Laboro.AIは7月15日、同社のエンジニアコラムにてトマト画像物体検出データセット「Laboro Tomato」を公開した。

Laboro Tomatoは、国際的な著作権ライセンスであるクリエイティブコモンズのCC BY-NC 4.0(Attribution-NonCommercial 4.0 International)のもと、非商用目的に限り無料で公開している。なお、商用目的での利用の際は、Laboro.AIの問い合わせフォームより連絡が必要だ(外部サイト)。

合計804枚の画像データ 成熟、半熟、緑熟に応じたアノテーション

Laboro Tomatoは、物体検出技術のなかでも精緻な検出を実現するインスタンスセグメンテーションでの利用を想定して開発された。インスタンスセグメンテーションとは、画像をピクセル単位で分割し、対象の個体ごとの領域を抽出する技術のことだ。

それぞれのトマト画像は、通常サイズのトマトとミニトマトの2カテゴリーに分類されている。そして、全体的に赤みがあり収穫可能なものである「成熟」(暖色の割合が90%以上)、一部に緑色の部分があり、成熟までにまだ時間を要する「半熟」(暖色の割合が30~89%)、全体的に緑もしくは白いものである「緑熟」(暖色の割合が0~29%)の3種類の成熟度に応じたアノテーションが実施されている。なお、暖色の割合を示すパーセンテージの基準は、アノテーション作業者によって判断されたものだ。

アノテーション画像のサンプル

成熟度別の画像サンプル

Laboro.AIはLaboro Tomatoを使うことで、
・成熟度をもとにした収穫予測
・成熟トマトのみの自動収穫
・劣化、陳腐化したトマトの特定や自動間引き
・特定の成熟期のトマトのみへの農薬散布
・成熟状態に応じた温室内の温度管理
・食品メーカーの生産ライン上での品質管理
など、生産現場で活用できるシーンがあると考えている。

AIを活用して高糖度のトマトを作る取り組み

農業においてAIを活用する事例は増えつつあるが、そのなかでもトマトに関する取り組みで“高糖度トマト”の生産を成功させたニュースが話題になった。

株式会社Happy Qualityが2020年2月に発表したプレスリリースによれば、AIの判断に基づく潅水制御によって、平均糖度9.46という高糖度のトマトを高い可販果率で生産することに成功したという。

Happy Qualityのプレスリリースでは、トマトは栽培過程で適度な水分ストレスを与えることで高糖度な果実を栽培できると述べられている。そこで同社は、そこで2017年度に植物の水分ストレスは植物のしおれ具合から把握できると仮定。低解像度の草姿画像や温度、湿度、明るさといった比較的収集の容易なデータを使用して、植物の茎の太さ(茎径)の変化量を高精度に予測するAIの研究開発に成功した。

いくつかの実証実験をふまえ、Happy QualityはAIの判断に基づいた灌水制御では平均糖度9.46の高糖度トマトをバラつきを抑えて栽培するに至った。さらに、急な天候変化に追従した適切な灌水制御によって、従来の日射比例方式による灌水制御に比べ果実の裂果を大幅に減らし、高糖度トマトを高い可販果率(95%)で生産できることも確認している。