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世界は「フォールガイズ」センセーション?
「どうぶつの森」「ゴースト・オブ・ツシマ」と目まぐるしく変わるゲームトレンド。直近世界各地で大きな話題となっているのはゆるキャラパーティーゲームの「フォールガイズ」だ。
8月4日に発売されたPS4/PCゲーム。発売から24時間で、プレーヤー数が150万人に達したと報じられている。また8月10日、同ゲームのパブリッシャーDevolver DigitalはSteamでの売上数が200万本を突破したと発表。8月17日、ゲームメディアMillenniumが伝えたNextGen Playerの報道によると、ダウンロード数は、Steamで200万回、PS4では800万回、計1,000万回に達したという。
8月13日には、ゲームストリーミング配信のTwitchで、フォールガイズ関連の動画視聴時間が2,300万時間を超えたといわれている。
フォールガイズを開発したのは、英ロンドンに拠点を置くゲーム開発企業Mediatonic。4つのスタジオに計230人のスタッフを抱える企業だが、フォールガイズは少人数のチームで制作された。開発チームは、短期間でこれほどの人気を得るとは想定していなかった模様。ゲームローンチ後、予想以上のプレーヤーがサーバーに接続したため、一時ゲームをプレイできない状況になったと伝えられている。
フォールガイズ、企画は日本のテレビ番組がきっかけに?
オンライン接続で同時に60人でプレイする同ゲーム。障害物を乗り越え、誰よりも速くゴールに到達するというシンプルなルールだ。実は開発チーム、いつかのテレビ番組からゲームのインスピレーションを得たという。その番組の1つに挙げられているのが、日本で1986〜89年に放送されていた「痛快なりゆき番組 風雲!たけし城」だ。
当時「危険」「戦争を連想させる言葉」「失敗した人を笑い者にしている」などとPTAから批判されていた同番組だが、世界中で人気を博す日本発のグローバルコンテンツであることはあまり知られていない。欧米、中東、東南アジアなど150以上の国・地域で主に2000年代から放送されている。
Mediatonicが拠点を置く英国では、番組名「Takeshi’s Castle」として英語吹き替え版が2002年11月から放送開始。最近では、2012年に再放送、2013年にイギリス版が放送されており、Mediatonicの開発チームはこれらの放送から影響を受けたと思われる。
チャリティプロジェクトで、インフルエンサー巻き込み話題沸騰
ソーシャルメディア上でもフォールガイズに関する話題が盛り上がりを見せている。
開発チームは現在、ゲームキャラクターのスキンデザイン権を競うチャリティーオークションを実施している。身体障害を持つゲーマーを支援する英国の団体「Special Effect」に最高落札額全額を寄付するという同プロジェクト。8月31日まで実施される予定だが、8月20日現在、落札額はすでに40万ドル(約4,300万円)を超えている。
当初、2万ドル、3万ドルという規模で開始された同オークション。8月19には、米国の有名ゲームユーチューバーNinjaが20万ドル(約2,100万円)を提示、それにeスポーツ団体G2が20万3,003ドルで対抗。20万ドル代で拮抗すると思われたが、同日4,000万人以上のフォロワーを持つ米国のユーチューバーMr. Beastが30万ドル(約3,200万円)に引き上げ話題となった。しかし、その後も他の参加者により32万5,000ドル、33万ドルと引き上げられ、執筆時点(8月20日)の最新情報ではウォシュレット企業Tushyが42万69.60ドルで最高額をつけている。
以前、上記Mr. Beastが2019年10月にフォロワー数2,000万人を祝うため、植林2,000万本チャリティープロジェクトを実施した。このときイーロン・マスク氏やShopify創業者トバイアス・トビ・ルーク氏、またツイッター創業者ジャック・ドーシー氏、YouTubeCEOスーザン・ウォジスキ氏など著名起業家・ビジネスパーソンを巻き込む一大イベントとなったが、フォールガイズのチャリティーオークションもそのよう傾向が見られる。
フォールガイズ人気、心理学の視点
フォールガイズが世界的に人気となった理由はいくつか挙げられるが、その中には「たけし城」人気に見られる人間の普遍的な心理的要因も含まれるようだ。
英語メディアWIREDは、米エモリー大学のフィリップ・ロシャ心理学教授の話として、フォールガイズ人気には心理学でいう「シャーデンフロイデ」という心理状況が影響していると伝えている。
シャーデンフロイデとは他者の失敗を見聞きしたときに生じる心地よい感情のこと。人間誰にでも見られる心理的傾向だ。たけし城では挑戦者が失敗する姿が笑いを誘ったが、フォールガイズも同様に、失敗するプレイヤーやキャラクターのコミカルな所作が同ゲームの見どころとなっている。
フォールガイズ・センセーションはどこまで大きくなるのか。国内外の動向から目が離せない。
[文] 細谷元(Livit)