Zoomを脅かす?需要急拡大のヴァーチャルイベント会社「Hopin」は国連会議も手掛け評価額2,000億円に

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欧州最速成長のスタートアップ「Hopin」、1年半でユニコーンに

コロナ禍で「テレワーク」や「リモートワーク」などこれまでニッチだった言葉が広く普及し、日常会話でも頻繁に登場するようになった。

上記の言葉に並び欧米で広がりを見せているのが「バーチャル(オンライン)イベント」だ。

ロックダウンによって自由に外出できない状況下、バーチャルイベント需要は急騰、バーチャルイベント・プラットフォームへの流入が爆発的に伸びているのだ。

そんなバーチャルイベント市場の盛り上がりを如実に反映するのが、スタートアップ「Hopin」の短期間での躍進だろう。

2019年6月設立の非常に新しいスタートアップだが、このほど1億2,500万ドル(約130億円)を調達、累計調達額は1億7,000万ドル(約176億円)に達し、評価額21億ドル(約2,181億円)とユニコーン企業の仲間入りを果たしたのだ。

2020年4月時点の社員数は43人だったが、11月には215人と5倍拡大。欧州最速で成長するスタートアップとして投資家やメディアの注目を集めている。年内中さらに150人増やす計画がある。

同社が提供するのは、イベント主催者と参加者が集うバーチャルイベントのプラットフォーム。一見Google MeetやZoomのようなプラットフォームだが、「社内会議」ではなく「イベント」にフォーカスしている点が異なる。

同社によると、現時点のユーザー数は350万人。同社プラットフォームでイベントを開催したクライアントリストには、Slack、Twitch、ユニリーバ、Dell、Adobe、国連、WPPなど大手企業や大規模機関が名を連ねている。

同社ウェブサイトではバーチャルイベント事例として、国連イベントにおける詳細が説明されている。国連イベント(グローバル・コンパクト会議)は、160カ国以上の企業・政府・NGOがニューヨークの国連本部に集う大規模会議。第20回となる今回、Hopinを活用しバーチャルイベントとして開催された。

毎年2,000人ほどが参加する大規模イベントだが、バーチャル化でその規模はさらに大きなものとなった。バーチャルイベントの参加者数は1万5,538人、ページビューは9万4,264回に達したという。

Hopinではバーチャルイベントの「検索機能」が備わっており、ユーザーは興味あるイベントを見つけ、参加することが可能だ。ユーザーの関心に沿ったイベントをリコメンドする機能もあるという。

4月時点で社員43人だったHopin、年内には350人以上に拡大する見込み。Hopinの創業者ジョニー・ブーファーハット氏が英語メディアSiftedの取材で、短期間で企業規模を急拡大できたのは「リモートファーストの企業文化」があるからだと説明している。社員の増加に伴うオフィス移転を必要とせず、また世界各地の人材にアクセスできることが、急拡大を可能にしたと語っている。

バーチャルイベントの世界市場、2027年まで20%超えの成長予測

Hopinの躍進からバーチャルイベント市場が盛り上がっているというのは容易に想像できるだろう。

カリフォルニアを拠点とする調査会社Grand View Researchが2020年7月に発表したレポートによると、収益で見たバーチャルイベントの世界市場規模は2019年時点で779億ドル(約8兆円)だったが、今後年率23%の成長率となり、2027年には4,044億ドル(約42兆円)に達する見込みだ。

バーチャルイベントの種類別で、2019年最も多かったのは「社外向けイベント」で、全体の40%を占めていた。この社外向けイベントには、報道機関向けイベント、見本市、顧客向けイベント、プロダクトローンチなどが含まれる。

Grand View Researchは、バーチャルイベント市場における主要プレーヤーとして、マイクロソフト、シスコ、Zoomなどの大手企業の名を挙げている。

Hopin追うバーチャルイベント・スタートアップ

バーチャルイベント市場では、Grand View Researchがピックアップする大手企業だけでなく、Hopinを筆頭に様々なスタートアップが存在しており、競争の激化は避けられない。

Hopinの競合と目されるスタートアップの1つがシリコンバレー発のBevyだ。

2017年4月設立の同社、Crunchbaseのデータによると、資金調達ラウンドはHopinと同じシリーズBで、これまでに2,140万ドル(約22億円)を調達。同社ウェブサイトに掲載された顧客リストでは、GoPro、ツイッター、Slack、Twitch、Salesforceなど米大手企業の名が確認できる。

Bevyは同社ウェブサイトでHopinとの違いを明確に示し、顧客の獲得を狙っている。Bevyが強調するのは「バーチャルイベントの開催ではなく、グローバルコミュニティを構築すること」だ。コミュニティ構築に重点を置いた仕組み・インターフェイスで差別化を図っている。

Bevyのほかにも、同じくシリコンバレー発のAttendify、デジタルアバターでバーチャルイベントに参加できるTEOOH、英エジンバラ発のHeySummit、テキサス発のvFairsなど様々なスタートアップが存在している。

この先、感染状況に関わらずリモートワークを継続するという企業が増えている。バーチャルイベントも同様に、感染リスクが下がったとしても、イベントの1スタイルとして広く定着していく可能性は十分にある。盛り上がるバーチャルイベント市場、Hopinに続きどのようなユニコーン企業が登場するのか、その動向が気になるところだ。

[文] 細谷元(Livit

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