孤独は同居で解消されない?幸福研究所が発表したコロナ禍で幸福度を高める6つの行動とは

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ウェルビーイングに関する調査・研究を行うデンマークの幸福研究所が、2020年4月〜7月にかけて研究した「COVID-19時代の幸福」の調査レポートを発表した。

これには、コロナ禍で人々が感じる孤独や不安、孤独に対する行動の影響、症例増加と幸福の関係などの結果が含まれる。

これらの調査を経て導き出されたのは、コロナ禍で幸福レベルを高める6つの行動。調査レポートの内容と幸福研究所が推奨する行動について紹介したい。

もっとも孤独感が強いのは、18〜24歳の大学生

今回、幸福研究所は3カ月の期間中、3,211人に対して最大6回の調査を実施。北米・ヨーロッパ・中東など97カ国から12,000件の回答を得た。まずは、人々をグループごとにカテゴライズして孤独感を調査した結果から見てみよう。

年齢ごとの孤独感を表したグラフ(幸福研究所「Wellbeing in the age of COVID-19」より)

調査を実施した4〜7月は多くの国でロックダウンを実施しており、レストランやリラクゼーション施設、映画館等の営業停止、休校などの措置が取られていた。この調査では大学生を中心とした若い人々(18〜24歳)の孤独感が非常に高く、休校の影響が大きいことが予想される。35歳以上になると、数値は大きく変わらなかった。

性別で比べると、わずかだが女性のほうが孤独を感じやすいそうだ。日本では今年7月以降、4カ月連続で自殺者が増加しており、特に女性の増加が目立つ。10月は昨年比で男性が21.3%増に対し、女性は82.6%増。この裏には、女性が孤独感を感じやすい傾向があるのかもしれない。

雇用関係と孤独感の関係性を表したグラフ(幸福研究所「Wellbeing in the age of COVID-19」より)

雇用別の孤独感の調査結果では、無職(32%)、生徒(28%)、失業中(25%)、一時解雇(22%)、フルタイム職(20%)、パートタイム職(18%)となった。レポートでは、オンライン等での同僚との社会的接触が、孤独感を緩和する可能性があると指摘。また、ここでも休校中の大学生の孤独感が他と比べて高いことが判明した。

同居が必ずしも孤独を防ぐわけではない

続いては、人々の暮らしのスタイルと孤独感との関係性の調査結果を見てみよう。

居住の状況による孤独感の違いを表したグラフ(幸福研究所「Wellbeing in the age of COVID-19」より)

このグラフは、親密な間柄にある人と同居する人(赤)、大人と同居している人(黄色)、子どもと同居している人(オレンジ)を表す。親密な間柄であれば、同居人数が増えるにつれて孤独感が低下するものの、そうではない場合は2人以上になると孤独感が増している。子どもと一緒に暮らす場合は、4人になると一気に孤独感が増すのも興味深い。

婚姻状況による孤独感を表したグラフ(幸福研究所「Wellbeing in the age of COVID-19」より)

婚姻状況からも孤独感との関連性が見られる。これは、独身者(赤)、パートナーがいるが別々に暮らす人(オレンジ)、パートナーと一緒に暮らす人(黄色)の3つのカテゴリーに属する人の同居人数による孤独感の違いを比較したグラフ。

独身者は、3人以上で暮らすと1人で暮らすときよりも孤独感が高まるのは、意外な結果と言えないだろうか。これらの結果から、単純に誰かと暮らす同居のスタイルが孤独を防ぐわけではないことが理解できる。

この調査では、人々の心配事のトップは「経済危機が長期化すること」だったが、人生の満足度にもっとも影響を及ぼすのは、経済的な問題よりも「愛する人を失うこと」だった。そして、幸福にもっとも影響を及ぼすのは「孤独」であることもわかった。

コロナ禍で幸福レベルを高める6つの行動

この調査では、人々がどんな行動をしたときに生活満足度が高まるかについても示されている。その結果に基づき、幸福研究所が推奨する「コロナ禍で幸福レベルを高めやすい6つの行動」を最後に紹介したい。

1. 15分以上、野外を散歩する

さまざまな行動の中で、もっとも満足度がアップしたのが散歩だった。屋外を歩くことは意味のある休憩であり、散歩をしながら家族や友人に電話をすれば、さらなる満足度の向上が期待できる。日中の明るい時間に実施してみてほしい。

2. 制作活動に熱中する

絵を描く、編み物、DIY、料理、ガーデニングなどの活動は、誰かと密に接することなく、1人でもできるのがメリットだ。定期的に制作活動を行うことで、生活へのモチベーション維持につなげることが可能だと示されている。趣味を増やすと考えれば、気楽に取り組めそうだ。

3. 短時間の瞑想をする

短時間の瞑想でも、毎日行うことで幸福度を高める可能性があるとのこと。呼吸やその場の音などに集中して、その瞬間を感じることで、開放性、受容性、好奇心などを高めることができると言われる。まずは自分の呼吸に集中、慣れたら公園のベンチに座って風の音や鳥の泣き声に耳を澄ましてみるのも良いだろう。

4.困っている友人や家族に手を貸す

困っているかもしれない友人や家族に手を差し伸べることで、自分自身の幸福にもプラスの影響があることがわかった。 近くにいる誰かが困っていないか注意を払うと共に、自分に助けが必要な場合は周囲に知らせることも重要だ。

5. 親しい人たちと連絡を取り合う

パンデミック時は、親しい間柄の人でさえ頻繁に会うことが難しくなるが、調査結果では友人や家族とのメッセージのやり取りや電話、ビデオチャットでも、幸福レベルの大幅な向上につながると示された。

6. 定期的な運動を維持する

運動をすることは、身体の健康だけでなく精神的な健康にとっても重要であり、冬であっても野外に出ること、定期的に運動することを優先してほしいと幸福研究所は呼びかけている。テレワーク等で運動不足が問題視されている事実もあるので、意識的に運動を取り入れてみよう。

パンデミックはこの冬も続くことが予想されており、三密を回避する生活習慣や行動の変化を迫られている。幸福レベルを上げる6つの行動を、ぜひ毎日の暮らしに取り入れてみてほしい。

【参照】
幸福研究所「Wellbeing in the age of COVID-19」
https://6e3636b7-ad2f-4292-b910-faa23b9c20aa.filesusr.com/ugd/928487_235023a664f144bba3776c053eb48855.pdf

取材・文:小林 香織
編集:岡徳之(Livit

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