住友商事とbitFlyer Blockchainは、10月1日からスマートコントラクト機能を備えたブロックチェーン「miyabi」を活用した不動産賃貸契約プラットフォーム「スマート契約」のプレ商用サービスを開始したと発表した。
住友商事とbitFlyer Blockchainは、2019年7月に不動産賃貸プラットフォームの開発に関する業務提携を発表し、実証実験などを行ってきた。
プレ商用サービスには以下25社が参加しており、本格商用サービス開始は2021年を予定しているとのことだ。
プレ商用サービス参加企業(2020年10月28日時点。参加予定企業も含む)
運営会社:住友商事、bitFlyer Blockchain
不動産管理会社・不動産仲介会社:ietty、きらめき不動産、シエルトパートナー、住商建物、住商リアルティ・マネジメント、社宅都プロパティ、トーセイ・アセット・アドバイザーズ、ユーミーClass、Life&Style
家賃債務保証会社:エポスカード、オリコフォレントインシュア
損害保険関連:三井住友海上火災保険、保険代理店 住商インシュアランス
生活インフラ関連会社:
【電気】東京電力エナジーパートナー、PinT
【ガス】東京ガス、日本瓦斯
【通信】ジュピターテレコム、ソニーネットワークコミュニケーションズ、他1社
引っ越し会社:アートコーポレーション、アップル
システム開発協力会社:SCSK
「スマート契約」の概要は以下。
1.<借主向け>アプリケーションの提供
物件の申込から不動産賃貸契約をアプリケーション上で行うことで、煩雑な書類手続きや捺印は不要となる。
また、電力やガス、通信などの生活インフラに関する契約、引っ越し会社の手配といった転居手続き全般までをワンストップで行うことができる機能を借主に提供するという。
2.<不動産管理・仲介会社向け>管理機能の提供
不動産賃貸契約の申込状況などのステータスをリアルタイムで把握することができる管理機能を不動産管理会社、不動産仲介会社向けに提供。
また、契約に関わる手続きを電子化することで、ペーパーレス化を促進し、紙での管理コストを大幅に削減できるとしている。
3.<その他参加企業向け>データ連携機能の提供
電力やガスなどの各種契約の申込の際に、不動産賃貸契約時に借主本人が承諾した本人確認済の個人情報が連携できる。契約手続きが簡素化されることで、各種契約手続きが効率化されるためサービスの継続的利用が期待できるという。
また、個人情報管理では、bitFlyer Blockchainが提供する個人主権型ブロックチェーンIDソリューション「bPassport」を利用。
不動産仲介会社が本人確認済であることの保証を与えることで、参加企業のサービス登録時の本人確認手続きや審査が不要になり、個人情報は借主自身で管理・提供できるため、自らが選択した企業にのみ個人情報を提供できるとのことだ。
なお、ブロックチェーンには以下の5大利点があるという。
ブロックチェーンの5大利点
- 改ざん耐性
ハッシュチェーン構造によってデータの書き換えが不可能であること - 高可用性
データが分散保持されており、一部のノードが停止しても動き続けること - ビザンチン障害耐性
悪意のあるノードが存在しても正しくデータが処理できること - 疎結合の容易さ
公開鍵暗号によってシステムの結合が容易であること - エンタープライズ向き
複数の企業間でのデータ共有が容易なこと
「スマート契約」においては、「改ざん耐性」と「エンタープライズ向き」であるという利点が特に活かされているという。
- 「改ざん耐性」について
不動産仲介会社が対面で行った借主の本人確認手続きに伴う情報や不動産賃貸契約に関わる各種契約書がブロックチェーンへ登録されることで、構造的に書き換えが不可能な状態になる。
その結果、契約当事者が不動産賃貸契約に関わる各種契約書を改ざん、捏造することができなくなるため、「スマート契約」を利用する全ての人が安心・安全にサービスを利用できるという。 - 「エンタープライズ向き」について
ブロックチェーンでは、データが欠損することは構造的にないという。
また、複数の企業が同一のデータを参照し、データを書き込むことができ、これまでは各企業が同様のデータを保有し、企業間でデータの正しさの確認を行っていたが、その確認作業が不要になるとのことだ。
今回、「スマート契約」には多くの企業が参加しており、同一データを参照できる点でブロックチェーンの強みを発揮するとしている。
なお、今後、住友商事およびbitFlyer Blockchainは、「スマート契約」を活用することで、不動産の賃貸分野だけではなく、分譲・売買分野への展開を検討しているという。
また、転居を伴わない場合での「スマート契約」の活用も想定。不動産領域を起点として、生活関連の各種サービスへの拡大・連携を進め、衣食住の「住」の総合プラットフォームを目指すとのことだ。