世界規模でDX化が進み、AIを導入する企業が増加の一途をたどる時代。ビジネスの場ではビッグデータやITの活用のみならず、人とAIがチームを組み課題解決に当たる新たな動きも広がり始めている。

そんな中、全世界で約20,000人、国内約300人のアナリティクスの専門家を擁し、人とAIが一体となった組織で、企業のビジネス課題や社会課題の解決に向けた公正・安全なサービスの提供に取り組んでいるのがデロイトアナリティクスだ。

デロイト トーマツ グループは「The Age of With(人とAIとが協調する社会)」のコンセプトを掲げ、「解決すべき価値のある問題の特定」「複雑な問題の解決」といった人間ならではの領域と、アナリティクスを掛け合わせ社会へ還元する事業を展開。金融、ライフサイエンス、ヘルスケア、マーケティング、マテリアル科学、製造プロセス、サイバー、海洋・気象および気候変動、宇宙、官公庁などのあらゆる分野において、画像処理、自然言語処理を含むアナリティクスの専門性と各分野の知見を持った人材が活躍し、このような人材の採用にも力を注いでいる。

その最前線で活躍するアナリティクスのプロフェッショナルは、日々どのような視点でデータの力を課題解決への提案につなぎ、活躍しているのか。シニアマネジャーを務める西岡到氏、奥野史一氏、マネジャーの毛利研氏、大場久永氏に話を伺った。

異業種経験や多様な専門性を持つメンバーが次々と生み出す新アナリティクスサービス

前職は国内のIT企業で光通信、クラウド、機械学習の研究職を務めていた西岡氏、インフラ分野のシステムエンジニアからコンサルタントにキャリアチェンジしたという奥野氏、インターネット企業の人工知能研究所でプロジェクトマネジャーを経験した毛利氏、フィナンシャルエンジニアとして金融機関向けにリスク管理システムの開発やリスク計量業務を担当してきた大場氏。異業種で経験を積んでからの中途入社も多く、多様な人材がそろうデロイトアナリティクスでは、携わる案件やクライアントの業界、さらにはサービスの種類も実に幅広いという。

西岡氏:最近携わることが多いのはマーケティングや顧客分析に関する仕事です。例えば保険業界では近年“one to one”のサービスが主力で、商品も多様化しています。クライアントの顧客となる方一人一人に合わせた、本当に必要な保障内容をデータから分析し、よりマッチしたものを提案していけるようなアナリティクスサービスを提供しています。このようなサービスでは、元保険会社にいた社員が商品特性を理解し、アナリティクスに良い味付けをしてくれます。さらに、元SEの社員がアナリティクスの定常化に取り組み、業務で継続利用可能な状態に仕上げます。

また、従来、データサイエンスとは異なるサイエンス領域でのデジタル化の業務も増えてきています。最近では「マテリアルズ・インフォマティクス」と呼ばれる、化学分野に特化した領域がこれに当たります。例えば化学研究者に向けてデータの分析・活用法をアドバイスしたり、研究者同士がデータを共有することでデータ自体の価値を高めていく方法などをお伝えしています。私たちの仕事は一度分析したデータを提供して良い結果につながれば終わりではなく、クライアント社内の人材教育も非常に大切です。最終的にはクライアント自身がデータを使いこなせることを目標にノウハウを伝え、特に専門性の高い部分をサポートしていくような継続性のあるサービスを目指しています。

その他のサイエンス領域と関連する話題としては、バイオや農業関連でデータ活用のサービスを立ち上げる動きがあったり、ニューロサイエンス(脳科学)に基づき人そのものを理解する新たなアナリティクスサービスを開発し、企業へアプローチを始めている同僚もいます。

シニアマネジャー 西岡 到氏

奥野氏:私の部署は元SIerや情報システム部門のシステムエンジニア等、AIやデータ分析に加えてシステムに知見のあるメンバーで構成されております。我々は、AI活用やデータ分析プロジェクトの中でも特にシステムが深く関わるものを担当しており、例えば、電機メーカー向けIoTデータ分析システム基盤最適化や、製薬会社向け営業データ分析基盤最適化、官公庁向けテキストおよび画像データ分析プロジェクト等があります。

一方で、私が進めている大きな仕事に、官公庁でのAI活用やデータ分析能力向上に向けた支援活動があります。特に注力しているのは、自身の専門分野でもある防衛や安全保障関係。現在は主に人の手や目で行われている、サイバー攻撃や国際情報収集・分析、犯罪捜査といった分野でのAI活用を見据えています。日本の防衛や安全保障におけるAI活用は、さまざまな要因が考えられますが、先進的な諸外国に比べると残念ながら後れを取っていると言わざるを得ません。よって、デロイト トーマツ グループの幅広い官公庁向けアドバイザリーサービスとグローバルでのAIおよびデータ分析の知見や実績を生かして、日本国内の防衛や安全保障に生かせるアナリティクスサービスを形にしていこうとしています。

シニアマネジャー 奥野 史一氏

西岡氏:奥野のように、過去の経歴や専攻を生かしたサービス開発事例は豊富にあり、新卒入社の若手でも自身の専門領域で実績を残していますね。先ほどお話しした「マテリアルズ・インフォマティクス」の例は、以前から相談に乗っていた化学専門性を持った新卒のメンバーが作ったサービスです。彼は入社時に監査担当部署に配属されましたが、監査業務に携わりながら化学系クライアントを独自に見つけ出し、約1年がかりで新しいアナリティクスサービスを立ち上げました。また、他の成功事例では、研究開発部門にいる弁理士資格を持つメンバーが、自然言語処理領域にチャレンジしたいと知財専門性を生かした特許分析サービスを作ったケースもあります。専門分野を持った人であれば、自身がやりたいことをどんどんアナリティクスの仕事にしていけるので、デロイトアナリティクスが関わる業界や業務は今後もどんどん広がっていくのではないでしょうか。

「バランス感覚」と「第三者視点」がデータの力をビジネス提案へとつなぐ鍵

デロイトアナリティクスのプロフェッショナルが担うのは、データの分析結果をクライアントのビジネス課題解決へとつなぐこと。そこで大切なのは「バランス感覚」と、携わる業界全体までを見据えた広い視点だという。

奥野氏:業務を進める上で大切にしているのは、3つの要素のバランスです。1つはクライアントの業務内容への理解、2つ目がAIやデータ分析をはじめとしたITに関する技術知識、3つ目がコミュニケーションや、提案書やレポート等のドキュメント作成能力といった基礎的なビジネススキル。私たちの仕事では、クライアントの業務知識を学び理解した上で、どういったデータ分析技術や手法、ならびにシステムがマッチするかを考える視点が必要になります。クライアントが求めているのは、業務にまつわるどのデータに注目し、分析結果をどう使えばビジネス課題を解決できるかといったアドバイスです。そこで、今の3点を常にバランスよく保ち、提案につなげられることを目指しています。

毛利氏:視点という意味では、クライアント自身の課題のみならず、携わる業界全体のペインポイントや、そこからつながる社会課題がどこにあるのかまでを見定めるよう心掛けています。業界全体としての課題がどこにあるかを押さえておくと、アドバイスすべきポイントがより広く第三者視点をもって見えてきますから。その上でストレートにその点を突き付けるのではなく、折に触れて小出しに伝えていくなど、クライアントの中にスムーズに問題意識を浸透させられる方法を考えながら取り組んでいます。

マネジャー 毛利 研氏

「人とAIの対立構造」ではなく、「人の感覚とAIの判断能力を融合」した組織をつくる

アナリティクスの専門集団でありながら、関わる業界全体の課題解決や人材教育など“人”と“社会”に基点を置いたサービスを実践するデロイトアナリティクス。同時に、デロイト トーマツ グループ全体として「The Age of With(人とAIとが協調する社会)」のコンセプトを掲げ、AIと“協業”していくことを目指している。このコンセプト展開に深く携わり、新たな事業概念“Human-in-the-Loop (ヒューマンインザループ)”を打ち出した毛利氏は、AIとの協調を通じ、成していく仕事について次のように考えているという。

毛利氏:近年は多くの企業が、あらゆるプロセスの再構築や新規ビジネスの創出のためにAIを活用し、ビジネス戦略の優位性を高めようとしています。そんな中、人とAIが一体となって業務を行っていけるシステムの必要性が高まってきているのです。

デロイトアナリティクスでは、AIをテクノロジー以上のものだと考えています。これまでのITシステムに期待されてきたのは「自動化」や「効率化」でしたが、AIがそういったIT技術と異なるのは、「判断」ができることです。現在、AIは条件次第で人間の思考範囲を超えた複雑な判断基準を構築でき、おおよそ人ではできないレベルの判断も実現できるようになっています。

とはいえ、やはりAIを監督する人間の存在は欠かせません。デロイトアナリティクスでは人とAIの対立構造ではなく、AIによる判断の過程に人間の倫理や社会的な状況を加えることでループさせていくといった新たな概念を打ち出し、AIと共に働く組織づくりを進めています。それが“Human-in-the-Loop”です。人の目線や人にしかない感覚と、AIの力をどう融合して組織をつくっていくか。AIを活用したサービスを提供する企業として、広い意味でその点にフォーカスした変革を進めています(DXを実現する「テクノロジー」と「人」との関係性への一考察)。

新たな“概念”までサービスに。仕事の醍醐味は「チャレンジ幅の広さ」

このように、デロイトアナリティクスではAIを組織の一員と捉え、新たなアナリティクスサービスを次々と生み出している。西岡氏、奥野氏、毛利氏、大場氏は、仕事の醍醐味を「チャレンジ幅の広さ」だと口をそろえる。

奥野氏:新規クライアントへのアプローチを提案すれば、まずチャレンジさせてもらえますし、クライアントの幅広さと社会的信用の厚さから、アプローチ先は無数に見つけ出せます。経験や専攻に基づいた得意分野があれば、知見をさらに深められると同時に、専門性を伸ばすことでチーム全体が成長していけるような基盤があると感じます。

西岡氏:自分自身の経歴を生かせることもそうですが、デロイト トーマツ グループ内にもそれぞれ専門性を持ったメンバーが在籍しているので、自身の知見がまだ浅いと感じる業界でも、チームを組んで関わっていくことができます。また、仕事を通して企業のエグゼクティブクラスの方々と議論できる機会も多い。その機会から、これまでとは異なる視点を得たり知識を増して新たな発想を生み出せますし、最近は異業種間でデータを共有することによって付加価値を生み出させるような仕事も多く、とても刺激がありますね。

大場氏:デロイトアナリティクスでは新たな業界にもどんどんアプローチをしています。例えば最近では、デロイトの海外メンバーファームと連携して宇宙事業への参画を検討したり、フォーミュラレーシングチームとコラボレーションを進めています。グローバルレベルでそういった通常なかなか携わることのない業界に触れられるのも醍醐味の一つです。

マネジャー 大場 久永氏

毛利氏:仕事の幅広さという部分では、先ほどお話しした“Human-in-the-Loop”という概念、いわゆる『考え方』をコンサルティングの一環としてクライアントに提案することもあります。新しい概念を創出するような事業に参画できるのは、非常に貴重で心躍る体験でした。また、私は仕事をしながら論文を執筆していて、その活動もきちんと評価していただいています。そういった面も含めて複合的に我々コンサルタントを評価してもらえるのは非常にありがたいですね。

求められる人材“Purple People”とアナリティクスコンサルタントに生かせる人間力とは

デロイトアナリティクスでは、今の時代に求められる人材は、アナリティクス(テクノロジー)にまつわる技術「Red Skill」とビジネスに関する強み「Blue Skill」、両方を備えた “Purple People”だという。新たなアナリティクスサービスの創出に加え、“概念”の提案やチームでのチャレンジも後押しするデロイトアナリティクスで今後活躍できる人材について聞くと、西岡氏、奥野氏、大場氏は基本的な「Red Skill」を持つことを前提としつつ、次の要素を挙げた。

西岡氏:当法人でやりたいことを持っていて、それをハッキリ意思表示できる人ですね。実現のために不足している能力があれば、当然勉強をしていかないといけませんが、チームのメンバーが補足できるところもあります。同時に、クライアントへの提案をするときに、自分自身が相手の立場なら使ってみたいサービスだと本気で考えて伝えられることが非常に重要です。

私のチームでは、クライアントの要望をそのまま実現するのではなく、クライアントの一歩先を考えた提案を意識して仕事に取り組むことを促しています。若手メンバーの場合は、仕事への緊張感が強くなってしまうことから最初は遠慮してしまいがち。けれど、そこで殻を破って思い切った提案もしていけるような雰囲気づくりを常に意識しています。この仕事ではチャレンジしたことが全て失敗するケースはほぼありません。提案のどこかには必ずポジティブな要素があって、クライアントもそういった面をくんで意思決定をしてくれることが多い。多少とがった考え方であっても、プラスに変えていける仕事だと思います。

専門領域では化学や生化学、心理学、経済学といった知識も大いに役立てることができます。アナリティクスで実現可能なことを理解した上で、自分が学んだり、携わってきた領域に自信を持って提案できる人は、新たな価値やサービスを創っていけるのではないでしょうか。

奥野氏:私の部署では、システム系の知見があるとより活躍の場が広がります。アドバイザリーサービス提案の際は基本的に“スモールスタート”、まずは調査研究やPoCから話を進めていきますが、その時点で本番環境にシステム構築をする際の懸念点やアイデアまで考えていく必要がありますので。

その中で常に感じるのは自己学習できることの大切さ。それはコンサルティングやアドバイザリー業務をしていく上での根幹につながるものです。特に技術分野は本当に日進月歩ですし、クライアントとの対話では身につかないスキルなので、自身で蓄積していくしかありません。自ら学び続け、提案し続けられることが重要です。

大場氏:奥野も申し上げましたが、技術面は入社後も学びを続けることで後からフォローできます。そういう意味では、アナリティクス以外の分野でこれまで何かに特化した仕事を続けてきて、新たなサービスへのチャレンジを目指す方、自分の究めた道とは異なる領域へ飛び込みたい方が力を発揮できる仕事だと思います。

デロイトアナリティクスでは、単純なアナリティクス業務だけでなく、その先を見据えた会社全体、社会全体の変革を目指している。自身の得意分野を生かし、社会全体の変革をデロイトアナリティクスの一員として、実現してみてはいかがだろうか。

※デロイトアナリティクスは、デロイト トーマツ グループ内の有限責任監査法人トーマツに属する、データ分析コンサルティングの専門部

文・渡部 彩香(Playce)
写真・西村 克也