リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所は、企業に勤務する一般社員と管理職1192名に「異動とキャリア開発に関する意識調査」を実施し、その結果を発表した。

調査結果は以下になる。

●異動に関して、一般社員は管理職と比較して、肯定的な印象についての選択率が低く、否定的な印象についての選択率が高い

●「過去に経験がない分野の仕事に取り組んだこと」と「過去に接点のない人々と仕事に取り組んだこと」がそれぞれ3割超え

●異動にあたって「考慮してほしい」、「把握したい」ということが、一般社員と管理職概ね一致

●一般社員は、長期的な視野でキャリア開発について検討する際に必要な情報に対し、異動先への適応のために必要な情報を知ることへの関心が相対的に高い

●一般社員の「キャリアが実現できるか不安だ」と「異動の際に条件や環境を考慮してほしい」という思いの強さとの間には相関関係がある

一般社員は管理職と比較して、異動に否定的な印象に

・一般社員と管理職、いずれにおいても肯定的な印象についての「あてはまる/ややあてはまる」の選択率は50%を超えている。
・一般社員と管理職、いずれにおいても否定的な印象についての「あてはまる/ややあてはまる」の選択率は50%を下回っている。
・管理職と比較して、一般社員は肯定的な印象について「あてはまる/ややあてはまる」の選択率が低く、否定的な印象についての選択率が高い。
・中立的な「管理職や経営幹部になるために欠かせないものである」という印象の「あてはまる/ややあてはまる」の選択率は、管理職で高い。

一般社員と管理職、それぞれが抱く異動に関する印象

・人事異動に伴うと考えられる「過去に経験がない分野の仕事に取り組んだこと」と「過去に接点のない人々と仕事に取り組んだこと」の選択率が高く、それぞれ3割を超えている。

同社は、これらの結果から、意に沿わない異動などに対する否定的な印象が一部あるものの、チャンスであるという肯定的な印象も持たれていることが確認できるとしている。

異動にあたって「考慮してほしい」、「把握したい」ということが、一般社員と管理職概ね一致

・いずれの項目に対しても、一般社員の「必ず考慮してほしい/考慮してほしい」、管理職の「把握したい/やや把握したい」の選択率が5割を超えている。また、選択率も概ね一致している。
・一般社員の「必ず考慮してほしい/考慮してほしい」と比較して、管理職側の「把握したい/やや把握したい」の選択率が低いのは、「勤務地や勤務時間など、制約事項」と「上司と本人の相性(管理職とメンバーの相性)」。

同社は、「勤務地や勤務時間など、制約事項」については、多様な人材の活躍を支えるためには不可欠なものではあるものの、管理職側はそれらの制約事項に対してすべてケアすることができない場合もあるため、このような乖離が出ていると推察している。

また、「上司と本人の相性」に関しては、メンバーである一般社員にとって上司である管理職は原則1名であるのに対し、管理職のもとには複数のメンバーが所属する形になるため、一般社員側がより「考慮してほしい」と考える傾向になっているのではないかと推察している。

一般社員は、長期的な視野でキャリア開発について検討する際に必要な情報に対し、異動先への適応のために必要な情報を知ることへの関心が相対的に高い

・「異動先で携わる仕事を遂行する上で必要な知識やスキルが分かること」、「異動先の職場で行われている仕事の進め方が分かること」、「異動先の上司の性格特性などの特徴がわかること」など、まずは異動というイベントが起こった際に、異動先への適応のために必要な情報、すなわち短期で必要な情報を知ることへの関心が相対的に高い。

上記に続いて、「どこに異動すれば、自分が望む仕事に携われるかが分かること」、「どこに異動すれば、自分が身につけたい知識やスキルを身につけられるかが分かること」、「自分のキャリアパスが明確に提示されていること」、「さまざまなポストについて、過去にどのような人が携わっていたかが分かること」など、長期的な視野でキャリア開発について検討する際に必要な情報への関心も高い。

一般社員の「キャリアが実現できるか不安だ」と「異動の際に条件や環境を考慮してほしい」という思いの強さとの間には相関関係がある

・「私は、自分が将来歩みたいキャリアが実現できるか不安だ」との間で、「考慮してほしいこと」や「知りたいこと」の相関係数が高い。

同社は、「キャリアが実現できるか不安だ」という思いの強さと、「異動の際に条件や環境を考慮してほしい」という思いや「異動やキャリア開発の際に必要な情報を把握したい」という思いの強さとの間に関係がある。社員のキャリアに関する不安を払拭するために、人材情報や職務情報の共有化や開示が有効である可能性を示唆している。

調査概要

<参照元>
リクルートマネジメントソリューションズ『異動とキャリア開発に関する意識調査