INDEX
では、これまでに数多く発表されている宇宙映画はどこで撮影されているのでしょうか?
本記事では、宇宙映画がどこで、どのように撮影されているのかを掘り下げ、宇宙映画を撮影した、宇宙にもっとも近いロケ地を紹介します。このロケ地、たしかに宇宙っぽい…!?
(1)宇宙映画を撮影する2つの方法
宇宙映画の撮影方法は、SFXやVFXを使うものと、ロケーション撮影の大きく2つです。
SFXとは、特殊撮影を意味しており、ミニチュアやパペット、特殊メイク、火薬などの爆発物、ワイヤーアクションなどといった装置を使ったもののことを指しています。また、VFXとは視覚効果を意味し、ポストプロダクションの段階で撮影したものにコンピュータで映像加工することを言います。
もう一つの撮影方法であるロケーション撮影は、理想の絵が撮れる場所に行って撮影することです。ロケーション撮影をする利点は、セット建設の予算と期間を抑えられることと、リアルな映像を撮れることなどがあげられます。
(2)SFXやVFXを利用した宇宙映画
まずは、SFXやVFXを利用した宇宙映画を紹介します。
たとえば、地上600km上空を舞台にしたアルフォンソ・キュアロン監督の『ゼロ・グラビティ』は、VFXを多用しています。VFXをメインで担当したのはFramestoreスタジオ。ISSの内観と外観はCGのバーチャルセットで、宇宙服もCGでした。
本作では、無重力状態を再現するため、12本のワイヤー装置を使い俳優を吊るしています。また、地球の反射や太陽などのさまざまな角度からの光源を作り出すために、6m×3mの面に4096個のLEDライトを取り付けた「ライトボックス」という特殊装置を開発したそう。装置とVFXを組み合わせたことで、非常に複雑な絵を作っています。
次に、クリストファー・ノーラン監督の『インターステラー』もDouble NegativeがVFXを担当し、制作されています。VFXで再現されたのは、ブラックホール(ガルガンチュア)や、水の惑星の巨大な波、地球の砂嵐など。波はハワイの波を元にしており、砂嵐は30年代にアメリカの大平原でしばしば発生した「ダストボウル」の砂嵐を参考に、CGとプラクティカルエフェクトで再現しています。
クリストファー・ノーラン監督は実写へのこだわりも強く、リング状の宇宙船エンデュランス号やシャトルのレンジャー号、AIロボットのTARS、CASEなどは、ミニチュアやパペットを使っているほか、ロケーション撮影も行っており、本記事でも紹介しています。
全編実写で撮影された『ファーストマン』は、ミニチュアや、3Dプリンターで作った実寸に近いジェミニ号やアポロ11号、X-15を作っています。ロケットの窓から見える背景などは、巨大LEDスクリーンにNASAから提供された実際の映像や、それを元にしたVFXの映像で再現しています。
なお、今のようなVFX技術がなかった『2001年宇宙の旅』は、全てを70mmカメラの前でSFXを駆使しながら撮影する必要がありました。Discovery号の回転する住居地は、Vickers-Armstrongs Limitedによるもので、直径38フィート幅10フィートにものぼりました。本作を象徴するサイケデリックな「スターゲート」シーンも、スリットスキャン撮影という方法で再現されています。
(3)地球上でもっとも宇宙に近い場所!? 宇宙映画のロケ地7選
続いて、ロケーション撮影を行っている宇宙映画の例とそのロケ地の衛星画像(一部GoogleMapの航空写真)と、観光の可否、平均気温を紹介します。
2021年4月の現時点では新型コロナウイルスの影響で観光がなかなかできない状況ですが、今は衛星データで宇宙っぽい場所を楽しんでいただき、状況が落ち着いたら興味のある場所へ実際に観光に訪れてみてください。
①『インターステラー』:アイスランド、ヨークルスアゥルロゥン氷河湖
マット・デイモン氏演じるマン博士が着陸した氷の惑星は、ヨークルスアゥルロゥン氷河湖で撮影されました。劇中では、大気にはアンモニアが含まれ、水はアルカリ性、重力は地球の80%と説明されていた星ですが、実際は美しいアイスランドです。
平均気温:夏10度、冬0度
観光可否:観光可能
②『2001年宇宙の旅』:シュピツコッペ、ナミビア
ナミビアのシュピツコッペで撮影されたのは、「人類の夜明け」章で登場したヒトザルのシーンです。
平均気温:真夏(12月頃)23度、真冬(7月頃)9度
観光可否:観光可能
③『オデッセイ』:ワディ・ラム、ヨルダン
マット・デイモン氏演じるマーク・ワトニーが取り残された火星のシーンは、ヨルダンのワディ・ラムで撮影されました。
平均気温:春16度、秋18度(砂漠なので1日を通して気温の変化あり)
観光可否:観光可能
④『メン・イン・ブラック』:ニューヨークステートパビリオン、ニューヨーク
劇中で宇宙船の隠し場所となっていたのは、ニューヨークにあるニューヨークステートパビリオンです。資料の中や、MIBオフィスの壁に描かれる形でも登場しています。
平均気温:9月最高24度/最低16度
観光可否:観光可能
⑤『コンタクト』:アレシボ天文台、プエルトリコ
ジョディ・フォスター氏演じるエリナー・アロウェイは、アレシボ天文台で探査と研究をしているという設定でした。
平均気温:夏27度、冬26度
観光可否:2020年に施設構造物の崩壊により観光不可
⑥『スターウォーズ/新たなる希望』:ホテル シディ ドリス、チュニジア
マーク・ハミル氏演じるルーク・スカイウォーカーが育った家は、チュニジアのホテル シディ ドリスで撮影されました。
平均気温:春最高25度/最低13度、秋最高25度/15度
観光可否:観光可能
⑦『エイリアン:コヴェナント』:フィヨルドランド国立公園内のミルフォード・サウンド、ニュージーランド
本作におけるミルフォード・サウンドは、曇りがちな天候とミステリアスな雰囲気から、未知の惑星の風景と見立てられました。
平均気温:年間平均気温約10℃
観光可否:観光可能
(4)7つの映画をMy Map上にプロット
砂漠や岩場のシーンではアフリカや中東、アイスランドといった極地が選ばれているのがわかります。同様のロケーションは宇宙映画や近未来SF映画、アポカリプス映画のロケーションとしても人気です。
例えば、『2001年宇宙の旅』が撮影されたナミビアは、文明社会が壊滅した近未来を舞台にした『マッドマックス 怒りのデスロード』のロケーションとしても選ばれました。
『オデッセイ』のロケーションとなったヨルダンは、『プロメテウス』や『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の撮影現場でもあります。
チュニジアは、『スター・ウォーズ/新たなる希望』だけでなく、『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』、『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』、『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』のロケーションにも選ばれています。
アイスランドは、『インターステラー』の氷と水の惑星の両方が撮影されており、『オブリビオン』や『ローグ・ワン』、『プロメテウス』、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』のロケーションにも選ばれています。
まとめ
宇宙にもっとも近い場所として、宇宙映画のロケ地と撮影された映画を紹介しました。
月や火星には簡単にいくことはできませんが、私たちが住む地球にも異世界へと通ずる雰囲気を出す場所があるということがわかりました。
本記事を書くにあたり参考にしたMOVIE-LOCATION.COMは、撮影現場のデータベースです。映画のタイトルや場所から検索することができるので、衛生データと照らし合わせながら映画のロケ地を巡る旅をしても楽しそうです。
また、すでに撮影された場所を巡るだけでなく、足を運んだり衛星データで検索した場所をみながら、コンテンツを想像するのも面白いのではないでしょうか。
関連おすすめ記事
中川真知子
おすすめ宇宙映画7選とNASAが宇宙映画に協力するワケ、今後の宇宙映画撮影の展望
アポロ計画を描いた本・映画おすすめ38選!より深く楽しめる作品をランキング
宙畑編集部