日本電気(以下、NEC)と産業技術総合研究所(以下、産総研)は、AIシミュレーション融合技術を用いて、生産ラインの事前評価と運用の効率化を行う実証実験を、日産自動車と共同で実施し、生産ライン構築・計画変更を10倍以上高速、かつ予測誤差1/6以下の高精度化を実証したことを発表した。
AIシミュレーション融合技術は、NEC-産総研人工知能連携研究室が開発、精緻なシミュレーションを短時間で自動構築し、少ないデータから最適な意思決定を支援する。
近年、製造事業者では、新規生産ラインの稼働前や、既存生産ラインでの計画変更前に、生産ラインシミュレーションなどを用いて、事前評価・分析を行っている。
従来は、生産ラインの各工程での平均所用時間、人員・ロボットなどの配置をパラメーターとして設定し、シミュレーションを繰り返すという作業を人間が行ってた。
しかし、個別の顧客ニーズに合う商品を効率的に生産するマスカスタマイゼーションによる多品種混流生産ラインでは生産ラインが複雑化しパラメーターのパターンが膨大となり、評価時間の増大やシミュレーション精度に課題があるという。
これまでシミュレーターに投入するパラメーター設定などに人手で約1カ月かかってたが、今回の実証実験では、約1日で達成できたという。また、シミュレーションでの生産効率の予測誤差が、約20%から約3%に改善したとのことだ。
また、今回の実証実験では、最終工程のスループット約1カ月分のデータという少ないデータで生産ライン計画の作成や高精度な予測を実現。
従来のAI技術の典型的な活用方法であった、ビックデータ分析による意思決定支援とは異なり、同AI技術はシミュレーションデータを自動で生成し、実データを補完することにより、少ないデータからでも最適な意思決定が可能になるとのことだ。
なお、同技術は、自動車メーカーに加え、重工業・化学・半導体・精密機器などの製造事業者一般、さらに、物流事業者などに広く適用できるとしている。