日立、大雨による河川氾濫の最小化に向けダム放流計画の自動作成技術を開発

hitachi

日立製作所(以下、日立)と日立パワーソリューションズ(以下、日立パワーソリューションズ)は、大雨による河川氾濫の最小化に向けて実効性のある対策の確立を支援する、ダム放流計画の自動作成技術を開発したと発表した。

同技術では、新たな数値最適化手法を用いることで、ダム下流の河川流量を可能な限り抑える放流計画を自動作成するという。

作成する放流計画は、大雨に先立ってダムの水位を下げる「事前放流」と、上下流の複数のダムの貯留や放流のタイミングをずらす「ダム連携」の対応を組み合わせたもので、ダムの放流量を急激に変化させない「放流の原則」などの現場のルールを順守している。

今回、オープンデータを利用して河川上流にある3つのダムを対象にシミュレーションを行ったところ、一般的な「事前放流」や「ダム連携」を実施しない放流計画ではダムが満杯になり緊急放流に至ったのに対し、同技術では100年に一度の規模の大雨でも緊急放流を回避しつつ、下流のピーク流量を最大で約80%低減し、浸水を発生させない計画を10分以内に立案できることを確認したとのことだ。

また、1,000年に一度の規模の大雨で浸水が発生する場合も、浸水面積を95%低減可能だと確認。

今後、日立パワーソリューションズは同技術を活用して、放流計画立案などのダム管理業務を支援するソリューションを2021年度に提供開始予定としている。

近年、気候変動の影響で大雨による深刻な水害が頻発しており、その対策が急務となっている。従来は、技術者が時々刻々の雨水のダム流入量を観測し、その都度、ダムの放流量を決めることが一般的であったが、大雨が頻発する中で河川氾濫を最小化するために、「事前放流」や複数のダムにまたがる「ダム連携」などの複雑で高度な運用が求められるようになってきているという。

しかし、緊迫した状況の中、「放流の原則」をはじめとする現場のさまざまな制約やルールを順守しながら、上下流のダムの貯水状況や下流までの流下時間など、さまざまな要素を考慮して最適な放流計画を短時間で立てることは、経験を積んだ技術者であっても難しい状況であるとのことだ。

そこで、日立と日立パワーソリューションズは、これまで上下水道や電力、交通、物流などで培ってきた、社会インフラの運用計画策定のノウハウを生かし、河川氾濫の最小化をめざして同技術を開発。

プログレッシブ動的計画法という新たに開発した数値最適化手法を用いることで、ダムの放流を実施しても、下流の河川流量と流量の変化を可能な限り抑制できる放流計画を短時間かつ自動で作成することができる。

具体的には、連携する複数のダム同士の放流量とタイミングを、最初はごく粗く計算し、その後は「放流の原則」など現場のルールを満たしつつ、徐々に細かい計算を繰り返すことで、短時間で放流計画を算出する。

日立パワーソリューションズは、2006年より提供を開始した、河川の氾濫をシミュレーションするリアルタイム洪水シミュレータ「DioVISTA/Flood」を中核として、さまざまな企業や自治体のBCP対策を支援してきた。

今後は、同技術を活用することで、放流計画立案などのダム管理業務を支援するソリューションを2021年度に提供開始予定としている。

日立と日立パワーソリューションズは、近年の頻発する大雨による水害を未然に防ぐための対策の高度化を図り、安全・安心な社会の実現に貢献するとのことだ。

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