モルディブ政府が7月の観光再開計画を発表、ただし入国には条件も
2020年6月以降、欧州を中心にロックダウン解除・緩和にともなう観光再開の動きが少しずつ活発化している。
モルディブやバリなど南国リゾートでもそのような動きが見られる。一部では当初の予定を繰り上げ、早期の観光再開に乗り出すところも出てきている。
モルディブ観光当局は5月30日に、観光再開時期に関する声明を発表。2020年7月から一部の国からの観光客を除き、一般観光客の受け入れを再開する計画を明らかにした。
一般観光客の受け入れ再開に関して、当初モルディブ当局は、特別ビザの発給と到着時の検査実施、それらに対するエクストラチャージを検討していたが、その計画は棚上げされることになった。当初検討されていた特別ビザの費用は100ドル、到着時の検査費用は100ドルだった。最新の声明によると、旅行者はこれらの費用を支払わなくてもよいということになる。
Times of Indiaによると、今回のモルディブ観光再開では、スペイン、イタリア、英国、米国など感染者が多い12カ国は対象から除外されるとのこと。(更新:7月9日時点の最新情報では、国別の入国制限は解除された。)
海外観光客のモルディブ入国にはいくつかの条件が設けられている。まず海外観光客は、渡航前に新型コロナの検査を受け、陰性であることを証明する医療機関の書類を提示しなくてはならない。検査は到着前14日以内のものが有効となる。(更新:7月9日時点の最新情報では、書類提示は必要なくなった。)
また、ホテル予約の証明とそのホテルが「安全観光リゾートライセンス」を取得していることも条件となっている。
この安全観光リゾートライセンスとは、モルディブ政府が発行するライセンスで、感染が発生した場合のプロトコルや隔離部屋の準備ができているかを証明するもの。
このライセンス取得には、ホテル側は、宿泊施設の10%を隔離用に確保すること、スタッフの10%を隔離できるスペースを確保すること、スタッフの安全確保トレーニングの実施、ホテル内におけるソーシャルディスタンスの実施、除菌・殺菌にかかるトレーニングを実施していることなどが条件となる。また、ライセンス取得には5万ドルの費用がかかる。(更新:7月9日時点の最新情報では、リゾート側からの強い抗議により5万ドルの費用はかからなくなったとのこと。)
観光産業はモルディブ経済を支える主軸の1つ。Times of Indiaによると、観光産業がモルディブのGDPに占める割合は28%、外貨収入に占める割合は60%以上。2019年、モルディブを訪れた観光客は170万人。2020年には200万人に増加することが見込まれていたが、3月に国境封鎖したモルディブでは、この3カ月間観光客はゼロとなった。
同国ツーリズムが始まって以来のこと。状況は2004年の津波や2008年の金融危機のときよりもひどいという。当局が発表した最新予測によると、2020年の観光客数は前年比37〜50%減少する可能性がある。
モルディブの人口は50万人。国連開発計画(UNDP)とモルディブ当局がこのほど発表したレポートは、同国観光産業では今回のパンデミックで約4万5,000人の雇用に影響が出たと推計している。このうち地元民は2万2,000人。
ジョン・ホプキンス大学のまとめによると、2020年6月9日時点のモルディブにおける累計感染者数は1,916人、死者は8人。6月に入り感染者増のスピードは減速している。このまま状況が改善に向かうのであれば、上記声明の通り7月から観光客受け入れが再開される。ただし、計画は変更される可能性もある。
インドネシア・バリ島では観光再開に関する憶測様々。10月再開が濃厚か?
モルディブと並び日本人に人気の南国リゾート、インドネシア・バリ島では、海外観光客の受け入れに対して慎重な姿勢をとっている。
6月9日時点では、バリ当局による海外観光客の受け入れ再開日時についての明言はなされていない。
一方、観光産業に依存するバリ島、観光再開時期がいつになるのか、人々の関心は高まる一方。地元メディアによると、7〜10月の間に再開される可能性が有力視されている。しかし現状を見るかぎり早期の再開は難しいかもしれない。
ジョン・ホプキンス大のまとめでは、6月9日時点インドネシア全体の累計感染者数は3万2,033人。感染者増のスピードはまだ減速していない模様。6月8日だけで新たに847人の感染が確認された。
インドネシア紙The Jakarta Postによると、バリ島では6月7日(日)に新たに25人、8日(月)に12人の感染が確認され、同島における累計感染者数は594人になった。このところ、地元民による感染増が顕著になっている。バリ島のいくつかのビーチは6月1日に一度開放されたものの、感染が増加する懸念が広がり、再び閉鎖されたという。
感染を防ぎ安全な観光を実現しようと、インドネシア観光当局は現在、観光地における「CHS(Cleanliness, Health and Safety)プログラム」の導入を検討中だ。バリ島は、その一環でパイロットプログラムを実施すると報じられている。
2019年バリ島を訪れた観光客数は630万人。現在、海外観光客の流入が実質ゼロになっている状況、経済への打撃は深刻なものになっている。バリ観光当局はオーストラリアと相互の観光客往来を可能にする「トラベル・バブル」の締結を求めているとの報道もある。バリ島が海外観光客の受け入れをいつ再開するのか、気になるところだ。
6月10日時点の情報を掲載しております。
7月9日時点の情報を更新しました。
[文] 細谷元(Livit)