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近年、5G(第5世代移動通信システム)が一般化されることにより、さまざまなメディアでその可能性について議論が行われている。
また同時に、5Gの特徴である高速・大容量、低遅延、多数接続という特性を生かし、これまで実現できなかった技術やサービスの誕生が期待される。
今年に入ってからドコモをはじめとしたさまざまな企業が5Gサービスへの参入・提供を開始している。
そのようななか、株式会社NTTドコモと株式会社NTTドコモ・ベンチャーズは、社会課題に対する5Gを活用した新たなソリューションの創出を目的として、「docomo 5G DX AWARDS 2020」を2020年9月15日に開催した。
本記事では、最終選考に選ばれた企業のプレゼンテーションの様子をレポートすると共に、最優秀企業であるAMATELUS株式会社 代表の下城氏へのインタビューを紹介。
ドコモと共に描く5Gの未来の姿はどのようなものなのか。その可能性をお届けする。
5G時代の新たな可能性を発掘する「docomo 5G DX AWARDS 2020」
ドコモは、2018年2月に開始した「ドコモ5Gオープンパートナープログラム™」※のパートナー数が3,400社を超え、同プログラムでの協創を通じ300を超える事例を創出した。
そうした背景の下、本イベントは、大企業だけでなく中小企業やベンチャー企業まで、幅広い企業が保有する特徴的な技術、プロダクト、サービスの発掘を推進し、5Gでの新たなソリューション創出に向けた取り組みをさらに加速させるために開催された。
※幅広いパートナーへ5Gの情報提供、常設の5G技術検証環境を提供することにより、新しい5Gの利用シーン創出をめざすためのプログラム。
今回の開催はドコモとしても初の取り組みとなり、8月からの選考期間を経て、最終選考に残った10社が5G技術の活用をテーマとしたソリューションの最終プレゼンテーションを行った。
プレゼンテーションの内容は、各社が持つノウハウやアセットを組み合わせ、5G技術とのシナジーがいかに生まれるかという点が注目される。
なお、今回の審査基準は以下の7項目を基準として、審査が行われた。(1次選考時も同様)
- 5Gとの親和性・活用性
- テーマへの適合性およびその優位性
- 市場における課題の現状およびニーズの規模
- 新規性
- 実現性
- 収益性・拡張性
- 提供体制
また、今回の最終選考で入賞した企業には、賞金※が授与されるとともに、ドコモとの早期サービス化検討や、共同プロモーションとして、「docomo 5G DX AWARDS 2020」最優秀アセットとしての展示や、ドコモ5Gオープンパートナープログラムにおける積極的な情報発信など、最優秀アセットのプロモーションが実施される。
※最優秀賞 1社:賞金100万円、優秀賞 1社:賞金30万円、準優秀賞 2社:賞金10万円
当日、開会の挨拶は、株式会社NTTドコモ 執行役員 5G・IoTビジネス部長 坪谷 寿一氏の、本イベントにかける思いから始まった。
坪谷氏「NTTドコモは、2020年3月に5Gサービスを開始しました。開始してから2年ほど経つドコモ5Gオープンパートナープログラムには現在、3,400社を上回る企業様に集まっていただき、5Gの新しいソリューションの開発に尽力をいただいています。2021年度には5,000社にまでその数を伸ばしていきたいと思っています。
本イベントは、NTTドコモとNTTドコモ・ベンチャーズの共催イベントです。応募総数86社の中から厳選した10社を今回、ファイナリストとして選ばせていただきました。このアワードの入賞者には私たちドコモとのパートナーシップのもと、サービスリリースのために全力でサポートさせていただくつもりです。
今年は5G元年。このアワードが来年、再来年と続いていけるように、皆さまと一緒に未来の5Gビジネスを創っていければと思っております」
なお、今回は審査員として坪谷氏の他に、NTTドコモ 法人ビジネス戦略部長 本昌子氏、NTTドコモ・ベンチャーズ 代表取締役社長 稲川尚之氏、早稲田大学大学院 経営管理研究科 客員教授 鶴谷武親氏が選出された。
5Gの可能性を広げるさまざまなソリューションが登場
ここからは、実際に発表された各企業のプレゼンテーションを紹介していく。
なお、今回発表された各社のテーマは「産業の高度化」「働き方改革」「街づくり」「教育」「ヘルスケア」の5つのカテゴリに分類される。
1.太陽企画株式会社|フォトグラメトリを活用した映像ソリューション
まずは太陽企画株式会社 大西氏によるプレゼンから開始された。
被写体を複数のアングルから撮影した静止画から、高精細な3Dオブジェクトを作成する、「フォトグラメトリ」と呼ばれる技術でのソリューションを発表。
世界文化遺産「端島炭鉱」、国の重要文化財「旧奈良監獄」、日本遺産「神子畑選鉱場跡」をフォトグラメトリ化し、会場にアピールした。観光地のほか、産業(無観客LIVE、オンラインゲーム、商業施設ライブコマース、展示会イベント、地方創生)の大幅な効率化や最適化、再現可能領域の最大化が可能になるという。
もともとはテレビCMなど映像分野を手がけてきた同社。映像の可能性を5Gで追求するかたちとなった。
また、本ソリューションでは、5Gを掛け合わせることで、高精細なモデルを「リアルタイムで」かつ「多人数で利用」することが可能になるという。現地や自宅から現実世界では入れないような場所にまで、ヴァーチャルツアーが体験できるようになる。
2.株式会社トヨコー|錆取りレーザー装置、ならびに多数同時遠隔管理
「CoolLaser(クーレーザー)」というレーザーによってインフラの錆や劣化塗膜を除去する装置を開発しているトヨコー。その技術で特許も取得している。現場のレーザー装置を丸ごとIoT化し、5G通信網による遠隔制御・サポートにより、世界中誰でも扱えるレーザー装置をめざす。
現在、50年以上経過したインフラ構造物でのメンテナンスは、粉塵や汚水、劇物の中、過酷な作業を強いられる。こうした現場の担い手は高齢化し、減少の一途にある一方、老朽化する橋などは増えてきており、このような社会問題を「CoolLaser」で解決する。
また、5G技術を活用することで、誰でも屋外でレーザー施工ができるプラットフォーム「ICSP(Intelligent CoolLaser System Platform)」の開発が可能になるという。
CoolLaser装置をIoT化し、安全や施工の管理等、レーザー工事に必要なすべての機能を、世界中のレーザー工事現場への提供を想定。
実現すれば、専門的な知識を持たなくても、誰でもレーザーを扱うことが可能になる。(錆取りレーザーの会社は現在複数存在しているが、屋外でのレーザーは取り扱いが難しく一社も成功していない状況。)
3.プレティア・テクノロジーズ株式会社|空間認識技術を活用したARソフトウェア開発プラットフォーム
現実のさまざまな場所でつながり体験を生む技術「ARクラウド」。
大量の画像データを元に、現実世界の永続的な3Dコピーをつくり、それを基に複数デバイスの三次元位置+向きを瞬時に特定。特定した位置を含む、各ユーザーの状態を継続的に追跡することで、リアルタイムの共有体験を実現できる。
主な活用シーンは、エンターテインメントの分野では、多人数協力ロールプレイや卓上対戦ゲーム、ARアイドル路上ライブなどがある。
このARクラウドは、「同時多人数接続」と相性が非常に良い。また、屋外の多人数体験では5G技術を使うことで強力な用例ができると考えている。
OMO的な観点でいけば、ユーザーの向いている方向や行動などの詳細なデータをトラッキング可能なので、そうした膨大なデータのやりとりにおいても、5Gとの親和性が見えてくる。
またエンタメ分野以外でも、例えば製造であればARによる遠隔サポートが可能になる。研修などで工場や現場に赴くサービスを検討中。その他、小売においてもショッピングモールの中でARナビゲーション、周囲をスキャンするだけで位置特定が可能になるという。
4.Mira Robotics株式会社|ビルメンテナンス向けアバターロボット「ugo」
Mira Robotics社が発表した「ugo(ユーゴー)」は、遠隔操作モードとAI自動モードのハイブリッド制御を採用した次世代型アバターロボット。
同社は、オフィスビルや商業施設におけるビルメンテナンス業務を、人とロボットが分業する新しいワークスタイルの提案を行なっている。
取り組みの背景は日本の労働人口減少。今後20年で1,400万人減る見込みだという。その中でも深刻なのがサービス業で、警備、清掃業の83%の人手不足が予想されており、こうした状況をロボットでの解決をめざしている。
同ロボットは、2本のアームでエレベーターのボタン操作や清掃、除菌、施錠の確認、カメラでの撮影記録といった作業が可能。大成株式会社との実証実験では、巡回警備や立哨警備における人の配置を大幅に抑え、警備員の負荷や感染リスク減へと繋がった。
また、5Gを活用することで、複数台のロボットを管理可能なプラットフォームを構築することができ、その結果、ビル内の環境データの収集が可能になる。その蓄積されたデータを活用し、ビル管理を効率化することができるとのことだ。
5.BPM株式会社|建物メンテナンスにおける3Dモデル化・業務管理クラウドサービス
内装工事の工務店として約10年間で1万件以上の工事を行ってきたBPM社。ソフトウェア開発も長年行ってきた同社が開発した「QOSMOS XR(コスモス エックスアール)」は、建物メンテナンスに特化したソリューション。
現在、建物メンテナンスの現場では労働者不足の課題が深刻。少ない人数で多くの建物管理をするためには、DXによる生産性向上の期待が大きい。
「QOSMOS XR」を使うことで建物を3Dモデル化し、オペレーション側は、リアルタイムで現地の作業員に適切な指示を出すことができるようになる。オペレーターと現場が一緒に問題解決をしていくイメージだ。
5Gを活用することで、データ容量が大きい写真付き3Dモデルの現場・クラウド間でのデータ転送時間を大幅に削減することができる。
6.株式会社ジオクリエイツ|VRおよび視線・脳波解析による街づくり分析サービス
ジオクリエイツが提供するソリューションは、「ToPolog(トポログ)」。
「ToPolog」はVR視聴中の視線や脳波を分析することができるサービス。空間体験価値を定量化することで、「本当に良い空間」を実現。設計事務所や事業主などに提供予定。
これまで建築事務所は勘と経験則によって建物を設計してきたが、VR、視線、脳波等でそれらを定量化し、商業施設やオフィス、住宅で良い空間をつくることをめざす。
ここに5Gを活用することで、高解像度なVRの視線脳波解析で文字や空間の可読性を高め、高精度なAIをつくることを目的とする。
ドコモとの「協創」のチャンスを得た4つのソリューション
数多くの企業が1次選考から参加し、さまざまな企業がファイナルピッチでも熱いプレゼンテーションを繰り広げた。そして、結果として以下の4社がアワードを受賞することになった。
●最優秀賞:AMATELUS株式会社 自由視点映像の特許技術「SwipeVideo」
●優秀賞:Holoeyes株式会社 「Holoeyes MD」
●準優秀賞:Kudan株式会社 「高度な自己位置推定と地図作成を可能とするKudan/ArtisenseによるSLAMソフトウェア」
●準優秀賞:株式会社スマートロボティクス 「テレワークロボット™」
まずは、準優秀賞を獲得した2社から紹介する。
【準優秀賞】Kudan株式会社|高度な自己位置推定と地図作成を可能とするSLAMソフトウェア
自動運転やロボティクスの領域において、昨今、大きな注目を集めている「SLAM(Simultaneous Localization And Mapping)」とは、移動体の「自己位置推定」と「環境地図作成」を同時に行う技術の総称。
このSLAM技術を使うことで、移動体が未知の環境下であっても、その空間の地図を作成して自己位置を正確に把握し、自律的な移動ができるようになる。
地図情報を持たないロボットは、まさに眼を持たない機械。Kudan社は、独自に磨き上げたSLAMソフトウェアを提供することで、さまざまなデバイスに機械の眼として、空間認識機能を与える。
ロボティクス領域の市場は2019年時点では2兆円。それが今後2.3倍になって2025年には4兆6,000億円にもなる巨大市場。特に自動ロボティクス市場においては、「SLAM」なしではビジネスは考えられない、というところまできている。
そのようななか、Kudan社は、自動運転研究の世界的権威が率いるドイツのArtisense社買収を発表し、SLAM専門企業としての確固たるポジションを確立した。
Kudan社の「SLAM 」は、比較的調達しやすいデバイスでも高精度なパフォーマンスを発揮するように磨き込まれている、まさに社会実装のためのSLAM。一方で、Artisense社は最先端研究の中で、緻密かつ安定的に画像認識をする「ダイレクトSLAM」と、深層学習により環境変化を克服する「GN-net」を有する。
「世界最先端研究」と「ビジネス実装」とが高度に融合・連携することにより、アカデミックに留まらない汎用アルゴリズム が、次々と生まれ続ける。それが、Kudan社の強みとなっている。
また、「SLAM」は5Gと非常に相性が良い。「SLAM」によって作成されるマップデータは非常に重いデータとなるため、5G技術を活用することでマップのアップロード・ダウンロードにおける遅延が飛躍的に解消されていくと考えられ、今後、より広いエリアでのロボットの自律移動を社会実装していくためには5GとSLAMの連携は必須と言える。
なお、受賞後、中村氏は「アフターコロナ、withコロナの時代にロボティクスの時代が加速度的に進んでいくと思います。そうした流れをソフトウェアで支えていきたい」と、今後の業界貢献に向けた意気込みとドコモとの協業に期待を寄せた。
【準優秀賞】株式会社スマートロボティクス|「テレワークロボット™」
「テレワークロボット™」はカスタマイズ可能で、移動遠隔操作が可能なロボット。
スマートロボティクスはこれまで、ロボット関節の可動部や心臓部のモジュールなどの開発、製造元として販売を行い、ロボットの設計・製造技術を磨いてきた。
そのような状況の中で新型コロナウイルスの感染拡大が進み、感染リスクが高いにも関わらずどうしても現場に行かないと作業が出来ない人が出てきた。そうした人であってもテレワークができれば良いのに、という思いがあり、「テレワークロボット™」の着想を得た。
この遠隔操作可能なロボットは、PCやスマートフォンのブラウザ経由から、ゲームをプレイするような感覚で機体を操作することが可能。これまでの産業用ロボットは、専門家がセッティングをする必要があったが、「テレワークロボット™」の場合は、納品したその場ですぐに使ってもらうことが可能になる。また、荷台部分のカスタマイズをすることで、利用シーンが広がるという。
「テレワークロボット™」をカスタマイズして開発した「殺菌ロボット」は、神奈川県の新型コロナウイルス感染症の軽症者等の宿泊療養施設で実証実験を行っており、安全な場所から操作可能な点などを評価され、非対面ニーズが高い医療現場導入の話も進んでいる。
5Gを活用することで、高解像度化、低遅延を実現することができ、その場にいるような状況で操作をすることが可能となる。例えば、ロボットアームを設置してその場でものを掴むということも簡単になり、動作の快適性が飛躍的に向上する。さらに学習データを蓄積することで、自動で動作するようになってくる。
このようにロボット普及の鍵と言われている、ハードウェアの高速通信において5G技術との連携は欠かせないという。
服部氏は受賞後に「今までさまざまな分野のロボットをカスタムで製造してきましたが、ようやく5Gを活用できる世の中にダイレクトに加わっていけるということで、これからは現場で活躍できるようなロボットをつくって広げていきたいです」と5Gで働き方の概念を変えることに意気込んでいた。
【優秀賞】Holoeyes株式会社 | 「Holoeyes MD」
「Holoeyes MD(ホロアイズ エムディー) 」は、医療XR(VR/MR)サービスで、患者のCTスキャンデータやMRIデータから3次元のVirtual Reality(VR)やMixed Reality(MR)のアプリケーションを生成し、医療コミュニケーションを革新するクラウドサービス。
先日、谷口氏が鼠径部ヘルニアに罹り手術を受けた際に、担当の麻酔医がHoloeyes社のサービスを実際に使用した。CTスキャンから自身の脊椎データをホログラム化し、そのデータを見ながら麻酔科医が背中に針を刺した。その結果、術後の麻酔科医からは、「自分史上最速で背骨に針が刺せました」とのことだった。
医療だけでなく、教育の事例もある。国立看護大学での実験では、スマートフォンアプリを使って基礎解剖を学んだ。それまでは通常の紙の教科書で、印刷された2Dのイラストと文章から3次元構造を想像していたため、学習が非効率だった。しかし、「Holoeyes MD」を活用することで、立体的に教材の内容を理解でき学ぶことができた。
またHoloeyes社はグローバルな展開をめざしており、先日オレンジファブという5G活用ビジネスコンテストで2位を獲得。シンガポールのキャリア企業とも連携の話が進んでいるとのこと。日本でもドコモとの協業をアピールした。
さらに、5G技術を活用することで、3Dモデルの通信はもちろん、VR空間でのカンファレンスの同時開催やトレーニング、教育といったさまざまな可能性が期待できるという。
「弊社のサービスはまだスタートラインにあり、前途多難なところはありますが、ドコモさんと協業というかたちで広げていきたいと思っています。そして、医療のなかのデジタルツインを作っていく、という世界をめざして頑張っていきたいと思います」と谷口氏はこれからの医療現場への希望を語った。
【最優秀賞】AMATELUS株式会社|自由視点映像の特許技術「SwipeVideo」
「SwipeVideo(スワイプビデオ)」は画面をスワイプすると視点を自由に切り替えることのできる新型動画。再生中、スロー中、停止中、ズーム中などにスワイプすると視点が切り替わる逆VRのような映像体験。
この映像技術自体は20年以上前から研究されている自由視点映像という映像技術で、映画マトリックスでも話題となった技法。
現在の技術では自由視点映像は、高額な機材で撮影しなければならず、データが非常に重たいので4G環境では配信・視聴が難しいとされている。5G環境になったとしても、配信サーバー1台につき視聴できるタブレットは1台に限定されるなど、まだ進化の発展段階。
しかし、そのような課題を全て解決したのが「SwipeVideo」。同サービスは4G環境であってもカメラ台数を無制限にしても軽量に配信できる特許技術を持っている。視聴アプリも必要なく、Webで視聴できる点が大きな特徴だ。
なぜできるのかと言えば、スワイプに応じてカメラ一台分の映像だけをクラウドから軽量に配信する配信システムを開発しており、その配信システムは、昨年、国際特許を取得済みとなっている。
昨年正式にローンチした「SwipeVideo」だが、すでに技術教育分野では成果を上げており、導入済みの仙台育英学園では来年以降も5G連携も予定している。
その他、国内最大級のスポーツトレーナー専門学校の三幸学園では専用スタジオが開設されており、桐蔭学園でもオンライン学園祭を開催予定だ。
自由視点という強みを生かし、それまで非効率だったインプット効率アップ・習熟度の向上などで課題解決しており、今年の文科省の委託事業にも採択され、数値化検証を開始している。
5Gをかけ合わせることで、スポーツはもちろん、エンタメの世界でも5G環境とスマホデバイス×「SwipeVideo」でリッチな自由視点映像を超高画質で視聴が可能になる。
AMATELUSが期待する5Gの未来、「SwipeVideo」が実現する新たな映像体験
今回、最優秀賞を獲得したAMATELUS株式会社代表の下城氏に、イベント直後にアワード受賞の感想や、今後に向けた思いを伺ってみた。
── 最優秀賞を取られた瞬間のお気持ちはいかがでしたか?
下城氏:ピッチの練習不足を自覚していたのであまり自信はなかったのですが、ドコモさんに自分の情熱的な部分も評価していただいて、本当に嬉しかったです。緊張はしていましたが、話したいことは絶対に伝える、というのを優先しました。
── 今回の「docomo 5G DX AWARDS 2020」に応募したきっかけは何だったのでしょうか?
下城氏:2つ理由がありまして、まず大きな理由としては、ドコモさんとの協業案件でスワイプビデオを仙台育英学園さんに使っていただく機会がありました。そこで気に入っていただけたというのがあります。
その感触で5Gの未来にむけて教育業界のスワイプビデオが必要とされているのかな、と感じたのが1つ目の理由です。
また、元々弊社が4G環境で提供できるソリューションを持つ企業なのですが、その特許性を生かして5Gで数歩先にいけるソリューションを作りたかったんです。
なので、その数歩先の未来に行くためにもこのアワードに応募させていただき、受賞できればソリューション化に近づけると思ったのが2つ目の理由です。
── ドコモのような企業が、ベンチャーの支援を行うことについて、どのように思われますか?
下城氏:十数年前と比較して、大手企業さんのオープンイノベーションというものが、より具体化されてきているなという印象があります。
自分が初めて起業したのは2005年だったのですが、当時はオープンイノベーションという言葉もなく、ベンチャーは何とか自力でやっていく時代でした。いまドコモさんとご一緒させていただいて、とても良い時代になったなと感じます。これに乗らない手はない、という思いで事業を展開しています。
── 「SwipeVideo」に5G技術が加わることで、どのようなインパクトがあるとお考えでしょうか?
下城氏:ちょうど8月にも実証させていただいたところなのですが、ドコモさんの5Gスマホ20台で、「SwipeVideo」の生配信を5Gラボで行いました。その結果、4Gで実施した際と比較しかなり安定していて、よりリッチな映像体験をユーザーに直で提供できる実感を得られました。
一方で4Gですと生配信時のカメラ台数に限界があるのですが、5Gだとその制限が無くなり、より高画質・快適な映像をダウンロードできるようになることが期待できます。(現状のシステムでアーカイブ配信時の利用カメラ台数は無制限)
── ドコモとどのようなプロジェクトを一緒にやっていきたいと考えられていますか?
下城氏:5Gの技術を使って世界的なスポーツイベントを自由視点映像で配信してみたいですね。弊社の技術力で世界中の人々に感動を届けることができます。これは私たちが持っている特許技術がとても優位性があるところなので、今後のスポーツイベントがどのようなかたちで開催されることになったとしても、多視点や自由視点+5Gといったかたちでの配信は、タイミングとしても良いのではないかと思います。
今回は本当に光栄な賞をいただけたので、ソリューション化を急いでしっかりエンドユーザーが喜んでくれるサービスを提供していきたいです。そして良い結果を残して、次のアワードに参加する企業に向けて、良い道を作っていきたいですね。
時代を捉えた、新しい事業の「協創」をめざして
最後に総括として、NTTドコモ・ベンチャーズの稲川社長よりコメントが参加者に向けられた。
稲川社長「今回参加いただいた企業さま皆、いまの時代をよく捉えていて、データをいかに活用して社会課題を解決するかという点が重要視されていたように思います。
日本に黒船が来た時のように、現在はコロナの外的要因によって、私たちの生活や価値観に変化が生まれています。そうした中でこそ、革命は起こるのではないでしょうか。
ドコモはいま、オンライン化において何をするべきか、というテーマに取り組んでいる最中です。この場にいらっしゃる企業さまと共に時代を捉え、新たな事業をつくっていきたいと思っています」
今回、最終選考を通して、5Gによるさまざまな未来の可能性が垣間見えた。日本における社会課題解決のみならず、エンタメ、スポーツ、医療などさまざまな分野で広く5G技術は今後も活用されていくだろう。
本イベント「docomo 5G DX AWARDS 2020」は今年が初開催。来年は一体、どのようなソリューションを持つ企業が現れるのだろうか。5Gを活用した私たちの明るい未来はさらにより良いものになるだろう。
なお、本イベントの様子はドコモのYouTubeチャンネルから視聴可能となっている。ぜひこちらも併せてご覧いただきたい。
取材・文:花岡 郁