オリンパスは、医療用蛍光イメージングシステムの先進企業であるQuest Photonic Devices(以下、クエスト社)の株式100%を取得する契約を締結した。

買収金額は約50百万ユーロを予定しているという(条件付対価等含む)。

蛍光イメージングは、特殊光観察技術の1つであり、特定の蛍光色素が生体構造に集積するという性質を利用した観察方法。

観察用途・目的に応じた色素を特定の励起波長と組み合わせることで、通常の白色光の下では観察の難しい組織や病変を可視化する技術であり、外科手術におけるイメージング技術への適用拡大が期待されている。

オリンパスが既に導入している外科手術用内視鏡システム「VISERA ELITE II」も、近赤外光を利用した蛍光イメージングに対応しており、手術中における血管の確認や血流の評価をサポートしている。

クエスト社は、先進的な医療用蛍光イメージングシステムの開発、製造、販売を行っている企業で、外科領域のイメージング技術の革新に貢献。

さまざまな光の波長を活用したイメージング技術の開発に強みを持っており、開腹手術や腹腔鏡手術における蛍光ガイド手術用のイメージングシステム「Spectrum®」をはじめ、光線力学療法向け機器など幅広い医療用イメージング機器を提供している。

同社はこれまでも外科内視鏡イメージングの分野において4K、3Dなどの技術を導入してきたが、買収により、蛍光イメージング技術および製品ラインアップを強化することで、これまで外科医にとって観察が難しかった病変や組織の可視化に向けてさらなる貢献をしていくとしている。

蛍光ガイド手術向け医療用イメージング機器の世界市場規模は、2018年の約3億1,000万米ドルから2027年には8億2,700万米ドル以上と、年率12%以上の成長が見込まれている。

また、再建手術および低侵襲手術への需要の高まりが、蛍光ガイド手術市場の成長を牽引しているという。

さらに、がんと特異的に結合する抗体を組み合わせた蛍光薬剤を用いる分子イメージングという技術の新たな研究が進んでおり、蛍光イメージング技術の適用がさらに拡大することが見込まれている。

この分子イメージングが実用化されれば、がんの再発率低減を目指し外科医ががん病変の摘出手術を行う際に、がん病変を可視化できるという技術的貢献が期待されているとのことだ。

クエスト社は、既に承認されている蛍光イメージング用薬剤に対応する観察技術に加え、同社の蛍光イメージング技術を利用して次世代分子イメージング用薬剤の開発に着手するさまざまなバイオテクノロジー企業と共同研究・共同開発を進めており、蛍光ガイド下のがん手術における新たな技術の可能性を追求している。

オリンパスの外科内視鏡イメージングのグローバルヘッドである松本勘一氏は以下のように述べている。

「クエスト社の先進的な蛍光イメージングシステムを当社の内視鏡イメージング製品のポートフォリオに組み入れられることを嬉しく思っています。

当社の外科手術用内視鏡システム「VISERA ELITE II」と、クエスト社の主力製品である「Spectrum®」の蛍光ガイド手術向け技術を組み合わせることで、開腹手術・腹腔鏡手術の両方をカバーできる高品質な蛍光イメージングソリューションの提供が可能になると考えています。」