清水建設の設計施工により2013年5月に竣工した中規模オフィスビル「森の中のオフィス」では、3月1日から商用電力を一切使用せずに建物の電力需給をバランスさせる「オフグリッド運用」を継続している。
ビルの電源を商用電力網(グリッド)から切り離して8カ月近くが経過するなか、同社の計画通りに太陽光発電とバイオマス発電、蓄電池が補完しあい、電力需給をリアルタイムにバランスさせているという。オフィスビルの使用電力を100%自給自足するオフグリッド運用は、国内初の試みとのことだ。
森の中のオフィスは、2階建ての木造6棟から構成される延床8,154m2(駐車場含)の中規模オフィスビル。竣工時の電力需給収支は、冷暖房と照明の負荷を低減する技術により通常の同規模オフィスに比べ45%、約475MWh/年の省エネを図ったうえで、使用する電力を太陽光発電(470kW)とバイオマス発電(175kW)、蓄電池(408kWh)、商用電力で補うこととし、ZEB(ゼロエネルギービル)を目指している。
実際には、オフィス利用者の省エネ意識の高さから、2013年7月の運用開始時から2月までの7年間は発電量が消費電力を約200~300MWh/年上回るPEB(Positive Energy Building)として機能していた。
そうした中、環境負荷の一層の低減を求める発注者の要請に応え、蓄電池の更新に併せてオフグリッド化による電力の完全な自給自足、本質的なRE100(再生可能エネルギー100%)を目指すことになったとのことだ。
オフグリッド化にあたっての主な課題は、最適な蓄電池容量の設定、一層の環境負荷抑制に向けた太陽光発電の優先稼働、電力需給のリアルタイム・バランス、急激な過充電・過放電からの蓄電池の保護であったという。
蓄電池容量については、暖房負荷が大きい11~4月に1日あたりの消費電力量の最大値が1,500kWh前後に達すること、オフグリッド運用上の発電設備と蓄電池の故障リスク、保守対応を鑑み、蓄電池2セットで最大値の2倍以上の容量を確保することに。
具体的には、(メーカーの製品仕様により)1,824kWhの蓄電池2セットを並行稼働させ、充・放電を繰り返しながら、目標蓄電量まで充電させる仕組みを取り入れている。
ただし、蓄電池は過充電や低充電時の放電により機能を自動停止するため、太陽光発電とバイオマス発電を自動制御し、そうした事態の発生を防止しているという。
電力需給については、蓄電池の充放電制御により、太陽光発電の優先稼働による急激な電力変動を吸収し、リアルタイム・バランスさせ、一連の発電・蓄電・放電のリアルタイム制御は、当社が開発した「シミズ・スマートBEMS」が行うという。
主要先進国は2050年に向けた野心的な温室効果ガスの削減目標を掲げており、わが国は2013年比で80%削減を目標。
同社は引続き、温室効果ガスの発生抑制に貢献すべく、省エネ技術の開発、建物の省エネ改修やZEBの提案、RE100の発電事業などに注力していくとしている。