国内外を問わず、自由に好きなところへ移動できるようになるのは、一体いつになるのか?
航空業界の間では「コロナ以前のように戻るには3〜4年かかる」という説が囁かれ、視界不良の中を飛び続けているという、まさにそんな状態でもあります。
コロナ以前の状態に戻るのはまだ先だとしても、旅に出て美味しいものを食べたいし、出会ったことのない風景を見たいし、人との出会いだって期待したい。それが人間として当然の考えではないですか? 小説家・開高健さんが残した名コピー、まさに「人間らしくやりたいナ」なのであります。
ということで、世界中にウィルスが蔓延してしまったこれからの時代、旅スタイルとは、いったいどのように変わっていき、どのように選べばいいのか? 然るべきタイミングで旅に出かけるその前に、それらについて考えてみたいと思います。
求められる“密”を避けた新しい旅のスタイル。宿泊や移動に起こる変化とは
人との密接・密着を避けた旅を作っていかなくてはならないのは当然。
自分たちを守るだけではなく、旅先の人にも安心してもらうためです。となるとアコモデーションは家族や仲間だけで貸し切り利用ができるスタイル(貸別荘や古民家等)が注目されるのではないでしょうか。
ホテルを選ぶ場合には、観光客が多く集まるいわゆる密集リゾートエリアの大規模ホテルは避け、“ビーチにポツン”状態の部屋数が少ない小規模なアコモデーションが狙い目になっていくと思われます。
また、旅行に欠かせない「移動」についてですが、今後飛行機やクルーズ、電車に乗る際には「陰性証明書」の類を持参、もしくはパスポートに記載されるようになることが予想されています。
空港や港で簡単に検査ができるようになれば、搭乗・乗船直前に検査が行われ、陽性の場合はその時点で旅行は中止。「旅行に行くものとして出発前の行動が不適切」と判断され、旅行代のキャンセル代は払われない…。そんなふうになることも考えられ、旅行者は旅行を申し込んだ時点から出発までの間、行動に最大限の注意を払わなくてはなりません。
加えて、長距離路線を中心に、飛行機の座席レイアウトが大きく変わる可能性もでてきます。客同士の間隔が取られるような工夫が施されるのです。仮に3列シートの真ん中の席を販売しないとなると、結構な定員数が減ります。
定員の数が減っても輸送コストはさほど変わりません。となると航空運賃の値上がりが起こるということが想像されます。「航空会社は生き残りをかけて客を取り合い、価格競争が起きる」と、そう思いますか?しかしそれは現存する航空会社が生き残れた場合に、です。大手を含めすでにいくつかの航空会社が破綻している今、それを期待するのはなかなか難しいところです。
その反対に、一部の観光地では宿泊費は値下がりが期待できるかもしれません。とくにすでに観光地として成熟している地域、例えばラスベガスやワイキキなどです。それらの場所はすでにホテルが林立し、部屋を多く抱えています。
先にお話したように、密集を避けた観光地を選択する旅行者の増加、飛行機の座席が減ることなどで、訪れる観光客の数が少ななくなれば、空室率が上がることになります。空室を埋めるためには各ホテルが価格を下げ、ダンピング合戦が起こるという、そんな嬉しい可能性に期待したいものです。
「離島」や「貸し切り」、ニューノーマル時代の旅に必要な要素とは?
では、ニューノーマルに向けて旅を楽しむためには何が必要になってくるのか? アクティビティのキーワードは、「貸し切り」になります。人との接触を避け、自分たちだけの空間の確保が可能な施設の貸し切り、ガイドやリムジン、ボートチャーターなどから、レンタル自転車やレンタカー、レンタルバイクなどのお手頃なものまで。「貸し切り」で遊べそうなものはいろいろありそうです。
例えば、チャーターといえば、クルーズ。ダイヤモンド・プリンセスでの感染拡大の衝撃以降、避けられているクルーズ旅ですが、自衛隊が艦船の乗組員に実施しているのと同様の、乗船日2週間前から経過観察した陰性の人だけが乗船を許されるというようなことが可能になれば、最も安全な貸し切り旅とそう言えるのかもしれません。宿泊はもちろん、飲食は全てクルーズの中、寄港地での観光は自分たちだけでバスチャーター。そんな外部との接触は一切なしのクルーズ旅です。
最後に、ニューノーマル時代の旅先について。個人的な志向と興味を含めてオススメしたいのは、タイやインドネシアなどアジアの離島。とくにタイは、45日間コロナ感染者ゼロ(原稿を書いている時点で)。
バンコク在住の知人に確認したところ、検査は日本以上に厳しく行われているようで、数字の信憑性は高いとのことです。日本人観光客の入国が許されるようになれば、アンダマン海やタイ湾に浮かぶ小さな島々のプール付きヴィラなどは、実に理想的な目的地です。
インドネシアについても同じような理由から。バリ島のほか、前回原稿に書いたスンバ島やコモド島など、日本人にはまだ知られていない島々がたくさんあります。またワンアイランドワンリゾート(一つの島に一つのリゾート)がコンセプトのモルジブや、ハワイならいつものオアフ島ではなくカウアイ島やラナイ島といったネイバーアイランドが狙い目。山派なら、ベトナムやタイの山岳民族の村を訪ねてみるというのもいいかもしれません。つまり、いつものさらに先を目指す、そんな旅がいいのです。
ただし、これらの場所へは直行便がありません。大空港で乗り換えることになります。乗り換え空港は人々でごった返し、旅中の最も感染リスクが高い場所ともいえます。それを避けるためにラウンジを利用します。マイレージの上級会員なら航空会社のラウンジで、上級会員でなくても有料で利用できるラウンジがあります。トランジット時間が長い場合には、空港ホテルをディユース利用するという方法がオススメです。
人との密着を避ける場所とは、実はまだそれほど観光地化されていない場所だったりします。そしてそういう場所に出かけることこそが、旅本来の姿なのかもしれません。そんなことを考えるきっかけとなった今回のコロナ禍ですが、いずれにしても早く笑顔で旅に出られる日が来ることを、心から願っています。
取材・文:山下マヌー