清水建設が金沢市玉川町で建設を進めてきた「清水建設北陸支店新社屋」が竣工し、同支店は5月17日から新社屋での業務を開始すると発表した。

同社屋は、1978(昭和53)年に建設した旧支店社屋の老朽化に伴い計画したもの。「未来へつなげる『超環境型オフィス』を北陸から」をコンセプトに設計を進め、2020年4月に建設工事に着手した。建物規模は地下1階・地上3階、延床面積4,224平方メートルとなっている。

「超環境型オフィス」としての同社屋の特長は、中規模オフィスでは北陸地域初となるネットZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)を実現していること。

各種省エネルギー技術により建物の一次エネルギー消費量を基準値の28%まで低減し、太陽光発電により消費量を上回るエネルギーを創出することで、年間エネルギー収支「ゼロ」を達成したとのことだ。

これにより、年間CO2排出量を290t程度削減できる見込みであるという。

建物のゼロ・エネルギー化に寄与する省エネルギー技術は、金沢の気候・風土を活かした地下水利用空調熱源、自然通風・採光、床吹き出し空調、躯体蓄熱放射空調、タスク&アンビエント空調・照明など多岐にわたる。

一方、再生可能エネルギーを利活用した創エネルギー技術として、太陽光発電に加え、産業技術総合研究所と共同開発した建物付帯型水素エネルギー利用システム「Hydro Q-BiC」を社屋内に実装している。

Hydro Q-BiCは、太陽光発電の余剰電力を利用して水素を製造・貯蔵し、BCP対応など必要時に抽出して電力に変換する、最先端の水素エネルギー蓄電設備であり、同社屋が実用化の第一号。

導入システムは国内最大級の蓄電能力(2,000kWh)を備え、非常時には、BCP電源として72時間分の電力を供給するとのことだ。

一方、建物の意匠面では、地域との共生、伝統と革新の融合を目指し、金沢の伝統的な建築様式を現代の技術で再現。

建物の外観を特徴づける格子状のフレームは、古都に相応しい端正な佇まいを表現するとともに、構造体の壁柱として機能します。建物の東・西面に配置した格子状の日射ルーバーは、金沢の伝統的な街並みにみられる木虫籠(きむすこ)を再現したものであるという。

建物内では、集成材と鉄骨を一体化した耐火木鋼梁「シミズ ハイウッド®ビーム」を格子状に架設し、金沢伝統の格天井を再現。木鋼梁の外皮となる集成材には石川県の県木・能登ヒバを採用し、計232立方メートルの県産材を用いてスパン25メートル超の木質天井を構築した。

新社屋のオフィス計画では、より創造的で柔軟な働き方を誘発するオフィス「クリエイティブ フィールド®」を具現化。

執務スペースはグループ単位のフリーアドレスとし、レイアウト検討に際してセンシング調査に基づく近接性評価を行い、グループ間の情報共有と協働を促進するレイアウトを実現している。

さらに、ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)を導入し、業務内容に応じて選択できる様々なワークエリアを各所に配置している。

自然光と自然風を取り込んだ2層吹き抜けの明るいオフィス空間では個々のアクティビティが可視化され、創造的な働き方を促進しつつ従業員に快適かつ健康的な執務環境を提供するとのことだ。

新社屋の環境性能については、BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)の『ZEB』認証、CASBEE(建築環境総合性能評価システム)の「Sランク(最高ランク)」認証を取得済みであるという。

また、健康・快適性についても、WELL認証の最高ランク「プラチナ」の取得を目指すとしている。

同社は今後、この超環境型オフィスを先進的技術のショールームとして活用し、技術展開を促進することで、SDGsの実現に貢献していく考えであるとのことだ。