アジアモンスーンPFSコンソーシアムは、2016年12月より、生物系特定産業技術研究支援センターの「「知」の集積と活用の場による研究開発モデル事業」に採択されたプロジェクトである「農林水産・食品産業の情報化と生産システムの革新を推進するアジアモンスーンモデル植物工場システムの開発」に取り組んできた。

同プロジェクトは、日本の農業と工業のコア技術を融合することで、高温多湿地域においても、本州など日本国内の温帯地域と同様に、安全・安心で美味しい日本品種野菜を安定的かつ低価格で生産する技術の開発を目指したもので、当初の目標を達成し、2021年3月末に終了するとのことだ。

同プロジェクトによる高温多湿地域向け太陽光型植物工場の代表的な成果は以下の通り。

1)高温多湿地域向け植物工場および温湿度制御技術の開発と実証

●クラウド型統合環境制御システムを活用し、日本品種の果菜類栽培を高温多湿地域で、かつ周年で実現できる温湿度制御技術を開発し実証

●生産者の収益性向上に向け、1haあたり2億円未満で栽培装置を構築可能とする低コスト栽培システム化技術を実証

2)高温多湿地域での太陽光型植物工場ランニングコスト低減のための素材開発と実証

●農業ハウス向け熱線遮断フィルムを開発し、ハウス内温度を従来の被覆フィルム比で2~3℃抑制可能であることを実証

3)高温多湿環境向け太陽光植物工場の栽培技術の開発と評価

●日本品種の果菜類栽培において、日本国内の温帯地域(本州・九州など)と同等の収量、品質を実証:トマト(40ton/10a、糖度6)、いちご(4.1ton/10a、糖度10)、パプリカ(10ton/10a、糖度8)

4)ジャパンプレミアム野菜のブランド化を支える認証指標、育苗装置の開発

●トマト栽培方法(水耕/土耕)の判別手法、および希少元素によるマーカー表示方法を確立

●LED光育苗装置を用い、高温多湿条件下でもトマトの安定生産をおこなえる高品質な苗(大苗)を供給する育苗システムを開発し、大苗の最適栽培条件を確立

5)ICTを活用した植物工場管理システム、農業経営の育成システムの開発

●気象予測に基づく生育・収穫予測の実現と栽培作業のナビゲーションシステム(栽培作業のToDoリスト自動表示など)構築

アジアモンスーンモデル植物工場システムは、温暖化が進む日本国内のほか、東南アジアを始めとした国外の高温多湿地域において社会実装されることで、農業生産者の収益力向上やSDGsへの貢献が期待されるとのことだ。

今後は、国立研究開発法人国際農林水産業研究センター熱帯・島嶼研究拠点の研究設備を継続使用する新しいコンソーシアムを形成し、熱帯・亜熱帯地域での栽培を前提に、トマトの環境制御最適化(裂果等品質安定化)、イチゴ栽培技術最適化(LED補光による収量UP)に取り組み、アジアモンスーンモデル植物工場システムのさらなる発展を目指すとのことだ。

また、新しいコンソーシアムではアジアモンスーンモデル植物工場システムの国内外の普及を推進するため、農林水産省や各国大使館と連携をとりながら、海外を含む遠隔栽培指導サービスを視野にいれた社会実装を推進し、国内外の生産者の収益力向上およびSDGsへの貢献に取り組んでいくとしている。