サイバーエージェントは、人工知能技術の研究開発組織「AI Lab」において、日本大学文理学部情報科学科助教の大澤正彦氏と「HAIにおける認知的不協和の解消を用いたユーザーの行動変容」に関する共同研究を開始したと発表した。
HAIとは、「人間」とロボットなどの「エージェント」のインタラクション(相互作用)を対象とした研究開発領域。
昨今、計算能力の向上や深層学習技術の発展を背景に、コミュニケーションロボットやバーチャルエージェントなどの「対話エージェント」における対話能力は年々高まっており、商業施設や宿泊施設、飲食店での接客業務において、人の代替となる労働力として対話エージェントを活用する事例が増加している。
中でも、対話エージェントがユーザーに何らかの行動を促す業務(通行誘導、商品販売、情報推薦など)において、ユーザーに行動を変えてもらうための説得能力が求められるが、対話エージェントがユーザーの意図を全て理解し説得を行なうことは、まだ困難であるという。
一方、ユーザーの行動を変化させる理論として、行動心理学や社会心理学では「認知的不協和の解消」が重要とされ、マーケティングの分野でも研究活用がされてきた。
この認知的不協和の解消とは、人は意思決定をした後に行動を起こすのではなく、自己の中に矛盾した認知・不協和が生まれた時、その辻褄を合わせようと行動や態度を決めたり変化する側面があること。
こうした背景のもと、AI Labではこれまでも人間の行動を促す対話エージェントの実現を目指し研究をしていたが、大澤氏とともに新たに共同研究を開始することで、「認知的不協和を解消しようとする人の特性」と、「人に対話エージェントの意図や欲求を認知させる技術」を組み合わせた、人の行動を促すインタラクションの実現に取組むとしている。
大澤氏は、幼少期から「ドラえもんをつくる」という夢の実現を目指し、認知科学、HAI、汎用人工知能の研究に従事している。
「ミニドラのようなロボットをつくるプロジェクト」では、人間にエージェントの「意図」を認知させるインタラクション設計の研究において高い評価を得ている。
なお、同共同研究は、人との信頼関係の上に成り立つ対話エージェントの情報推薦が「ローカルな特性を持つ広告媒体の実現」にも貢献すると考えられている。
AI Labは、今後も様々なAI分野で大学・機関と産学連携し研究を進め、より品質の高い広告技術の実現を目指し、研究・開発に努めるとしている。