アステラス製薬は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、製薬会社の使命として患者の安全確保および医療現場の負担軽減に寄与するべく様々な取り組みを行っている。

これまでに、医薬品の安定供給、治療薬等の研究開発への貢献、感染が拡大する地域への救援などを含む、以下の取り組みを実施しているとのことだ。

1.ビジネスの継続と医薬品の安定供給の維持について

同社では、国や地域の状況に応じ、出社と在宅での勤務を組み合わせて、社員の安全確保および感染拡大防止に努めているという。

営業活動に関しても、日本国内および欧米アジアをはじめとする全ての地域において、感染拡大防止策をとりながら、適切な情報の提供および収集を各医療機関のルールに従って実施。

社員の安全を最優先としながらも、同社の社会的使命である、医薬品の安定供給・品質管理・安全管理・情報提供については、必要な活動を継続している。

特に、製品の供給に関しては、ビジネスの継続と製品の安定供給を考慮したうえで、原料資材の調達元や製造委託先と緊密に連携することで、原料資材の調達や完成品出荷への新型コロナウイルス感染症によるリスクを管理。

現時点において、新型コロナウイルス感染症が原因で供給に課題が生じている製品はないとのことだ。

2.患者の安全確保と医療現場への負担軽減に向けて

同社は、患者の安全を確保すること、そして医療現場への負担を軽減するために、以下の通り、介入臨床試験の実施に関する対応を取っているという。

  • 新型コロナウイルス感染症感染者の増加が収まらない国・地域において、治験実施施設における新たな介入臨床試験立ち上げのための活動を一時中止していたが、試験ごとにベネフィット/リスクを評価した上で、全ての国で臨床試験を再開。
  • 各国の薬事規制当局が発行したガイダンスに沿って、臨床試験実施計画書を評価し、患者の安全を確保しつつ、医療制度への負担を軽減するための対応を行っている。
  • 試験によっては、患者の安全を最優先するために、臨床試験実施計画書に定められた時期に患者が来院できない場合には、電話などによる遠隔での安全性確認、治験実施施設以外の近隣施設での必要な検査の実施や患者宅への治験薬の送付などの取り組みも実施しているという。
  • いまだ続いている感染拡大に伴う変化に応じて、臨床試験実施計画書の改訂などでフレキシブルに対応できる仕組みを構築している。
  • 同社および同社のグループ会社が実施するすべての介入臨床試験について、常に状況を注視しながら対応を評価・検討。
    なお、同社の共同開発パートナーが実施する臨床試験の中には、異なる対応を取るものもあるとのことだ。

同社は引き続き、患者の安全確保を第一に考え、臨床開発プログラムにおけるコンプライアンスの徹底、およびデータインテグリティ(データ完全性)の維持に注力していくとしている。

3.治療薬等の研究開発への貢献について

政府の要請に応じた医薬品の提供など、関係機関と連携しながら適切な対応を速やかに実施。

日本では、厚生労働省・国立感染症研究所における「新型コロナウイルス感染症の治療に用いる医薬品の基礎的なスクリーニング計画」の協力呼びかけに応じ、化合物を提供。

また、欧州製薬団体連合会(EFPIA)・画期的新薬イニシアチブ(IMI)による「新型ウイルス治療薬の開発を目指した活動」への協力呼びかけにも対応している。

同社のグループ会社(Astellas Pharma Europe Ltd.)は、欧州で最大規模の、新型コロナウイルス感染症に関する課題解決に向けた官民パートナーシップである「CAREコンソーシアム」に参画。

CAREコンソーシアムは、IMIからの資金提供のもと、新型コロナウイルス感染症治療薬の開発をより一層加速させることを目指しているとのことだ。

米国では、非営利団体であるTransCelerate BioPharma Inc.の会員活動の一環として、同社は新型コロナウイルス感染症タスクフォースに参加し、他の製薬企業20社とともに、新型コロナウイルス感染症の感染拡大下において、患者の安全とデータ完全性の維持を図りつつ、いかに臨床試験を継続していくかという点について、ベストプラクティスを共有しているという。

さらに、同社が保有する技術や開発・販売中の薬剤を新型コロナウイルス感染症の治療等に用いる様々な提案を社内で積極的に募集しており、社外からの提案とともに迅速な評価・検討を実施。

この他にも各国政府からの要請に基づく研究段階にある化合物への提供要請に対応。

同社では安全性を第一に考え、同時に一刻も早くあらゆる可能性を探るため、治療薬等の研究開発に引き続き貢献していくとしている。

4.各国・地域における救援活動について

日本においては、新型コロナウイルス感染症関連研究への助成を目的として、公益財団法人アステラス病態代謝研究会に500万円の寄附を実施。これは、同財団が募集する2020年度研究助成プログラムの中から新型コロナウイルス感染症関連の研究に活用される。

また、同財団では、研究者の海外留学を支援しているが、その中で、新型コロナウイルス感染症によって経済的影響を受けた研究者に対し、同財団から最大1,000万円の資金援助が行われるという。

また、中国においては、同社のグループ会社(Astellas Pharma China, Inc.)から、中国赤十字基金会に100万元の寄付を実施。

中国・武漢の病院で治療に当たる医療関係者のための防護服やマスク、消毒液などの購入や治療設備の調達に活用されており、加えて、これまでに総額約30万元に相当する個人防護具を同基金会に寄贈し、武漢市内の病院に配布されているとのことだ。

米国においては、同社のグループ会社(Astellas Pharma US, Inc.)およびアステラス・グローバルヘルス財団(Astellas Global Health Foundation)が、それぞれ個別に、患者、医療従事者、ファーストレスポンダー(緊急対応員)への支援となる財源・物資を緊急に提供するための総額270万米ドル以上の資金援助を実施。

例えとしては以下が挙げられている。

■米国全土レベルでは、新型コロナウイルス感染症感染拡大の影響を受けるコミュニティへの人道的支援を展開する組織・団体への援助を実施。
具体的には、アメリケアズ(AmeriCares)、アメリカ赤十字社、ダイレクトリリーフ(Direct Relief)が行う緊急的措置への企業としての寄付・寄贈が含まれ、さらに、社内慈善寄附プロセスに則り、同社の注力領域に関連する非営利のヘルスケア団体に対し新型コロナウイルス感染症対策支援のための提案依頼書を発信。
パンデミック中の患者とケアパートナー支援のため、注力分野に沿った5つの非営利団体に資金援助を実施。また、各種機器・器具や個人防護具の寄贈、アメリカ疾病管理予防センター(CDC)のガイダンスに沿った献血、社員による社会貢献やボランティア活動なども推進中。
さらに、地域レベルとして、Astellas Pharma US, Inc.があるイリノイ州では、州知事による新型コロナウイルス感染症対策基金、およびIllinois Biotechnology Innovation Organization (iBIO)による個人防護具の新型コロナウイルス感染症救援基金において、それぞれ共同設立者を務めるなど、様々な州内の組織・団体と連携している。

■アステラス・グローバルヘルス財団は、特に脆弱で医療へのアクセスが困難な地域において、新型コロナウイルス感染症の感染拡大と影響長期化を防ごうと奮闘している人道支援組織の差し迫ったニーズの支援に、総額200万米ドルの資金援助を実施。
この資金援助は、医療インフラの整備および新型コロナウイルス感染症に関する教育・訓練活動にあてられ、ケニアやドミニカ共和国、南スーダン、コンゴ民主共和国、ガーナ、エチオピア、ナイジェリアに住む725,000人以上の生活に影響を与えることになるという。

さらに、米国において、患者による同社薬剤へのアクセスを確保し、保険償還をサポートするための取り組み(Astellas Pharma Support Solutions SM)を通じ、新型コロナウイルス感染症の影響で失業および保険に加入できなくなった患者がより迅速にサポートの申請を行い、審査されるようプロセスの変更を行い、カスタマーサービスによるサポート体制を強化。

イタリアにおいては、同社のグループ会社(Astellas Pharma S.p.A.)が公的医療機関およびNPOへの必要物資補給のために17万4,800ユーロ分の寄付を実施。

スペインにおいても、同社のグループ会社(Astellas Pharma S.A.)が医療機関への必要物資補給を目的として、同国保健省に20万ユーロ分の寄付を行ったという。

また、政府や非営利団体などからの様々な医療現場の支援活動の要請に対応できるよう、医療資格を有するアステラス社員が自らのコミュニティで求められるボランティア活動への参加を希望する場合には、各国の法令および社内規程に準拠した上で最長4週間の有給休暇を付与。

同社は引き続き各方面からの情報収集を迅速に行い、日々変化する状況を正確に把握し、各国の関係機関とも連携しながら必要な対応を速やかに実施していくとのことだ。