企業における経営・人事課題の解決および事業・戦略の推進を支援するリクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所は、2020年9月、443名の一般社員、286名の管理職に対し、「上司・部下間コミュニケーションに関する実態調査」を実施。
「上司・部下間のコミュニケーションのすれ違い」や「コミュニケーションの十分度・重要度に影響する要素」など、調査結果から見える実態について公表したと発表した。
調査背景と結果のポイント
昨年11月に公表した「会社・上司への信頼に関する実態調査」では、テレワーク環境下で、上司が意図してコミュニケーションを積極的にとろうとしていることが信頼につながっているとのコメントが多く上がったという。
上司・部下間のコミュニケーションについては、従前からあった課題とテレワークだからこそ浮き彫りになった課題との、両方が考えられる。
このことから、今回は、「週の半分、隔週など、概ね月の半分程度」もしくは「ほぼ毎日」テレワークを実施している会社に勤務している正社員を対象に、テレワーク環境下における「上司・部下間のコミュニケーション」に焦点をあてて、実態調査を実施したという。
●管理職と一般社員が十分にコミュニケーションできていると認識しているもののなかで有意な差があったものについて比較。
管理職で高かったものは、「仕事の意味について説明」「期待をかけていることを伝える」「貢献に対して感謝」「会社や自部署の長期的な目標について話す」「意見やアイディアを求める」となった。
一方で、一般社員で高かったものは、「間違いや足りない点を指摘」「世間話やプライベートに関する雑談」だったという。
⇒どちらの方が高いにせよ、差がある内容については、相手に十分に伝わっていない可能性がある。
●管理職の方が一般社員よりコミュニケーションの重要度がほぼすべての項目において高く、「期待をかけていることを伝える」「貢献に対して感謝」「心身の健康状態について話をする」「意見やアイディアを求める」などを重要視。
●コミュニケーションの十分度・重要度を全体的に高めた要素について、一般社員は「上司信頼」「職務自律性」「心理的安全性」が高いことだった。管理職は「部下への評価」「部下の職務自律性」「心理的安全性」が高いことだった。
●一般社員は、直属の上司に言いたかったのに言えなかったことについて、テレワークに関することとしては、「対面で話せないことでうまく伝えられない」「リマインドをしづらい」「なんとなく出社してしまっている」と回答。
管理職は、部下に言うべきだったのに言えなかったことについて、「微妙なニュアンスを気にして対面でないと言いづらいことがある」と回答。
●上司・部下に言いたかった/言うべきだったのに言えなかった理由は、一般社員、管理職共に共通して「気分を害するから」「話すタイミングがなかったから」「リモートワークで、気軽に声をかけづらいから」と回答。
●テレワークに対して、一般社員は「対人関係のストレスが減る」というポジティブな面を感じていて、「テレワークがもっと普及するといい」と思う傾向があった。
管理職の方が「会社への愛着を感じにくくなる」「仕事の自己管理能力が求められる」という懸念や、「発想を広げたり、アイディアを出し合うのが難しい」「気持ちを察したうえでのコミュニケーションが難しい」といった課題を感じている結果となった。
テレワーク下においてコミュニケーションを円滑にする3つの方法
1.コミュニケーションにおける互いの期待をすりあわせる
テレワーク下において管理職と一般社員では、立場の違いによるコミュニケーションの「すれ違い」が生じる可能性が示されたという。
また、「仕事の進捗」や「健康やプライベート状況」など、コミュニケーションの内容によってもすれ違いの実態が明らかに。
テレワーク下においてコミュニケーションを円滑に進めるためには、上司と部下はコミュニケーションにおける互いの期待について、より意識的になり、すりあわせていくことが求められるとのことだ。
2.互いにコミュニケーションの十分度・重要度を高めるための土台を整える
管理職・一般社員の間には前述「■調査結果より一部抜粋」で紹介したような違いが見られたものの、いずれにおいても、コミュニケーションの十分度・重視度の認識には、相手に対する評価や信頼、自律的に仕事が行われる程度、職場の心理的安全性の認識などが、ポジティブな影響を与えていることが示された。
これらの要素については、立場の違いに関わらず、コミュニケーションの改善に役立つ可能性がある。
例えば管理職は、部下との1対1のコミュニケーションの時だけでなく、普段から安心して発言できる職場づくりを意識することで、コミュニケーションを改善することができるとしている。
3.ネガティブフィードバックの難しさを認識したうえで、先送りせず丁寧にコミュニケーションする
管理職・一般社員のいずれにおいても、テレワーク環境下においてネガティブフィードバックについて躊躇する、先送りにするなどの実態が確認され、管理職の方がより強くそのように感じている可能性が示された。
言いたいこと、言うべきだと思ったことを控えた理由には、立場による違いも見られた。一般社員はちょっとした相談や考えを上司に伝えるタイミングが捉えづらく、管理職は部下の反応を見ながら微妙なニュアンスを伝えることが難しいと感じていた。
特に一般社員については、単に上司とコミュニケーションするタイミングがないことも多いため、管理職は気軽に相談できる機会を設けることを心掛ける必要があるという。
調査概要