ジョンソン・エンド・ジョンソン メディカル カンパニーは、全国の20~79歳の男女15,000人を対象に、「健康診断・人間ドック、がん検診に関する意識調査」を実施。

がんを早期発見し、早期治療を行うためには、健康診断・人間ドックやがん検診を受診することが肝要であるが、新型コロナウイルスへの新規感染拡大によって、健康診断やがん検診の受診減少が懸念されている。

同調査では、健康診断・がん検診の受診への意識と実態を調査したとのことだ。

受診に関する意識と実態

  • 「健康診断」「がん検診」の受診回避意向は4-6月に5割を超え、「来年度控えたい」が3割以上。がん検診は、過去3年に受診歴のある人でも「来年度控えたい」が4人に1人
  • 今年度中の「健康診断」実施率は約6割、「がん検診」実施率は約3割の見込み
  • 加入保険で受診率に差。「健康診断」も「がん検診」も、「国民健康保険加入者」が低調

調査対象者に、コロナ対策で緊急事態宣言が出された4月以降の「健康診断」および「がん検診」の受診意向を時期別に質問。

アンケート実施期間(10月23~26日)より以前については、その時の気持ち次第、またそれ以後については調査時点での意向を尋ねた結果、「控えたい(控えたかった)」もしくは「やや控えたい(控えたかった)」と回答した割合が最も多かったのは、宣言発令後の4月から解除翌月にあたる6月までの期間で、「健康診断」が53.6%、「がん検診」が56.9%に。

この割合は、時間の経過とともに減少傾向にあるものの、来年度(2021年4月~2022年3月)であっても「控えたい」とする人は、「健康診断」が30.7%、「がん検診」が33.9%にものぼったとのことだ。

実際の受診状況は、2020年10月時点で「健康診断」を受診済みの人が約4割(38.6%)、今年度中に受診予定の人を含めると約6割(57.7%)。

一方、いずれのがん種の検診をみても、受診済みは2割程度、今年度受診予定を含めても3割程度にとどまっている。さらに、「受診予定はない」「わからない」の回答者割合も、「健康診断」の約3割に対し、「がん検診」は6割前後となっているとのことだ。

受診状況は、加入している健康保険種別にも差がみられた。

後期高齢者医療制度の加入者を除くと、会社員や公務員とその家族は、「組合けんぽ」「協会けんぽ」「共済組合」に加入するケースが多く、自営業や会社を退職した人とその家族の多くが「国民健康保険」に加入。

表は、2020年度の受診者(2021年3月までの受診予定者を含む)の割合を保険種別でみたもの。

「健康診断」は、「国民健康保険」の加入者の受診している割合が低く、2人に1人(50.4%)しか受診していない。

「がん検診」の受診状況でも同じような傾向がみられ、いずれのがん種の検診も約2~3割にとどまっている。一方、企業が単独、あるいは共同設立し保険者となる「組合けんぽ」加入者は、全体平均に対して高い受診率となっている。

健康診断とがん検診を受診しない理由

  • 「健康診断」「がん検診」を今年度受診しない理由:今年度は受診せず、来年度に受診を予定している人の4割以上が、「コロナの感染リスクがあるから」と回答
  • 「受診予定がない」人の約3割は「健康状態に不安はないので、必要性を感じていないから」

2020年10月末時点で「健康診断」の未受診者を対象に、受診しない理由を質問。

全体では「コロナの感染リスクがあるから」が最も多かった(26.9%)ものの、受診予定時期によって、回答割合に差がみられたという。

今年度は受診せず来年度に受診を予定している人の4割以上(43.1%)がコロナの感染リスクを理由にしており、「受診予定はない」と回答した人は、「健康状態に不安はないので、必要性を感じない」(29.6%)が最も多くなっているとのことだ。

次に、10月時点で受けていない人が最も多かった「胃がん検診」を例に、がん検診を受診しない理由をみてみると、20.1%の人が「からだの変調を感じないから」を選択。

特に、「受診予定はない」とした人での回答率が最も高く(27.7%)、「健康状態に不安はないので、必要性を感じていないから」においても4人に1人(25.8%)となっている。

「今年度受診年だが、来年度に回す予定」の人の36.8%が、「コロナの感染リスクがあるから」を選択。なお、胃がん以外のがん検診においても、受診していない理由は胃がんと同様の傾向となっているとのことだ。

健康診断とがん検診を受診した理由

  • コロナ禍でも「健康診断」「がん検診」を受診する理由は、「これまでも定期的に受けているから」「受けると安心できるから」など
  • 「がん検診」を受けた理由として、約2~3割が「発見が遅れ手遅れになりたくないから」と回答

「健康診断」を今年度に受診した、もしくは今年度中に受診予定と回答した人を対象に、受診理由を聞くと、半数以上(54.9%)が「これまでも定期的に受けているから(検査を休みたくない)」と回答。

次いで、「健診を受けると安心できるから」(31.1%)、「感染対策が講じられており、コロナに感染するリスクは低いと思うから」(21.4%)となっている。

各種「がん検診」の受診理由においても同様の傾向がみられ、「これまでも定期的に受けているから(検査を休みたくない)」が、すべての「がん検診」において最多となり、2人に1人以上が回答。

また、「発見が遅れ、手遅れになりたくないから」も約2~3割が回答している。

知りたい医療情報

  • 「健康診断」「がん検診」を来年度受診する予定の人が知りたい情報は、コロナ禍での具体的な受診や治療、感染リスク予防対策に関する情報

世界的にコロナの収束が見えないなかで、今後、どのような医療情報を得たいと考えているかについて尋ねたところ、「コロナに関する正しい基本情報」(39.7%)、「コロナの感染予防に有効な方法」(32.9%)が3割を超えた結果に。

がんをはじめとする三大疾病の発見の遅れに関する情報を知りたい人の割合は、コロナ関連の情報を知りたい人より少ない傾向がみられたとのことだ。

また、来年度に「健康診断」やいずれかの「がん検診」の受診を予定している人に関しては、特に「どの病院を受診したらよいのかわからないので、おすすめの病院・専門医の情報」や、「コロナの感染リスクがあるなか、受診・治療すべきかどうか判断できる情報」、「コロナの感染リスクを軽減するために健診・検診時に留意すること」において、平均を5ポイント前後上回る結果となったとしている。

がん検診への理解

  • 「がん検診」の推奨対象年齢や頻度に関する認知割合は2割以下にとどまるなど、がん検診の制度や科学的根拠に関連する情報の認知度が総じて低い
  • 「がん検診」を受診した人は、制度や科学的根拠に関連する情報の認知度が高め

国が公共的な予防策としている「がん検診」は、「対策型がん検診」と呼ばれ、科学的根拠に基づき一定年齢以上の人に定期的な受診が推奨されている。

「対策型がん検診」については費用補助など、受診をしやすくするための制度も設けられており、がん検診の制度や科学的根拠に関連する事柄について認知状況を確認したところ、調査対象者全体では、「この中に知っているものはない」を除き、すべての項目で4割を下回る結果となった。

特に、各「がん検診」の推奨年齢や頻度に関する認知割合は2割以下と低く、受け身な状態の人が多いことが推察される。

一方、今年度なんらかの「がん検診」を受診した人(予定を含む)の結果をみると、がん検診の制度や科学的根拠に関連する事柄について、すべての認知割合が全体の数値を上回り、特に制度面での理解が進んでいることが明らかになった。

コロナ禍での疾患リスクと不安

  • 体調不良や異常を感じながら、医療機関の受診を控えた人が約4割
  • コロナ感染リスクだけでなく、「まだ病院に行かなくても大丈夫だと思ったから」や「症状がおさまったから」などを理由に受診を控える人も
  • 病気やがんが早期発見されないリスクを不安に感じる人は約6割

最後に、緊急事態宣言が出された4月以降から調査実施までの期間において、医療機関の受診を考えた時の行動についてたずねると、期間中、体調不良や体調異常を感じても、約4割(36.1%)の人が、受診を一時期控える、あるいは現在も延期していることがわかった。

これは特に若い世代に顕著であったという(20代:40.7%:30代:48.2%、40代:41.6%)。

脳梗塞や脳出血など重大な脳血管障害が疑われる症状の一つである「手足のしびれやもつれ、激しい頭痛、舌のもつれ」、心疾患が疑われる症状の一つである「動悸、息切れや脈の乱れ」に関しても、症状を感じた人は少ないものの、約2割の人が医療機関の受診を控える行動をとっていたとのことだ。

体調不良や体調異常、脳血管障害や心疾患が疑われる症状を自覚しながら、医療機関の受診を控えた人にその理由をたずねると、いずれの項目においても、「延期・一時期控えた時の自身の体調や症状よりも、コロナの感染リスクの不安が大きかったから」が最多(48.6%)。

30代では54.7%、40代では54.0%と特に高くなっていたとのことだ。

次いで「コロナの感染リスクを絶対に回避したいから」が43.9%。一方で、「まだ病院に行かなくても大丈夫だと思ったから」や「症状がおさまったから」受診しなかったという人も1~2割みられたとのことだ。

また、調査対象者全員に、コロナの感染拡大の影響による疾患リスクへの不安について聞いてみたところ、「健康診断や人間ドックを見送ることで、病気の発見が遅れること」や「がん検診を受けないで早期発見が遅れること」を「不安である」とした人の割合は約6割にとどまったという。

調査概要

調査方法インターネット調査
調査期間2020年10月23日~2020年10月26日
調査対象調査会社登録モニターのうち、全国の20代~70代の男女を対象に実施
有効回答数15,000人(男性:7,404人、女性:7,596人)
※エリア別性年代別人口構成比での割り付け
※がん検診に関する回答対象者は検診対象に準ずる(胃がん・肺がん・大腸がん:40歳以上の男女)(子宮頸がん:20歳以上の女性)(乳がん:40歳以上の女性)
※構成比(%)は小数第2位以下を四捨五入。合計が100%にならない場合がある。