人の動きを学習し、道を譲ることを覚えたAI 作業現場の効率向上に貢献

三菱電機株式会社は6月3日、三菱電機のAI技術「Maisart」(マイサート)のひとつである逆強化学習を活用し、「人と協調するAI」の開発を発表した。これは、人の操作を少ないデータで効率的に模倣学習し、人が操作しているかのような自然な動作を機械が実現することで、人との協調が容易となる技術である。ちなみに逆強化学習とは、文字通り強化学習の“逆”を指す。強化学習は報酬に対して最適な行動を導き出すものだが、逆強化学習は、最適な行動から報酬を推定する手法である。

機械学習したAIが人と協調し作業効率向上へ

従来、AGV(Automated Guided Vehicle)など自動制御された機械と人が混在する生産現場や倉庫などの物流現場では、機械が自身の作業効率を重視して動くため、人との協調が成り立たず「お見合い」が起こるなど、作業効率が低下することがある状況になっていた。

こうした課題を解決するために、三菱電機では人の操作を画像によって模倣学習することで人との協調を容易にする人と協調するAIを開発するに至った。しかし、これまでは機械学習である「教師あり学習」を用いて、教師データを基に操作そのものを学習していたため、画像に基づいて操作を模倣する際に大量の教師データが必要となり、データの収集に時間やコストがかかっていた。

そこで今回、Maisartの逆強化学習を活用することで、教師データを基に自ら最適な操作を推定・学習し、少ない教師データで効率良く学習することが可能になった。これにより生産・物流現場だけでなく、自動運転車など、人と機械が混在する環境で作業効率の向上に貢献する。

また、生産・物流現場などの複数の移動体が存在する環境において、AGVに搭載したAIによる画像情報により人の操作を模倣学習することで、「道を譲る」など人が操作しているかのような自然な動作を実現する。シミュレーターの実験において、従来の制御方式と比べて作業効率が30%向上するという結果も出した。

三菱電機は、人と機械が混在する生産・物流現場でのAGVやロボットなどに技術を適用して実運用を進め、作業効率の向上に貢献するとともに、自動運転車への展開も目指していく。

AIが廃棄物収集コースを見直し 作業員の負担削減に貢献

三菱電機のAIでの活用の根底にあるのは作業の効率化だ。AIを使い作業効率を向上させることで、費用や人員を最小限に抑えられる例がある。

現在、新型コロナウイルス感染症の影響により廃棄物収集運搬業界では、顧客数と廃棄物量が減少し廃棄物収集コースの見直しや合理化が急務になっているという。

このような課題解決に向けて、エコスタッフ・ジャパン株式会社では2020年6月、AI(人工知能)を用いて廃棄物の最適な収集コースを算出するため、廃棄物処理業者に「AI配車シミュレーションサービス」を提供することを発表した。

AIシミュレーションサービスでは廃棄物収集にかかわる基礎情報からAIが最適な収集コースを算出する。これまで、配車担当者が取り組んでいた収集車両ごとのコース設定やコースの見直し作業を補助する役割だ。

勘や経験に頼っていた配車係の作業負荷の軽減や、収集車両を効率化することによって台数の削減を目指す。そして、トータルコストの削減につなげ、利益を創出することが期待される。

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