3密なしで楽しむ「バーチャルライブ」 大人気フォートナイト導入で盛り上がる新しい音楽ライブの形

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ライブ開催は早くても2020年末?パンデミックが音楽産業に与える影響

日本での緊急事態宣言解除に加え、海外でも多くの国でロックダウン解除/緩和の動きが加速している。ただし、ソーシャルディスタンスの維持など感染防止策の実施が条件となる。

このため外出ができるようになったといっても、人が密集するイベントの開催は当面自粛/禁止されることになる。夏は音楽ライブイベントのシーズンであるが、海外では2020年内の開催は難しいだろうとの見方が優勢だ。

米CNBCなどが伝えたゴールドマン・サックスの音楽産業の最新レポート「Music in the Air」では、ライブコンサートの中止や延期などにより、2020年世界の音楽産業におけるライブコンサートによる収入額は75%減になるだろうと見込んでいる。一方、長期では、ミレニアル世代やZ世代の音楽ストリーミング利用がさらに増加し、音楽産業全体は成長を続けるとのこと。

音楽ストリーミングのサブスクリプションユーザーは、2019年世界全体で3億4,100万人だった。2030年には12億人に増加する見込みだ。これに伴い、音楽産業の収入額も大幅に増加することが予想される。ゴールドマン・サックスは、音楽産業の収入額は2019年の770億ドル(約8兆2,000億円)から、2030年には1,420億ドル(約15兆2,000億)に達すると予想している。

音楽著作権保護サービス会社RPS for Musicのアンデラ・マーティン氏がPA Newsに語ったところでは、夏のライブコンサート開催は難しく、ライブが開催できるのは早くても2020年末になるだろうとのこと。その間、音楽ファンはストリーミングやオンラインギグを視聴するだろうと述べている。

人気ゲーム「フォートナイト」、音楽ライブのための新モード導入

多くのレポートや専門家は、パンデミックをきっかけに音楽産業はオフラインからオンラインにシフトすると見ている。ここでいうオンラインとは、主にSpotifyなどのストリーミングプラットフォームやYouTubeなどの動画配信プラットフォームのこと。

一方で、別の領域でも音楽のオンラインシフトを強固にする動きが起こっている。それが、ゲーム/VRにおけるライブコンサートの開催だ。

欧米で「社会現象」とまでいわれた世界的な人気オンラインゲーム「フォートナイト」。2020年5月8日にゲーム内の新モードとして「パーティー・ロイヤル」をローンチ。この新モードは、一言でいうとライブコンサートを楽しむためのもの。

通常の「バトルロイヤル」モードは、相手を倒し、生き残ることが基本ルールだが、パーティー・ロイヤルでは競争要素が排除されており、相手を攻撃し倒すことはできなくなっている。島に設営されたバーチャル・ライブコンサート会場で、音楽ライブを楽しむことが目的だ。

ローンチ記念には、スティーブ・アオキやDeadmau5など人気DJによるコンサートが開催され、多くのプレイヤーが参加したという。

「パーティー・ロイヤル」の1シーン(Epic Gamesウェブサイトより)

2019年にもフォートナイト内で人気DJのMarshmelloによるライブコンサートが開催され、1,070万人が同時接続し、同ゲームの最多記録を更新した。またこのコンサートの模様は、MarshmelloのYouTubeチャンネルでも配信され、現在までに5,100万回以上再生されている。

パーティー・ロイヤルでの次回コンサートのスケジュールはまだ不明であるが、今後定期的に開催されるものと思われる。

プレイヤーは選択したキャラを使いライブ会場で飛び跳ねたり、ダンスをして、音楽に対する自己表現が可能となる。このインタラクティブな要素は、SpotifyやYouTubeにはない。ゲーム内のライブコンサートは、特にハウスやEDMなどダンスミュージックと相性が良いといえる。

静かに盛り上がる?VR音楽ライブの可能性

フォートナイトの事例のようなバーチャルライブが増えるかどうかは、ミュージシャンがバーチャルライブを行うためのシステムやプラットフォームが拡充・整備されるかどうかにかかっているといえるだろう。

ロサンゼルスのVRスタートアップWaveが2019年末にローンチしたVRライブプラットフォームはその1つ。

フランスのジャン・ミッシェル・ジャール氏など多数の有名ミュージシャンとのコラボレーションを行ってきた同社。米国のバイオリニスト、リンジー・スターリング氏と実施したVRライブコンサートでは、世界中から40万人のファンが参加したという。

Wave社のVRライブプラットフォームは、アーティストがモーションキャプチャースーツを着用、その動きがバーチャルアバターにリアルタイムで反映される。

Wave社のVRコンサートプラットフォーム(Wave社ウェブサイトより)

同社は、ワーナーブロスとのコラボーレーションで、映画「レディ・プレイヤー・ワン」のクラブシーンを再現するプロジェクトにも取り組んでいるという。

WaveのほかのVRライブプラットフォームとしては、Sansarが挙げられる。Monstercatなどの大手レーベルと提携する同プラットフォーム、実際のライブさながらコンサート前にグッズ販売できる機能などが用意されている。対応VRヘッドセットは、オキュラスとVive。フォートナイトのような大々的な報道はなされていないが、定期的なライブコンサートやイベントを開催しているようだ。

ゲーム/VRにおけるライブコンサートの取り組みは全体的にまだ試行錯誤の段階といえる。この先、人気ミュージシャンによる定期的なライブ開催や非ゲームプレイヤーの認知度向上などが進めば、新しい音楽ライブの形として広く浸透していくのかもしれない。

文:細谷元(Livit

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