ニューバーガー・バーマンは、2020年に、投資先企業の年次株主総会に先立ち、議決権行使の論理的根拠と方針を事前に開示する取り組みを開始した。
同社グループの東京拠点において「日本株式ESGエンゲージメント戦略」を運用する日本株式運用部は、投資先の一社であるアシックスが、2021年3月26日に開催する定時株主総会で提案された取締役5名の選任に関し、4名の選任について、同社グループが有する議決権を反対行使することを決定した。
その背景および論理的根拠を以下にて紹介する。
アシックスは、日本を代表する総合スポーツ用品メーカーであり、同社グループの日本株式運用部が運用する「日本株式ESGエンゲージメント戦略」の投資先の一社。
今回、同社が2021年3月26日に開催する第67回定時株主総会の第2号議案で提案された取締役5名の選任に関し、尾山基氏(候補者番号1)、廣田康人氏(候補者番号2)、柏木斉氏(候補者番号3)および角和夫氏(候補者番号4)の4名の選任について、当社グループが有する議決権を反対行使することを決定。
当該4名の取締役選任に反対する理由は、アシックスが継続する同社株式の大規模な買付行為への対応方針(買収防衛策)だという。
同社の買収防衛策は、2007年の定時株主総会において、当時着手したばかりの経営改革の遂行を理由に導入が承認され、2020年には株主の57%の賛同を得て改定が決議された。
同社グループでは、買収防衛策は株主の権利である株式の自由な売買を制限し、発動された場合は既存株主の利益を大きく棄損するだけでなく、経営に変化をもたらし得る株主の権利も妨げるため、経営陣の保身に繋がりかねないと考えているという。
コーポレートガバナンス・コードもこの点を重視しており、「買収防衛の効果をもたらすことを企図してとられる方策は、経営陣・取締役会の保身を目的とするものであってはならない。」という指針を定めている。
日本株式運用部は、アシックスの経営陣と当該課題について対話を重ねてきました。
その中で、同社が中期経営計画で掲げている目標の達成を通じて企業価値を向上させることが、敵対的買収を防ぐ最も効果的な手段であるという見解を伝えた上で、株主の権利を制限し、株主利益を棄損する可能性がある買収防衛策の廃止を要請してきた。
しかし、買収防衛策が現時点において継続されていることから、同社グループを含む全ての少数株主の権利が尊重されていない状況にあると判断し、継続に責任を有する当該4名の取締役選任に対して、反対を表明することを決定したとのことだ。
ニューバーガー・バーマンは、これからもアシックスの長期的な企業価値向上に資する少数株主の権利を保護する体制の構築を促すため、同社との対話を継続していくとのことだ。