日本ペイントホールディングスのグループ会社で自動車用塗料を手掛けている日本ペイント・オートモーティブコーティングス(以下、NPAC)は、トヨタ自動車 未来創生センター(以下、トヨタ)と共同で、太陽電池の表面にデザイン性と、カラーリングを実現させる「太陽電池向け加飾フィルム(以下、加飾フィルム)」を開発した。
同技術はNPACとトヨタが有する自動車用塗装技術を応用することにより、太陽電池の性能を維持しつつも光によって表情を変える、ピンク、ブルー、グリーンなど様々なデザインの実現に成功。
さらに、2021年3月12日より、NPACとトヨタは、F-WAVEと共同で、加飾フィルムをF-WAVE量産「軽量フレキシブル太陽電池」に実装し、加飾フィルムの各種耐久性、発電特性、および、意匠性の評価を目的に、F-WAVE熊本工場敷地内での実証実験を開始している。
NPACは、今後も引き続き、周辺環境に配慮した意匠性の高い、新しい太陽電池のイメージを構築し、製品化を目指す。
加飾フィルム、および、実証実験の概要は以下の通り。
再生可能エネルギーのひとつである太陽電池の普及が進むなか、その設置場所は建物の屋根上から壁面、モビリティなどへと広がりつつある。
そのため従来の黒色や紫色などの太陽電池に加えて、周囲の景観に合った高意匠の太陽電池のニーズが高まっている。
通常、太陽電池をフィルムで覆うと太陽光が透過せず発電しなくなるという。今回NPACとトヨタが開発した加飾フィルムは太陽光の大部分が透過できるため、太陽電池の発電量を大幅に損なうことなく、太陽電池をカラフルな色で加飾できるという特長がある。
人が物体の色を知覚するのは、光源からの光が物体にあたり、その物体が反射した光が網膜上の視細胞を刺激することによって「色(反射物体色)」として認識するため。
今回NPACとトヨタが開発した加飾フィルムに含まれる顔料は特定の波長の太陽光を反射することで人に「色」を認識させつつ、残りの太陽光は透過することができるという。
従ってこの加飾フィルムを太陽電池に装着すると、太陽電池の発電を確保しつつ、太陽電池を加飾することが可能とのことだ。
また、加飾フィルムに使用している顔料は、特定の波長を反射して発色する半透明の自動車塗装向けのものを利用している。
この顔料は鱗(うろこ)のような形状のため、色ムラなく均一な発色を実現するには、顔料が同一方向を向くよう配列させ、塗膜の厚みを高精度に均一(数マイクロメートル)にコントロールする必要がある。
そこで、自動車外装を加飾ラッピングする樹脂フィルムの製造技術を応用し、透明樹脂の中に顔料を浮遊させ、顔料が同一方向に配列されるよう透明樹脂をシャープな刃で一方向に伸ばすことで、色ムラなく均一に発色する加飾フィルムを実現したとのことだ。
さらに、加飾フィルムの色は、使用する顔料の選定によって幅広く変化させることが可能であるとともに、印刷技術と融合することで木目やレンガ調、迷彩柄など意匠を表現できるという。
今回開発した加飾フィルムは太陽光を透過するため、太陽電池に装着しても発電できるというメリットがある。
一方、発色のため加飾フィルムの表面でわずかに光が反射するため、約10%の発電量低下が発生する。
例えば、加飾フィルムを装着した太陽電池は、加飾フィルム無しの場合と比べて、木目調(写真左)では約90%、緑色(写真右)では92%の発電量が確認されている。発電量の低下率は発色の濃さや色相によって異なるとのことだ。
加飾フィルムは、幅広い色のバリエーションを持つため、周辺環境と調和した色や意匠性を再現することが可能。
例えば、軽量な太陽電池に加飾フィルムを装着すれば、店舗や家屋壁面やモビリティの外板などへの搭載が期待される。
またシート状の太陽電池に装着すれば、いままで太陽電池を設置できなかった衣類や鞄、アウトドアグッズなどへの活用が期待されるとのことだ。
今回開発した加飾フィルムは、自動車塗装向け顔料を主体としているため、高い耐久性と意匠性が期待される。
実環境での各種耐久性、発電特性、および、周辺環境への意匠の調和の評価を目的に、F-WAVE熊本工場敷地内で実証実験を開始。
実証実験から得られた知見をもとに、より環境に調和した太陽光発電の実現に向け開発を進めていくとのことだ。
実証目的 | 加飾太陽電池の発電特性と色褪せなどの耐久性の評価 |
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実証期間 | 2021年3月12日 ~ 2022年3月 ※予定 |
実施場所 | F-WAVE熊本工場 |
実証に用いる太陽光電池モジュール | ・木目調加飾 ・青色に単色加飾 ・緑色に単色加飾 ・ピンク色に単色加飾 ・加飾無し |