帝国ホテルは、5月12日、かねてより検討していた京都・祇園甲部歌舞練場敷地内の弥栄会館の一部を保存活用した新規ホテル計画の実施を決定し公表した。
同社は、2019年10月、同計画の検討および協議を開始することに関する基本合意書を、学校法人八坂女紅場学園との間で締結し、関係者および関係諸機関との検討・協議を進めてきたという。
そして、2021年3月には、京都市都市計画で定められた景観地区および高度地区における手続きの中で専門家による公開の審議を経て、地域の景観への配慮、また、祇園甲部歌舞練場敷地全体の一体的な整備に貢献し価値ある建築物や風景を継承していく同計画の意義が認められ、これらの手続きが完了したとのことだ。
これを受け、同社は、弥栄会館を活用したホテル計画を実現できる見込みとなったことから、今回、計画地の所有者である学校法人八坂女紅場学園と事業協定書等を締結し、同計画を実施することを決定した。
開業は2026年の春を予定しており、帝国ホテルブランドのホテルとしては、東京、上高地、大阪に次いで4軒目となり、1996年の帝国ホテル 大阪のオープン以来、30年ぶりの新規開業となる。
今回実施を決定した同計画は、世界的にも認知度の高い観光都市である京都を新たな拠点に加え、培ってきたノウハウを結集してサービスを提供することにより、創業の精神を継ぐ日本の代表ホテルとして、また、国際的ベストホテルを目指す企業として、ブランド力のさらなる向上を図ることを目的としている。
また、歴史的・文化的価値のある弥栄会館を現代のニーズに合わせてホテルとして再生するとともに、歌舞練場耐震改修をはじめとする歌舞練場敷地全体の一体的な整備に貢献することも目的としているという。
新たに建設するホテルについては、弥栄会館の敷地と弥栄会館北側の土地を学校法人八坂女紅場学園より賃借し、それぞれに「本棟」、「北棟」(いずれも仮称)を建設。
弥栄会館を継承する本棟の建設にあたっては、屋根形状、外壁位置などのシルエットを守りつつ、景観上重要な正面(南西面)の部分は、既存躯体の保存や建材の再利用を行い、建物の文化的価値を可能な限り引き継ぐ計画だとしている。
今後、弥栄会館という貴重なレガシーを継承し、祇園町南側地区の歴史あるまちなみにふさわしいホテル計画を実現することで、祇園甲部歌舞練場敷地一帯を中心とした地域社会の活力ある持続的な発展に貢献するとともに、国際文化観光都市京都から日本文化を世界に発信する拠点としての役割を果たすよう取り組んでいく方針を示している。
総事業費は、約110億円程度を見込む。
6月には学校法人八坂女紅場学園による弥栄会館の解体保存工事が開始され、来年4月に、同社は弥栄会館保存部分の譲渡を受けて土地の賃借を開始し、ホテル建設工事を開始。新ホテルの竣工は2025年10月、開業は2026年春を予定している。