八重山観光フェリーとユーグレナ社は、八重山観光フェリーの船舶において、世界で初めてユーグレナ社の次世代バイオディーゼル燃料「ユーグレナバイオディーゼル燃料」を使用した試験航行を実施したと発表した。
八重山観光フェリーの船舶は、沖縄県八重山地域の石垣島、西表島、竹富島などを発着しており、同船は各島間を航行。観光客の輸送のみならず、地元の方々の生活インフラとしての役割を果たしているという。
今回、八重山観光フェリーは、日本をバイオ燃料先進国にすることを目指す「GREEN OIL JAPAN」宣言に賛同。ユーグレナバイオディーゼル燃料を使用した試験航行を実施した。
なお、同試験航行は、ユーグレナバイオディーゼル燃料を船舶に導入した世界初の取り組みであるという。
ユーグレナ社は、日本初のバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラント(以下、バイオ燃料製造実証プラント)を2018年に竣工し、製造したバイオ燃料を陸・海・空における移動体に導入することを目標としてきた。
今回の取り組みは、「海」の移動体である船舶におけるユーグレナバイオディーゼル燃料使用の第一歩となるとのことだ。
今回の試験航行に使用したユーグレナ社が製造するユーグレナバイオディーゼル燃料は、微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)と使用済み食用油を原料に使用した、船舶のディーゼルエンジンに対して混合上限100%でも使用可能で、既存の給油での供給が可能な次世代バイオディーゼル燃料。
現在、海運業界では気候変動や大気汚染、環境保全の面から燃料等に対する国際的な環境規制が始まっている。
国際海事機関(IMO)は、世界の大気汚染の改善のためにSOx規制(※)を導入し、2020年からは、全世界で船舶用燃料油中の硫黄分濃度を「3.5%以下」から「0.5%以下」にするよう一段と規制が強化されたという。
その点、ユーグレナバイオディーゼル燃料は大気汚染の原因となる硫黄分を含まないため、船舶用の燃料油に定められているSOx規制への対応に適しているとのことだ。
また、気候変動対策においては、船舶からの温室効果ガス(GHG)の排出量を2050年までに2008年対比で50%削減するとともに、21世紀中の可能な限り早期に海運業界からGHG排出をなくすことを目標に掲げているという。
海運業界ではこの目標を達成するために、低炭素化の手段として①燃費の良い船舶の開発、②効率的な運航オペレーションの実施、③代替燃料の開発という3つを掲げ、その中でも代替燃料による低炭素化の影響が大きいと評価されている。
代替燃料としては、バイオ燃料のほか、LNG(液化天然ガス)やメタノール、水素やアンモニアなどがあげられるが、LNGやメタノールはCO2排出量の削減効果が他の代替燃料と比較して低く、水素やアンモニア等は既存の船舶燃料の給油インフラに適合しないという課題がある。
その点、バイオ燃料は既存の給油インフラを使用可能であるという利点や、燃焼段階ではGHGを発生させないカーボンニュートラルであることから、気候変動や大気汚染対策の観点からも有望視されているとのことだ。
ユーグレナ社はバイオ燃料の一種であるユーグレナバイオ燃料の海運業界での使用を推進するため、八重山観光フェリーと共に今回の試験航行を実施するに至ったとしている。
(※)船舶燃料(石油や石炭など)が燃焼する際に発生する硫黄酸化物(SOx)濃度に関する国際規制