スターバックス コーヒー ジャパンは、店舗で使用する電力をCO2(二酸化炭素)排出量ゼロの100%再生可能エネルギーへ切り替えを進めている。

今回、北海道、東北、沖縄を除く、路面の直営店301店舗で2021年4月末までに切り替えが完了し、10月末には北海道、東北、沖縄を含めた約350店舗へ広がると発表。

これにより、日本国内のスターバックスの約2割にあたる、直接電力の契約が可能な路面の直営店において、再生可能エネルギーへの切り替えが完了するとのことだ。

また、スターバックスは創業以来、ミッションに基づき、「コミュ二ティへの貢献」を大切に、一杯のコーヒーを通じて人と人とのつながりを育んできた。

今回の切り替えにおいても、電力の供給先の選定では、「地域の電力を、地域の店舗で」循環できることを意識しているという。

具体的には、環境に配慮した発電方法であること、また地域の雇用の創出や、地域課題の解決につながる活動を実施している電力を取り入れることとし、この取り組みは、2020年1月、「リソースポジティブカンパニー」を目指すアクションの一環としてグローバルで発表した、2030年までにCO2を50%削減する目標達成を追求するものであるとのことだ。

それぞれの地域の水力発電による電力を取り入れている鹿児島仙巌園店(左)と富山環水公園店(右)

スターバックス コーヒー ジャパンの代表取締役最高経営責任者(CEO)の水口貴文氏は以下のように述べている。

店舗のCO2を排出しない100%再生可能エネルギー切り替えへの準備が整い、環境負荷低減につながる次なる一歩を踏み出せたことを大変嬉しく思っております。

再生可能エネルギーの切り替えは投資になりますが、地域経済および環境に良い影響をもたらす正しい取り組みとして、外食業界において先行してチャレンジしてまいります。日々パートナーがお客様とつながりを育んでいる大切な地域、そして地球の持続可能性を追求するため、これからも地域を豊かにする方法を自社のみならず、各地域のお客様や企業とパートナーシップを組み、模索してまいります。

再生可能エネルギーへの切り替えは、2021年2月にオープンした、「スターバックス コーヒー 狭山市入間川にこにこテラス店」を皮切りに、進めているという。

地域ごとに、みんな電力、中部電力ミライズ、北陸電力、関西電力、ローカルエナジー、中国電力、四国電力、九州電力を通じ、農業と自然エネルギー発電を同時に実現し、休耕地削減になるソーラーシェアリングや未利用の間伐材などを活用して地域の森林を豊かにする発電、災害時に非常用電源として活用できる仕組みを備えたものや地域の学校に還元、活用されていくなど地域貢献につながる電力を選定し、購入している。

■切り替えを行った店舗や発電所の一例

■発電所・電力会社
・匝瑳飯塚Sola Share1号機(千葉県匝瑳市)
・みんな電力

●特長:太陽光発電
千葉大学の講師と学生が立ち上げた大学発ベンチャーが運営する、自然エネルギーと農業を両立させる「ソーラーシェアリング」。
農地の上で太陽光発電を行う仕組みで、一つの土地に農業と自然エネルギー発電を同時に実現しています。農業者の所得向上や休耕地削減にもつながっているとのことだ。

●対象店舗
神栖店、ベイシア富里店
香取佐原店、成田美郷台店

香取佐原店

発電所・電力会社
・しらさぎ発電所(エコロジア第二太陽光発電所)(千葉県木更津市)
・みんな電力

●特長:太陽光発電
小児喘息で苦しむ子供たちのため、太陽光発電や電気自動車を普及させることで大気汚染のない世界を実現したいという思いから設立。
雨水タンクを設置し、パネルに降り注ぐ雨水を溜め、メンテナンス時のパネル洗浄に使うエコシステムも併設。
地域貢献を目的に、フェンスに常設している蓄電池を用いた非常用電源ボックスは2019年9月の台風15号がもたらした大停電時に携帯電話の充電に使われるなど、地域住民に喜ばれたとしている。

●対象店舗
木更津店、市原店

木更津店

■発電所・電力会社
・大田発電所(鹿児島県日置市)
・九州電力

●特長:水力発電
明治41年島津家の自家発電所として運用開始。切妻屋根の母屋の南側に六角形の塔が付随する特徴的な構造で、国の登録有形文化財。島津家の家紋「くつわ紋」が施されている。
この発電所の電力を使用する鹿児島仙巌園店は、登録有形文化財「旧芹ケ野島津家金山鉱業事業所」をリノベーション。旧薩摩藩主島津家の歴史的建造物には、ストーリーが詰まっているという。

●対象店舗
鹿児島仙巌園店

鹿児島仙巌園店

■発電所・電力会社
・GBバイオマス発電所(徳島県小松島市)
・みんな電力

●特長:木質バイオマス発電
発電方法はガスエンジン方式で、木材を砕いてチップ化し乾燥させ発電棟で燃焼燃やした際に発生する水素と一酸化炭素の混合ガスで発電機を駆動。
チップの素材となる木材は那賀町の山林で切り出された丸太のうち、通常なら使われない端材や山林に放置された材木。過剰に森林を伐採することなく持続的に発電を続けられ、CO2排出を削減するだけでなく、周辺の山の間伐が進み、森林が健康な状態になっていくとのこと。

●対象店舗
徳島沖浜店

徳島沖浜店

■発電所・電力会社
・第六中学校太陽光発電所(大阪府高槻市)
・みんな電力

●特長:太陽光発電
「学校応援でんき」は、学校で発電された電力を、卒業生や地域住民などが購入することで、母校などへの応援金として還元され、学校施設の改修等に活用される。
応援金は、環境基金に積み立てられ、市内小中学校の環境教育や新エネルギーの普及促進等に活用されるとのことだ。
地元の学校と結びつくことを通して地域に還元するという電力の新たな形を提案しているとのことだ。

●対象店舗
京都二寧坂ヤサカ茶屋店

京都二寧坂ヤサカ茶屋店

■リソースポジティブカンパニーを目指すスターバックスのコミットメント

スターバックスは、2020年1月、事業運営を通じて、資源を使うより、生み出し、還元していく「リソースポジティブ」の実現を目指すコミットメントを発表。

2030年までに、①直接の事業運営とサプライチェーンにおける二酸化炭素排出量を50%削減、②直接の事業運営とコーヒー生産のための水を50%節約、または還元、③店舗や工場から埋め立て地に運ばれる廃棄物を50%削減の目標を掲げ、各事業での取り組みを推進している。

また、脱炭素社会の実現に向けて、まずはスターバックスとして一歩を踏み出すため、電力の直接契約ができる路面の直営店すべてで切り替えを進めている。

このほか、直接契約ではない商業施設等に入居している店舗についても、電力の部分購入や非化石証書などあらゆる可能性を施設と連携しながら模索し、環境負荷の低減に向けた各地域での良い方法を検討していくとのことだ。

スターバックスは、全世界に店舗を持つスケールを活かし、より良い地域社会や私たちのコアであるコーヒーを育む地球環境の持続可能性を実現する活動をこれからも積極的に進めていくとしている。