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AIが楽曲トレンドを定量的に分析 ヒットソングの特徴の可視化が可能に
昨今、デジタル技術の発展に伴い、ストリーミングサービスや動画配信サービスなど音楽の楽しみ方が多様化している。阪神コンテンツリンクは、多様化した音楽市場の実態を多角的に捉えた「ストリーミング」「ダウンロード」「CDセールス」など8種類の手法を組み合わせた総合音楽チャート「Billboard JAPAN HOT 100」を構成する多様なデータを保有している。
また、NTTデータグループでは、脳情報通信技術「NeuroAI」の研究・事業開発に取り組み、動画広告の分野では、広告効果の予測が既存の機械学習に優越することを示すなどの成果を上げてきた。
そうしたなかで、NTTデータらは、音楽に対する人間の反応を科学的に把握するために「楽曲チャートデータ」と「脳情報通信技術」を融合させる共同研究開発プロジェクトを2019年9月から実施していた。
今回の共同研究での結果は以下のようになっている。
楽曲の脳情報化による新たな特徴の獲得
NeuroAIを音楽に適用することにより、音楽のジャンルの情報や音声信号処理によらない新たな「楽曲特徴」を定量化した。また、脳情報に含まれる、人間が感じる音楽の潜在的かつ言語化不可能な反応を利用することで、楽曲トレンドを反映したCMタイアップソングの提案や、「今までは聴かなかったようなジャンルから好きになれる楽曲との出会いを提供する」など新たなアプローチによるプレイリストの作成提案などが期待される。
“NeuroAI Selected Playlist”特定の曲と類似した脳情報表現が推定された楽曲をリスト化
ヒットソングの特徴の可視化
週単位の楽曲トレンドを定量的に把握するため、楽曲特徴(脳情報・歌詞特徴・コード進行特徴)およびアーティストの前週のチャートデータから、チャートポイントを説明する「チャートモデル」を構築。過去のチャート情報を加味しているため、アーティスト知名度などの影響をある程度差し引いたうえで、どのような楽曲特徴が支持されているのか把握することが可能になる。
Billboard JAPAN HOT 100の2020上半期と楽曲特徴のみからトレンドを評価したランキング
未来の音楽トレンド予測
週単位で、どのような楽曲特徴を持つ曲が上位にランクインするかを定量的に表したモデルの時系列変化を「トレンドの変化」と捉え、過去の変化パターンから未来にどんな楽曲特徴が支持されるのかを予測する。
また、実質のチャートデータだけでなく、「急に聴かれるようになった」楽曲について指標化したデータ(急トレンド指標)対象に新たなチャートモデルをつくり、時系列変化を予測した。全データの90%を利用し、(2016年12月5日~2020年3月16日)その変化パターンを学習させたところ、2020年3月23日以降の未学習に仮設定したデータにおいても予測精度が維持できているという結果も出ている。
予想されたチャートモデルの精度と予測された楽曲
楽曲制作をアシストするAI 作曲者のスタイル合わせて提案
音楽にAIを取り入れることで、好みにあった作曲や選曲ができるようになる。
株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所(以下、ソニーCSL)は2020年3月24日、AIアシスト楽曲制作プロジェクトFlow Machines(以下、FM)によるサービスの開始を発表した。
FMは、機械学習や信号処理技術でアーティストと共に、いくつものスタイルの新たな音楽の生成に取り組んでいた。そのFMの核となっているのは、AIアシスト楽曲制作ツールFlow Machines Professional(以下、FM Pro)だ。さまざまな音楽を解析して構成された音楽ルールに加え、先端ソフトウェア技術を用いて、クリエイターの構想のもと多様なスタイルのメロディーを自由自在に生成できる。
FM Proは作曲に特化したツールで、作曲者の作りたいスタイルに合わせたメロディー、コード、ベースを提案してくれるAIだ。FM Proには曲のスタイルを表現するスタイルパレットという独自の概念がある。このスタイルパレットは、ソニーCSLが開発した音楽データを解析した機械学習モデルだ。
楽曲の制作は、作りたい曲のコード進行にあわせてスタイルパレットを選択。選択したコード進行にあわせたメロディー、コード、ベースが連動した4小節×4パターンもしくは8小節×2パターンの曲をAIが提示する。また、何度でも新しい候補に更新することもでき、複数のパターンを1小節ずつ組み合わせる機能も備えている。