「ウーバー・グリーン」開始、加速する配車サービス「脱炭素化」の動き。ボルト、リフトも

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交通セクターの「脱炭素化」

全産業の二酸化炭素排出量のうち、15〜20%を占めるといわれる交通・運輸セクター。国土交通省によると、日本では2018年交通・運輸部門における二酸化炭素排出量は2億1,000万トンと全体の18.5%を占めたという。

世界的に広がる「脱炭素化」の動き。この目標を達成する上で、交通・運輸が重要な部門であることは明白だ。

脱炭素化では、交通・運輸の中で最も大きな比重を占める「自家用乗用車」の電動化や利用効率化が求められるところだろう。ヒトやモノの移動は経済の活性化に必要不可欠。移動を促進しつつ、二酸化炭素排出を削減するソリューションが必要だ。

海外では、ウーバーやリフト、ボルトなどのライドシェアサービス企業が脱炭素化の取り組みを本格化しており、移動を促進しつつ、交通・運輸部門にかかる二酸化炭素排出削減を実現しようとしている。

どのような取り組みが行われているのか、その動向を追ってみたい。

ハイブリッドか電気自動車のみ、新「ウーバー・グリーン」サービス

配車サービス世界最大手のウーバーは9月、ハイブリッド車か電気自動車のみを配車する「ウーバー・グリーン」サービスを北米市場で開始した。

ウーバーアプリ上に表示される「ウーバー・グリーン」ボタンをタッチするだけで、ガソリン車ではなく、ハイブリッド/電気自動車を呼べる新サービスだ。米国では、この新サービス利用で、利用者には1ドルが追加チャージされる。

このウーバー・グリーン、6月頃にオランダで初めて投入。地元グリーンエネルギー企業Vandebronと提携し、アムステルダムやロッテルダムを手始めに開始された。ウーバーの本拠地である米国ではなくオランダだった理由は、電気自動車が普及していることに加え、充電ステーションが整備されているためだ。ウーバー運転手は、Vandebronが提供する充電カードを利用して、充電する仕組みになっている。

オランダ・アムステルダムの充電ステーション(2019年4月)

オランダでのウーバー・グリーン展開は、北米市場でのサービス開始とともに発表された同社の野心的な「脱炭素化イニシアチブ」の布石だったようだ。

9月7日、ウーバーは「Driving a Green Recovery」と題した脱炭素化計画を発表。2030年までに米国、カナダ、欧州における全ライドを100%電気自動車に移行すること、またその目標を達成するための施策を明らかにした。

同発表で強調されているのは、どのように電気自動車ライドの供給側の整備を行っていくのかということ。

まず、ウーバー運転手の電気自動車移行を促すため、8億ドル(約830億円)以上の資金を投入。2025年までに米国、カナダ、欧州市場で電気自動車普及を支援するという。

またインセンティブとして、ウーバー・グリーンサービスを提供した運転手に、1回のライドで0.5ドルの追加収入を支払う仕組みが導入される。これは、ハイブリッド車と電気自動車の運転手に支払われるインセンティブであり、完全なゼロ排出車(バッテリーEV)の運転手にはさらに1ドル追加され、合計1.5ドルが支払われるようになるとのこと。

さらに、電気自動車メーカーや充電ステーション運営企業/組織などとの提携を通じて、運転手が電気自動車にアクセスしやすい環境を整備する。米国・カナダ市場ではGMと、一方欧州では日産・ルノーとの提携によって、電気自動車へのアクセスを強化するという。

これに関連して、ブルームバーグ9月9日の記事よると、ウーバーは欧州での電気自動車利用を増やす目的で、日産とルノーとの覚書に署名。これによりウーバー運転手は、ルノーの電気自動車「ZOE」や日産「リーフ」が利用できるようになるという。

日産「リーフ」

ウーバーのウェブサイトによると、同社配車サービスは世界63カ国・700都市で展開、月間アクティブユーザー数は世界9,100万人、運転手は310万人。これまでに累計100億回のサービスを提供、現在1日あたりのサービス提供回数は1,400万回に上る。業界最大手ウーバーの脱炭素化の動きが、他のプレイヤーや他の産業にどのような影響を与えるのか、気になるところだ。

ウーバー競合の取り組み、ボルトは「カーボンニュートラル」達成

ウーバーの競合「リフト(Lyft)」は2019年2月、前年に発表した環境イニシアチブ「Green Cities Initiative」の一環で、電気自動車とハイブリッド車を選べる「グリーン・モード」をシアトルを皮切りに米各都市で導入。

同イニシアチブは、植林プロジェクトや代替可能エネルギープロジェクトへの投資などを通じて「カーボンニュートラル」の達成を目指すもの。これに基づき、2018年7月には自転車シェアのMotivateを買収しており、自転車シェアサービスではLyftは米最大の企業になった。同社2018年11月末のブログポストによると、2017年の米国シェア自転車利用の80%がMotivateによるものだったという。

一方、欧州の配車サービス市場で躍進するエストニア発の「ボルト(Bolt)」は2019年9月に排出権取り引きを通じて、同社サービスにおける「カーボンニュートラル化」を達成したことを発表。同時に、さらに排出削減を目指す「Green Plan」も明らかにした。

ボルト配車サービス(ポーランド・ワルシャワ)

Green Planでは、2020年中に同社オフィスで利用する電力を100%代替可能エネルギーにシフトすること、また2025年までに最低500万トンの二酸化炭素排出の相殺を目指し、電動スクーターや電気自動車の利用を増やしていくことが明記されている。

交通セクターの脱炭素化をけん引する配車サービス各社の動きから目が離せない。

文:細谷元(Livit

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