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リクルートキャリアは、全国の企業の人事担当者1,224名に、「ジョブ型雇用」に関するアンケートを実施したと発表した。
同結果では「ジョブ型雇用」の認知率や具体的な中身についての認識、制度の導入状況、具体的に検討している人事施策などを紹介。調査期間は2020年9月26日~30日。
結果は以下。
1. ジョブ型雇用の認知率
・「ジョブ型雇用」という言葉を「知っている(54.2%)」「知らなかった(45.8%)」。
・従業員規模が大きいほど認知率や議論促進が高い傾向。
「ジョブ型雇用」という言葉を知っている割合は半数を超える程度。従業員規模が大きいほど認知率は高く、従業員が「5,000人以上」の企業の場合は62.8%という結果であった。
「ジョブ型雇用」の具体的な内容について確認したところ、「仕事の内容の定義(Job Description作成)と適材適所の推進(31.4%)」「求められる組織ミッションや職責のレベルに応じてグレードを定め、その職務により人材をグレードで管理する(29.8%)」「総合職ではなく、職種ごとに採用する(27.7%)」が代表的な内容。
また、「詳細は分からない(38.5%)」の選択率が最も高い結果となり、これは全体の45.8%が「ジョブ型雇用」という言葉を知らなかったという状況が影響していると考えられるとのことだ。
新型コロナウイルス感染症の影響によって、「ジョブ型雇用」の議論が促進されたかどうかを確認。
議論が進んだ(「かなり進んだ」「ある程度進んだ」の合計)という回答群は、全体では24.8%。
従業員が5,000人以上の企業の場合は36.4%と全体平均よりも高く、「ジョブ型雇用」の認知率の状況と同様に、規模が大きいほど議論促進の割合が高い傾向となった。
2. ジョブ型雇用の導入状況
・ジョブ型雇用の導入は12.3%。従業員規模が大きいほど導入率が高い。
・導入企業の約7割は一年半以内にジョブ型雇用を導入。
「ジョブ型雇用」の導入状況は全体で12.3%。従業員規模別に見ると、従業員が「5,000人以上」が19.8%と全体に比べて7.5pt高い状況。
一方で、「1,000人~4,999人」「300人~999人」「300人未満」での導入状況は全て全体平均より低く、従業員規模が小さいほど低い傾向であるとのことだ。
導入企業と以前導入していた企業に絞り、「ジョブ型雇用」導入の時期について見ると、「2020年6月以降」(22.0%)、「2019年4月~2020年5月以前」(47.0%)という結果に。
調査実施時点(9月)で約7割が1年半以内に「ジョブ型雇用」を導入していることから、比較的最近になってから制度変更を実行している状況が見て取れるという。
3. ジョブ型雇用を導入済・導入経験有企業と導入検討企業の比較
・ジョブ型雇用で取り入れている内容や検討内容は、「仕事内容の定義(Job Description作成)」「組織ミッションや職責レベルに応じたグレード設定」「職種ごと採用」が代表的。
「ジョブ型雇用」の「導入済企業と導入経験有企業(n=164)」と「導入検討企業(n=288)」について「ジョブ型雇用」で取り入れている(検討している)内容や理由・職種を確認。
導入済・導入経験有企業が「ジョブ型雇用」で取り入れている内容は、「仕事の内容の定義(Job Description作成)と適材適所の推進」「求められる組織ミッションや職責のレベルに応じてグレードを定め、その職務により人材をグレードで管理する」がともに64.0%で、「総合職ではなく、職種ごとに採用する」(47.6%)が続いた。
また、選択率は異なるが、導入検討企業でも同様の傾向が確認され、ほぼ全ての内容で導入済・導入経験有企業の選択率が高く、最も選択率の差が大きかったのは「異動は社内公募中心で行う」の13.9ptという結果に。
導入済・導入経験有企業が「ジョブ型雇用」を取り入れている理由としては、「特定領域の人材(デジタル人材など)を雇用するため職種別報酬の導入が必要になったため」(54.3%)、「労働時間削減のため(業務効率化)」(51.2%)、「新型コロナウイルスの影響により、テレワークなどに対応し業務内容の明確化が必要になったため」(46.3%)が代表的。
一方で、導入検討企業の場合は、「専門職としてキャリアを積みたい人材を採用するため」(49.3%)、「特定領域の人材(デジタル人材など)を雇用するため職種別報酬の導入が必要になったため」(46.5%)、「労働時間削減のため(業務効率化)」(41.0%)という結果に。
「専門職としてキャリアを積みたい人材を採用するため」(49.3%)と「特定の専門性を持つ新卒学生を採用するため(AI研究実績や、資格取得者など)」(36.5%)という採用に関する理由は、導入検討企業の方が高い選択率となった。
4. メンバーシップ型雇用のメリットと課題
・「柔軟な配置」や「本人の特性にあわせた育成」がメリット。
・一方で、「育成に時間がかかる」「専門性がつきにくい」という課題感がある。
今回のアンケート調査では、回答者全員に「メンバーシップ型雇用」のメリットと課題について確認。
「メンバーシップ型雇用」のメリットでは、「職種を限定しないため、柔軟に配置ができる」(45.0%)、「ジョブローテーションが可能で、本人の特性にあわせて育成できる」(39.0%)、「勤務地を限定しないため、柔軟に配置ができる」(35.4%)の選択率が高い結果となった。
一方、「メンバーシップ型雇用」で課題に感じている内容は、選択率が高い順に「育成に時間がかかる」(35.5%)、「専門性がつきにくい」(33.6%)、「勤務地を変えてもらうときに退職リスクがある」(31.2%)という結果に。
【参考データ】
解説
新型コロナウイルス禍を契機に、「ジョブ型雇用」の報道が過熱している。
名だたる大手企業の相次ぐ導入や、テレワークで顕在化した人材管理の課題なども手伝って、「ジョブ型雇用が不可避」といった言説が広がりつつあり、中には「全ての企業が、日本型の『メンバーシップ型雇用』を捨て去り、いち早く『ジョブ型雇用』に転換すべき」という乱暴なものも。
ある種、「ジョブ型雇用」の狂騒曲が鳴り響いている事態となっているという。
今回、全国の企業の人事担当者1,224人に聞いた、「ジョブ型雇用」の現在地、その回答結果の深部からは、「ジョブ型かメンバーシップ型か」、といった二元論にとらわれず、事業の必然性と課題に向き合い始めた企業人事の立ち姿が見えてきたとしている。
まずは、量的な実態。「ジョブ型雇用」の認知率は54.2%、導入率は12.3%。従業員規模が大きいほど割合は高まるが、過熱する報道ほどには、「ジョブ型雇用」は、企業には浸透していないことが見て取れる。
次に、質的な実態。導入内容の上位3つは、「仕事内容の定義と適材適所の推進」「組織ミッションや職務グレード管理」「職種別採用」。
導入理由の上位3つは、「特定領域の人材(デジタル人材など)採用のため職種別報酬の導入」、「労働時間削減 (業務効率化)」、「テレワーク対応で業務内容の明確化」。
これらを見ただけでも、職務・役割の明確性、配置転換・異動の最適化、専門人材の採用力の向上、報酬制度の改定、業務生産性の向上など、さまざまな人事施策や制度変更の狙いが見て取れる。
また、いずれも、各社各様の事業戦略に即した人事課題に向き合った結果なので、今後も、一口に「ジョブ型雇用」では括れないほど、各社各様の多様な「〇〇型雇用」の導入が進んでいくと思われるとのことだ。
「メンバーシップ型雇用」のメリットと課題について聞いた回答上位は、メリットでは、「職種を限定しないため、柔軟に配置ができる」、「ジョブローテーションが可能で、本人の特性にあわせて育成できる」「勤務地を限定しないため、柔軟に配置ができる」となり、一方課題では、「育成に時間がかかる」「専門性がつきにくい」が上位に。
これは、企業が個人から働き方やキャリア形成の選択権を奪いつつ、専門性の課題を嘆く自縄自縛の構造に見えるという。
企業寿命と職業寿命の逆転で、今や、働き方を選ぶ主権は、個人に移行している。もし働く本人の納得感がないまま、企業が個人のキャリア形成機会を奪うなら、本来の字義が持つ本人の職業人生に寄り添う「メンバーシップ型雇用」は、画餅に帰すとのことだ。
一方、「ジョブ型雇用」の導入には、職務の言語化や更新、人材評価にかかる負担が増える。
例えばエンジニアのような、特定領域の人材に最適な人事制度を導入したいといった明確な経営戦略があり、時間をかけてでも雇用制度を改革するという強い意思があって初めて、「ジョブ型雇用」に踏み切ることができる。
「ジョブ型雇用」の効用と限界を良く知り、自社の戦略と人事体制に適合した上での判断も重要であるとしている。
いずれにしても、新型コロナウイルス禍で始まった「ジョブ型雇用」狂騒曲も、実態は、企業の事業戦略に即した切実な人事施策の試行錯誤の中で、本質的な深化の時を迎えている。
今回、コロナ禍で高まる「ジョブ型雇用」の議論は、改めて、自社の経営戦略の観点から、必然となる雇用制度、人材マネジメントの在り方を再定義する好機となるとのことだ。
【調査概要】
実施期間:2020年9月26日~2020年9月30日
調査対象:企業に勤める正社員かつ職種が人事である人
回答者数:1,224 人
調査方式:インターネット調査
【参考】
リクルートキャリア
『「ジョブ型雇用」に関する人事担当者対象調査2020 「ジョブ型雇用」の認知率は54.2% 新型コロナウイルス禍で議論が進んだ企業は24.8% 多様な人事戦略への深化は始まったばかり』