島津製作所の受託分析子会社である島津テクノリサーチは、3月26日に下水のPCR検査によって対象集団における新型コロナウイルスの感染状況を監視し、陽性反応がある場合には対人検査で感染者を特定する検査システム「京都モデル」の実証実験を開始すると発表した。

同社は、京都大学の田中宏明教授、井原賢助教、金沢大学の本多了准教授、富山県立大学の端昭彦講師と「京都モデル」の基礎技術の確立に取り組んできたという。

今後は、京都府・京都市の協力のもと社会実装に向けた実証実験を進めていくとのことだ。

新型コロナウイルス感染者の糞便には発症前からウイルスが存在するといわれており、そのため個別施設のトイレ排水を検査することによって、施設利用者を集団として捉えた定期監視が可能。

トイレ排水の検査は、通常の対人検査に比べて個々人の負担がなく、集団全体の感染状況を評価できるうえに、定点的なモニタリングの実施が容易だという。

検査対象が下水とヒトという2階建ての検査システム「京都モデル」は、クラスター(集団感染)の発生防止に役立つと考えられ、特に重症化しやすい高齢者の施設や教育機関、宿泊施設などにおける定期的な運用に適しているとしている。

下水中の新型コロナウイルスの検査は、公益財団法人日本下水道新技術機構による「下水中の新型コロナウイルス遺伝子検出マニュアル(暫定版)」に従って、ポリエチレングリコール沈殿法(PEG沈殿法)で濃縮した試料から、島津製作所製の「新型コロナウイルス検出試薬キット」(研究用試薬)を使用して実施。

島津テクノリサーチは、京都市の衛生検査所として登録されており、PCR検査事業に取り組んできた。

今年2月には下水処理場の下水に含まれる新型コロナウイルスのPCR検査の受託事業を開始。

島津グループは、今後も様々な製品・技術・サービスを通じて新型コロナウイルスの感染拡大防止、安全・衛生管理の向上に尽力していく方針を示している。