JR東日本では、東日本大震災や過去の地震被害を教訓とし、近い将来発生が懸念されている首都直下地震などの大規模な地震に備え、さまざまな取り組みを行ってきた。

東日本大震災の発災から 10年が経過することから、この間の地震・津波に備えて実施してきた取り組みを発表した。

地震や津波から利用者を守るため、今後も引き続き、これらの地震・津波対策を着実に進め、さらなる安全性向上に向けて取り組んでいくとしている。

1.人々や列車を地震から守る大規模地震対策

人や列車を地震から守る大規模地震対策については、過去の地震被害を教訓に、以下の3点を柱として各種の対策に取り組んでいるという。

  • 走行中の列車を早く止める ≪列車緊急停止対策≫
  • 構造物が壊れないようにする ≪耐震補強対策≫
  • 脱線後の被害を最小限にする ≪列車の線路からの逸脱防止対策≫

① 走行中の列車を早く止める ≪列車緊急停止対策≫

線路の沿線、海岸、内陸部に地震計を配置し、地震をいち早く検知して、列車を停止させるシステムを構築。東日本大震災以降、地震検知体制のさらなる強化を進めているとのことだ。

  • 新幹線早期検知地震計を増設およびP波による緊急停止警報発報までの時間短縮
  • 社外地震情報の活用(気象庁緊急地震速報、(国研)防災科学技術研究所の海底地震計情報)

② 構造物が壊れないようにする ≪耐震補強対策≫

阪神淡路大震災以降、高架橋柱や駅舎などの耐震補強を進めてきたが、東日本大震災において広範囲にさまざまな構造物が被害を受けたこと、また近い将来発生が懸念される首都直下地震に備えて、従前からの対策の対象や範囲を拡大し耐震補強を行っているという。

東日本大震災以降進めている耐震補強対策の施工状況

③ 脱線後の被害を最小限にする ≪列車の線路からの逸脱防止対策≫

新幹線の脱線後の逸脱防止対策は、すべての新幹線車両へのL型車両ガイドおよび脱線対策用接着絶縁継目の設置が完了しており、現在は、各種軌道構造に対応した補強方法を開発しレール転倒防止装置の整備を進めているとのことだ。

主な設備の耐震補強施工エリア毎の進捗状況

2.東日本大震災の教訓を踏まえた津波から利用者を守る対策

JR東日本では、東日本大震災以前より対応マニュアルの作成や降車誘導訓練などの津波対策を行っていたが、東日本大震災の津波被害を受け、津波避難の基本的な考え方「津波避難行動心得」の制定や駅への避難経路図の掲出など、利用者の避難誘導を安全かつ迅速に行うため、さらなる津波対策を行っている。

津波から利用者を守る対策

3.東日本大震災などの教訓を踏まえた災害対応力を向上させる取り組み

JR東日本では、東日本大震災やその他の震災で得られた教訓から、今後発生する可能性のある大規模地震に備え、発災時の災害対応力向上のための以下の取り組みを行っている。

(1)通信途絶などが発生した場合に備えた非常用通信設備の整備
(2)停電に備えた非常用電源の整備

(3)帰宅困難者対策
(4)地震に関するルール、マニュアル類の整備

(5)救助救命講習の実施
(6)大規模地震に備えた検測装置や予備品の整備