千葉工業大学、日油、宇宙航空研究開発機構(JAXA)らは、共同研究にて新たに開発した宇宙を汚さないクリーンなロケット推進薬を搭載した新小型固体ロケット2機の打上実験を、千葉工業大学千種グラウンドにおいて実施した。

2回の打上実験が実施され、いずれも打ち上げに成功し予定通りの高度へ到達したことが確認されたという。

これにより、新しいロケット燃料の有用性が確認され、今後、クリーンな推進装置として人工衛星や惑星探査機などの宇宙機への搭載や宇宙ゴミを発生しないため他の惑星を汚染しない推進系としての利用が期待されるとのことだ。

同新固体小型ロケットの打上実験は、千葉工業大学、日油株式会社、JAXAの3者が進める高性能な小型推進系の研究開発と題した共同研究の一環として実施。

3者は金属燃料を使用しないクリーンな排気ガスを持つ新たなロケット推進薬の開発に取り組んでいる。

通常のロケット推進薬には、金属燃料を用いるため性能が向上する代わりに金属酸化物などが排気ガス中に含まれて排出され、それらが宇宙ゴミ(デブリ)となり、宇宙空間を汚染してしまうことを受け、ISO-24113 、Space debris mitigation requirements ではこうしたデブリの抑制を求めている。

そこで、同研究ではロケット推進薬の燃料兼結合材として用いられている高分子材料に高エネルギ物質である Glycidyl Azide Polymer (GAP)を採用。

これにより、金属燃料を抜いた従来推進薬よりも15%以上の性能向上を実現することできるという。

同研究では 「GAP/AP 推進薬」として固体ロケットの燃焼器内で燃焼させ性能評価を行う実験を複数回実施し、確実な着火と安定した燃焼を確認。

次のステップとして小型ロケットに搭載し、打ち上げ時の加速度が生じる状況でも、正常に燃焼することを確認するために今回の打ち上げ実験を実施した。

同実験の成功により、 GAP/AP推進薬において2回の小型ロケット打上に成功し、シミュレーションとほぼ一致する到達高度となったため、高加速度環境下においても予定通りの性能が得られることを実証することが出来たとしている。

今後は、宇宙空間での利用を目指し、より小型軽量化と真空環境下での着火特性を評価し、宇宙機への搭載と宇宙実証を目指すという。