Z・ミレニアル世代の消費スタイルはレンタル/ユーズド。IKEA、Levi’s、Gucci、Walmartなどのブランドが本格参入する「REコマース」とは?

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2021年、Eコマースではなく「REコマース」に注目

持続可能な開発目標(SDGs)に関連して「サーキュラーエコノミー」や「シェアエコノミー」への関心が高まっている。この文脈で、パンデミック収束後には、新たに「REコマース」という言葉がグローバルコンシューマ市場でのキーワードになるかもしれない。

「REコマース(re-commerce)」とは、商品レンタルやユーズド商品の買取・再販サービスなどを総称する言葉で、2020年後半ごろから英語圏のメディアで登場する頻度が増えている。レンタルやユーズド商品への需要は、この数年ミレニアル世代やZ世代を中心に高まりを見せていたが、パンデミックの影響で一層関心が高まっているためのようだ。

また、IKEA、Levi’s、Gucci、Walmartなどグローバル企業がREコマースの取り組みを始めていることもメディアの注目を集める理由となっている。

消費者需要の変化、企業の取り組み事例から、REコマース市場の最新動向を探ってみたい。

若い世代の節約志向・環境意識の高まりとREコマース・レンタル市場の活況

REコマースのサブカテゴリの1つレンタル市場。その中で、成長著しいのはレンタルファッションだ。

ペンシルベニア大学ウォートン・スクールは2020年1月に「The Rise of Re-commerce(REコマースの台頭)」と題した記事を公開しているが、その中でMarketWatchのデータを引用し、オンライン・レンタルファッション市場は今後4年間で年率10%以上の成長を遂げ、その成長速度は伝統的なリテール市場の21倍になるとの見解を示している。

オンライン・レンタルファッション市場の急成長の背景には、ミレニアル世代とZ世代の消費行動がある。X世代や団塊の世代では、レンタルやユーズドは「恥ずかしい」とのイメージが強いようだが、節約志向と環境意識を持つ若い世代には、レンタルやユーズドはむしろ「クール」に映っており、その需要はファッションを中心に様々な分野に拡大している。

Lab42が2019年に米国消費者のレンタルサービス利用について調査を実施したところ、レンタルが最も多いカテゴリは家具であることが判明。実に消費者の45%が家具レンタルサービスを利用していることが明らかになった。このほか、ゲーム37%、工具35%、ファッション35%、パソコン33%、宝石・アクセサリー29%、家電29%と、あらゆるプロダクトがレンタルされている状況が浮き彫りとなった。

レンタル利用する消費者の年齢層は、18〜38歳が64%、39〜49歳が20%、50歳以上が16%と若い消費者がレンタル市場をけん引している様相も示されている。

英国のリテールアナリスト、アンドリュー・バスビー氏が指摘するところ(英Metro誌取材)では、X世代や団塊の世代が所有物(家や車など)で自身のライフを定義する傾向が強い一方で、若い世代は体験や精神的な要素(友人、コミュニティなど)で定義する傾向があり、それが今のレンタル市場の活況の背景にあるという。

Lab42のデータでレンタル利用が最も多いことが示された家具。MarketWatchによると、米国ではCORT、インドではFurlencoやRentmojoなどの企業が同分野の主要プレーヤーであるという。馴染みのない企業名が並んでいるが、日本でもよく知られているグローバル家具大手IKEAもREコマース取り組みを開始している。

IKEAが実施しているREコマース取り組みの1つが家具リースサービスの試験運用だ。2019年4月、IKEAは2030年までに循環型ビジネスを達成するための取り組みの一環として、主要30市場において2020年中に家具リースサービスの試験運用を開始することを発表したのだ。このほか、2020年9〜10月頃にIKEA家具の買い取りプログラムやユーズド商品に特化した店舗の開設など、REコマース取り組みを本格化させている。

スマホやゲーム機もレンタルで節約するミレニアル/Z世代

テクノロジーの発展によってこれまでレンタルすることが難しかったプロダクトのレンタルも可能になっており、レンタル市場の幅は広がりを見せている。

レンタルが難しいプロダクトとして挙げられるのが、パソコン、ゲーム機、スマホなどの精密機械/電子デバイスだ。家具や洋服とは異なり、利用者が落としてしまい使いものにならなくってしまうリスクが非常に高い。

この点、ドイツ発のガジェット専門レンタルスタートアップGroverは、サードパーティ・データに加え、独自のアルゴリズムによって、利用者のリスク評価を実施し、 リスクが低い利用者へのサービス展開によって、スマホやゲーム機のレンタルサービスで売上を伸ばしている。

Siftedによると、2020年9月時点で登録者50万人以上、アクティブ利用者は10万人以上。月間30%以上で利用者は増えているという。

Groverの急成長を可能にしている要因は、レンタルファッションや家具が伸びている理由と同じところにある。つまり、消費者の節約志向と環境意識の高まりだ。

Groverで人気が高いスマホのレンタル。近年のスマホは高精度化が進み、それに伴い値段も高騰している。上位機種であれば20万円近くになることも珍しくなく、新モデルが登場する度に買い換えることをためらう消費者が多くなっている。特にパンデミックによる先行き不安で、節約志向は一層高まってきている状況だ。Groverでスマホを12カ月レンタルすると、本体価格のおよそ40%のコストに抑えられるという。

スマホやパソコンに関しては、電子廃棄物(e-waste)問題が取り沙汰されることが増えており、同問題に対する消費者の認知も高まりつつある。Groverによると、同サービスでは15万台のデバイスを循環させており、これまでに電子廃棄物約360メトリックトン分、二酸化炭素4.275メトリックトン分を節約したとのこと。

Groverはこのほどサムスンと提携し、サムスン製のスマホのレンタルも開始している。大手スマホメーカーもZ世代やミレニアル世代にリーチする上で、レンタル市場の重要性を認識し始めていることを示す動きだ。

ガジェット専門レンタルスタートアップ「Grover」のウェブサイト

持続可能性目標達成へ、ラグジュアリーブランドも参入するユーズド市場

REコマース市場でもう1つ重要なサブカテゴリがユーズド(Used、resale)市場だ。

同市場では、これまで距離を置いていたプレーヤーの参入もあり、2021年以降も活況する見込みだ。

たとえば、ラグジュアリーブランドのGucciは2020年10月、オンラインのユーズド・ラグジュアリープラットフォームRealRealと提携し、Gucciのユーズドアイテムに特化したオンラインショップを開設する計画を発表した。

Gucciは2025年までにサプライチェーンにおける環境インパクトの大幅削減を公言しており、ユーズド市場参入はその一環であるという。

このほか、Levi’sが2020年10月に、ユーズドジーンズのマーケットプレイス「Levi’s SecondHand」をローンチしたり、Walmartがユーズドファッションの主要企業の1つthredUPとの提携(2020年5月)で同市場に参入するなど、グローバル企業による取り組みが加速している。

2021年は「REコマース」という言葉から目が離せない年になりそうだ。

文:細谷元(Livit

参考
ウォートン・スクールレポート
https://knowledge.wharton.upenn.edu/article/rise-re-commerce-everything-old-new/

Lab42データ(インフォグラフ)
https://www.visualcapitalist.com/millennials-rental-economy/

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