電通で、地方都市のブランディングを支援する社内横断チームdentsu abic(電通アビック)は、首都圏在住の1600人(20~60代男女)を対象に「全国51都市ブランド調査」を実施し、その結果を発表した。
分散型社会の実現のためには、首都圏の人々と地方都市における関係人口の増加が不可欠であると考え、首都圏から見た地方都市のイメージを明確にしたものだという。
都道府県庁所在地および政令指定都市の計 51都市を対象とし、関係人口に関する八つの行動意向(観光来訪意向、交流意向、応援意向、愛着意向、ファン意向、貢献意向、仕事意向、居住意向)を聴取・因子分析した上で、自由記述された各都市のイメージを構造化。
51もの都市イメージを構造化した調査は過去に珍しく、電通としても初の試みになるという。
同調査は、地方都市のブランド力をランキングといった相対的な数字で見るのではなく、イメージ構造を捉えることで人々を引き付けるストーリーのヒントを導き出し、都市ブランドの形成を支援することを目指しているという。
同調査のファインディングスは以下のとおり。
日本の主要51都市は四つの「ストーリー・マトリクス」に分類される。
<ストーリー・マトリクスと各型の特徴>
八つの行動意向を因子分析した結果、「生活因子」「体験因子」「貢献因子」の三つが抽出され、これらの因子を元に51都市のクラスター分析を行うと、4クラスターに分類。
首都圏在住者から見た各クラスターの特徴は、次のようになるという。
■リッチストーリー型の特徴(4都市)イメージされる平均ワード数が最も多く、多様な意味がバランスよく存在する。情緒的な形容詞も多い。
各ワードを結ぶハブワードが複数見られ、それぞれが意味の広がりを持っている。ワード間のつながりと結びつきも強く、豊かなストーリー性を持つ。行動意向も全てが高い。
■ユニークストーリー型の特徴(22都市)個性的な意味と一般的な意味が混在する場合と、一点特化型の資産が存在する場合に分かれる。強い文脈と弱い文脈が混在し、ハブワードの少ない都市も見られる。
資産ワードが情緒的形容詞へとつながっていない場合が多く、意味の広がりやストーリー性が表れる都市は少ない。一部の行動意向が高い。
■コモディティストーリー型の特徴(18都市)ワード数が最も少ない。市単位の固有の意味も少なく、県単位の意味が多く見られる。
県庁所在地など一般的なワードが多く、ハブワードも少なく、ワード間のつながりや結びつきも弱い。差別性に乏しい一般的な意味構造となっている。全ての行動意向が低い。
■ノンストーリー型の特徴(7都市)コモディティストーリー型よりもワード数が多く、個性的な文脈が見られる一方で、ネガティブなワードや文脈が見られる場合がある。全ての行動意向が非常に低い。
<リッチストーリー型の例>■横浜のストーリー構造「中華街」と「みなとみらい」がある「おしゃれ」な「町」として魅力的な観光地であり、「住みやすい」「町」といったワードで住みやすさも評価される。統一感あるイメージが見て取れる。
<ユニークストーリー型の例>■青森のストーリー構造「りんご」「ねぶた祭り」といった個性的な資産を中心に持つ一方で、「雪」から広がるストーリーの形成が十分ではない。
今後、多様な関係人口の増加を目指すには、「暮らし」に関するユニークなストーリーの形成が課題と読み取れる。
なお、dentsu abicでは本調査の知見を生かした対話型コンサルティングサービス「プレイス・ストーリーズ」を開始するという。
都市の状況を診断・把握しながら、外部から見てより豊かなストーリーを持つ都市ブランドを形成するための支援を行い、関係人口の増加と分散型社会の実現に貢献していくとのことだ。
対象となる都市の課題や状況に応じてサービスメニューをカスタマイズしながら、課題解決の提供を行っていくとしている。
<調査概要>タイトル:全国51都市ブランド調査
調査手法:インターネット調査
調査時期:2020年6月3日~7日
エリア:首都圏(埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県)
対象者:20~60代男女
対象都市:県庁所在地と政令指定都市(全51都市)
サンプル数:1,600サンプル
調査内容:首都圏居住者における都市に対する行動意向とストーリー構造の測定
調査機関:電通マクロミルインサイト