東京都健康長寿医療センター研究所の桜井良太研究員と藤原佳典研究部長の研究グループは、SNSの利用状況と精神的な健康との関連を検討し、その研究結果を発表した。
今回、東京都内在住の無作為抽出した21,300名を対象に郵送による住民調査を行い、LINE、Facebook、Twitter、Instagramの使用頻度と精神的な健康状態(ウェルビーイング〈精神的な満足感・幸福感:WHO-5という質問票で調査〉、悩み・抑うつ傾向〈K6という質問票で調査〉、孤立感を測定)の関連を調査。
その際、SNSの利用は「発信」と「閲覧」に分け、それぞれ「週に数回以上利用する」と回答した者を定期利用者とし、精神的健康との関連を検討したという。
研究の結果、8,576名(若年者[18-39歳]2,543名; 中年者[40-64歳]3,048名 高齢者[65歳-]2,985名)から有効回答が得られ、以下の点が明らかになったという。
- 6割の高齢者がSNSを利用できる機器を保有しており(主にはスマートフォン)、全世代において一番定期利用者が多いSNSはLINE。
- 若年者ではInstagramの定期閲覧、中年者ではFacebook定期発信、高齢者ではLINE定期利用(発信と閲覧の両者)が良好なウェルビーイングと関連していた。
- 若年者ではInstagramを定期閲覧、中年者ではLINEを定期発信している人ほど悩み・抑うつ傾向が低い関係が認められた。
他方で、両年代においてTwitter定期利用者(発信と閲覧の両者)ほど悩み・抑うつ傾向が強くなる関係が示された。 - 中年者のTwitter定期利用者(発信と閲覧の両者)および高齢者でTwitterを定期発信している人では孤立感を有している割合が高くなる傾向が認められた。
- SNS以外のコミュニケーション(対面での会話や電話)が低い人では、全世代を通じて、全ての精神的健康度の指標が悪い傾向が認められた。
(A)LINEを定期的に利用している人ではウェルビーイングを測定するWHO5得点が高い傾向があることが分かる。
(B) Twitterを定期的に利用している人では孤立感を抱いている人の割合が高い。
これらはSNS以外のコミュニケーション頻度を調整しても統計学的に意味のある関連であったという。
同研究は1時点の関連性を調べた調査であり、「このSNSを使っていると精神的に健康になる」という因果関係を示したものではなく、SNSの利用頻度別に、利用者の精神的健康度の特徴(SNS利用と精神的健康度の関連性)を示した研究結果であるため、その解釈には注意が必要とのことだ。
世代間のSNS利用率のばらつきなど等(高齢者層のSNS利用率の低さ)や個別性(SNSの利用目的)を含め、引き続き検証が必要な結果ではあるが、研究の結果は、顔の見えるSNS(LINEやFacebook)や肯定的なイメージのやりとりが生じるSNS(Instagram)であれば、精神的な健康の維持に役立つ可能性を示しているという。
他方で匿名性と自由度の高いSNS(Twitter)であればその逆の危険性を含んでいる可能性を示唆しているとのことだ。
またSNS以外のコミュニケーション(対面での会話や電話)頻度も全世代を通じて精神的健康に関連していたことから、バランスのとれたSNS利用が必要であるといえるという。
<参照元>
東京都健康長寿医療センター『SNSの利用とこころの健康は関連するか?―LINEの利用とは良好な関連を示すが、Twitterの利用とは負の関連を示すことが明らかに―
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