル技術を活用した工場経営・業務の変革と3密を回避した従業員の安全性の向上の両立といったニューノーマルに対応した新しい働き方が求められてきている。

こうした中、SCMをはじめとした生産活動の革新に注力するサントリー食品と、自らが製造業として培ってきたプロダクト、OT、ITの知見を生かしてデジタル技術を活用したLumadaソリューションを提供する日立は、これまで、AIを活用した生産計画立案システムに関する協創に取り組んできた。

今回の協創では、変化する社会背景を受けて、デジタル技術を駆使した次世代ファクトリーモデルに資するテーマとして、新工場において高度なトレーサビリティと工場経営・働き方のDXを実現するIoT基盤の構築に取り組むという。

今後の予定

サントリー食品では今後、同プロジェクトにて構築した次世代ファクトリーモデルを活用、評価し、その他自社工場への展開も想定。

同モデルを通じ、サントリー食品のものづくりの力をさらに強固にすることで、顧客へさらに安全、安心、高品質な製品の提供を継続していくとしている。

また、日立では今後、今回の協創を通じて得た技術・ノウハウを活用し、SCM全体でのさらなるトレーサビリティ高度化に向けて取り組んでいくとともに、Lumadaの製造業向けソリューションとしてグローバルに事業展開し、ユーザーの社会価値・環境価値・経済価値の向上に貢献していくとのことだ。

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