キャセイパシフィックグループは、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロとする目標を設定したと発表した。
これにより同社は、カーボンニュートラルの実現に向けた具体的なスケジュールを明示した、アジア圏内初の航空会社の1つになったという。
今回の目標制定は、環境、社会福祉、コーポレートガバナンスなどの分野における同グループの戦略と活動の進捗状況をまとめて毎年発表している「サステイナブル・ディベロップメント・レポート(持続可能な開発に向けた活動レポート)」の2020年度版の中でも公表しているとのことだ。
同社は「航空業界が排出する人為起源のCO2量は、新型コロナウィルスの世界的流行以前においても全世界の排出量のわずか3%以下でしたが、同社では、業界内屈指の国際航空会社として、持続可能な航空業界の実現に向けた取り組みを先導し、次世代の旅客にも安心して旅を楽しめる環境を築きたい」と述べている。
カーボンニュートラルを達成するために、特に注力していくエリアを以下のように示している。
・持続可能な航空燃料への投資
同グループでは、主要な運航燃料として導入できるよう、持続可能な航空燃料(SAF)の使用量を断続的に増やしているという。SAFは従来のジェット燃料と比較した場合、ライフサイクル全体で排出量を最大80%まで削減可能とのこと。今後10年間で、計110万トンのSAFを購入することを決定しており、これは2023年以降の同社が必要とする総燃料の約2%を占める量。
・温室効果ガス排出の相殺(カーボン・オフセット)
同社は、乗客が自らの搭乗便から排出されるCO2量に応じ、現金やマイレージで、世界自然保護基金(WWF)のゴールド・スタンダードの認証を得ている外部組織が展開するカーボン・オフセット活動を支援できるというユニークなプログラム「Fly Greener」を導入。さらに2007年からは、自社社員の業務渡航から発生するCO2を相殺するプログラムも実施していて、これまでに総計30万トンを超える温室効果ガスを相殺。
・運航効率性の向上による排出量の削減
同グループでは、燃料効率の高い、新たな機材へのアップグレード、飛行中以外のエンジン使用の削減などの施策を通じても、温室効果ガス排出量の削減に、継続的に取り組んでいるという。2030年末までに地上排出量を、2018年のレベルから32%削減する目標を定めているとのことだ。
キャセイパシフィック航空の最高経営責任者、オーガスタス・タン氏は「当社の排出量実質ゼロの誓約は、国際連合の気候変動政府間パネルおよびパリ協定で提唱されている条件を満たしつつ、保有機材体制やカーボン・オフセットのみならず、持続可能な航空燃料へのさらなる投資、新技術の開発についての弊社の戦略に対する指針を明確化するものです。」とコメントしている。