ネット利用変化、スマホからパソコン/テレビ視聴にシフト?
在宅勤務や自宅学習などパンデミックをきっかけに生活の様々な側面が大きく変化した。デジタルコンテンツ消費も例外ではない。
米ニューヨーク・タイムズ紙によるSimilarWebとApptopiaのデータまとめ(4月7日配信記事)では、米国におけるデジタルコンテンツ消費の変化が如実にあらわれている。これは上記2つの分析プラットフォームで、1月21〜3月24日までのデータを集計し、平均値を算出したもの。
大きな変化の1つとして挙げられているのが、スマホからパソコン/テレビへのシフトだ。
米国におけるフェイスブック、Netflix、YouTube、それぞれの1日あたりのトラフィックを調べたところ、スマホアプリ利用の伸びが鈍化/低下している一方で、ウェブサイトでの利用増加が顕著となった。
たとえば、フェイスブックは、1月21~3月24日の期間、モバイルアプリへのトラフィックは1.1%の微増にとどまったが、ウェブサイトでの利用は27%の増加を記録。
また、Netflixもモバイルアプリ利用は0.3%の微増にとどまるものだったが、ウェブサイトでの利用は16%増となった。さらに、YouTubeはモバイルアプリ利用がマイナス4.5%と減少したものの、ウェブサイトでは15%の増加となった。
この傾向は、パソコンやスマートテレビが普及している欧州などでも強まっていると推測できる。
イタリアでは、2月最終週のテレビ視聴率が前週比で6.5%増、感染者が急増したロンバルディア州では12%増加したとの報告もある。また、Statistaのまとめでは、2020年3月、イタリアでは60%がいつもより頻繁にソーシャルメディアを利用していると回答、また53%がNetflixなどの動画ストリーミング利用が増えていると回答している。
YouTubeはポジティブ空間、エンタメ・音楽・コメディ動画が人気
パンデミックをきっかけに、スマホからパソコン/テレビにシフトしつつあるデジタルコンテンツ消費。どのようなコンテンツが人気なのか。
YouTubeでは、パンデミック関連のネガティブニュースで沈みがちな気分を晴らす「元気がでる/楽しい系動画」の人気が上昇中のようだ。YouTubeでのブランディングサービスを行うChannelFactorysが4月に発表した調査レポートで、このことが示された。
米国在住の1,000人を対象に、パンデミック下のYouTube視聴動向を分析した同調査。どのジャンルの動画を視聴しているのかという質問で、トップとなったのが「エンタメ」だったのだ。回答割合は48.20%。
また、2位が「ミュージックビデオ」(47.94%)、3位が「コメディ」(33.25%)と、uplifting(気分を高揚させる)な動画の人気が高いことが判明。YouTubeでのパンデミック関連ニュース視聴も増えているといわれているが、この調査では33%と4位にランクインした。
YouTube上でどのジャンルのインフルエンサーを視聴しているのかという質問でも、1位「ミュージシャン」(46.41%)、2位「コメディインフルエンサー」(39.84%)と同様の傾向が明らかになった。
一方で、3位に「ニュースの専門家」(30.04%)、6位「研究者・データ専門家」(27.85%)がランクインし、YouTubeがパンデミック関連の情報収集で活用されている一面も示されている。
世の中には多数の動画配信プラットフォームやソーシャルメディアが存在するが、パンデミック下、YouTubeはポジティブな空間としてのポジションを確立しつつあるのかもしれない。
実際、同調査では約80%が「気分を高揚させる動画を探しにYouTubeにアクセスしている」と回答。また、約70%が「他のサイトに比べ、YouTubeのコンテンツの方が元気が出る/楽しい」と回答している。
YouTubeがポジティブ空間として捉えられていることは、パンデミックをきっかけに新設されたYouTubeチャンネル「SomeGoodNews」の短期間での躍進に見ることができる。
SomeGoodNewsは、米コメディドラマ「The Office」などに出演した俳優ジョン・クランシスキー氏が2020年3月26日に開設、同氏が自宅から世界中の「goog news」のみを伝えるチャンネルだ。5月11日時点、開設2カ月に満たない新チャンネルにも関わらず、登録者数は約230万人に達している。
これまでに13本の動画を公開、2020年4月6日に公開した動画は1,200万回以上再生されるなど、米国を中心に英語圏で注目されるチャンネルとなっている。クランシスキー氏の知名度が高いということもあるだろうが、ポジティブニュースにフォーカスしたことも同チャンネルの躍進要因になっているはずだ。
過去3カ月のYouTube人気検索ワード、トップの音楽系ワード増加率は3,750%
YouTube検索ワードからも、同様のトレンドが浮き彫りになる。
グーグルトレンドで米国における過去90日間のYouTube検索ワード、その注目度ランキングを調べてみると、1位は「fishy on me」で3,750%という増加率だ。fishy on meとは、米国のYouTubeクリエイターTikoが2020年2月に発表した曲。YouTubeのTikoチャンネルの登録者数は150万人だが、2月18日に公開した「Fishy On Me(Official Music Video)」の視聴回数は2,400万回を超えている。
プロアーティストによる曲ではなく、いわゆる「ジョーク系」の楽曲。不安を払拭するおもしろコンテンツとして若い世代の間で人気になっているようだ。
2位には「skechers」というキーワードがランクイン。これはYouTubeクリエイターのDripReportが2020年1月に発表した曲の名前。同チャンネル登録者数は約60万人だが、2020年1月に公開した同曲のオフィシャル・ミュージックビデオの再生回数は6,600万回以上。
このほか、ミュージシャンDrakeの曲「toosie slide」(2,300%増)、リル・ベイビーの曲「emotionally scarred」(2,150%増)など音楽系の検索ワードが多数を占めている。
一部の国では外出自粛・禁止が緩和され始めているが、再びクラスターが発生するなど、完全な解除にはまだ時間がかかりそうだ。YouTubeの元気が出る動画の需要はまだまだ続くことになるだろう。
[文] 細谷元(Livit)