資生堂は、独自に開発した皮膚可視化技術を活用することにより、皮膚のリンパ管の老化メカニズムを世界で初めて解明したと発表した。
さらに、東京医科歯科大学との共同研究により、リンパ管の老化抑制効果を検証する試験法を開発し、薬剤の探索を行った結果、桑の根エキスに顕著な老化抑制効果を発見。
これまでは、加齢によって皮膚のリンパ管の密度が減少することは知られていたが、そのメカニズムについては分かっていなかったという。
リンパ管は、一般的に人体の余分な水分や老廃物を運搬して排出する機能が知られており、特に皮膚のリンパ管は、リンパの流れの開始点として皮膚の老廃物を回収するという特徴がある。
これまでは一般的に皮膚のリンパ管は深いところに存在していると捉えられており、日常生活においてリンパマッサージのような強い刺激でしかアプローチできないと考えられていた。
同社の独自技術である皮膚のリンパ管の可視化技術により、リンパ管が皮膚の直下まではり巡らされていることが確認され、リンパ管が皮膚表面において重要な役割を担っていることが示唆されたという。
また、近年は医療分野において、眼のリンパ管といわれるシュレム管が老化に伴うリンパ管内皮細胞の形質転換により、機能が不全になり、緑内障を発症するという報告がなされるなど、リンパ管の老化メカニズムが注目されている。
そこで、今回、同社はリンパ管内皮細胞の「形質転換」に着目し、リンパ管の機能改善および皮膚老化の抑制を目的とした、皮膚のリンパ管の老化メカニズムを検討したとのことだ。
リンパ管の老化メカニズムを解明するため、皮膚組織内でリンパ管内皮細胞が形質転換する像を免疫組織化学染色で可視化したところ、加齢した皮膚で老化リンパ管が多く観察されたという。
そこで、20歳代の若年層8名の皮膚のリンパ管と40歳代~60歳代のマチュア層10名の皮膚のリンパ管の老化割合を比較したところ、マチュア層では老化したリンパ管の割合が顕著に増加していることが明らかになった)。
また、リンパ管内皮細胞の培養を続けることによって老化させたところ、リンパ管に特徴的な遺伝子(Prox1)の発現が顕著に減少してリンパ管の機能を持たない別の細胞へ変化することが確認された。
さらに、リンパ管内皮細胞の老化、形質転換の引き金であるトランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)によって、リンパ管が漏れやすくなり、その機能が低下することも明らかになったとのことだ。
東京医科歯科大学との共同研究で、リンパ管の老化を抑制する薬剤を探索するためのアッセイ系を構築。
その結果、桑の根エキスにリンパ管の老化を抑制する高い効果が見出されたという。
これまでは加齢により皮膚のリンパ管の密度が減少することは分かっていたが、その理由や皮膚内でのメカニズムは明らかではなかったという。
今回の研究により、皮膚のリンパ管を構成する細胞はその性質が変わることで老化が進み、皮膚の老廃物を回収する機能を失うことがわかったとのことだ。
また、老化によるリンパ管の変化に対しては、桑の根エキスにリンパ管の老化を抑制する効果が見出されたという。
今回の研究成果を元に、リンパ管の機能に着目した皮膚老化の改善に繋がる新たな技術の開発を行っていくとしている。