ロックダウン時の家での過ごし方、世界1,577万人がネットフリックス新規登録
感染者増加のピークは過ぎ、一部の国々ではロックダウン解除・緩和の動きが出始めている。一方、大半の国では依然外出禁止・自粛が続いている状況だ。
外でのアクティビティに興じることができない今、世界各地の人々はどのようにして家での時間を過ごしているのか。1つは、動画ストリーミングサービスでの映画・ドラマ視聴だろう。ネットフリックスは、2020年1〜3月で1,577万人の新規ユーザーを獲得。その多くが、ロックダウン後にサブスクリプション登録を行ったとされる。これでネットフリックスの累計ユーザー数は1億8,300人に到達した。
ニールセンによると、ネットフリックスなどの動画ストリーミングサービスにおける視聴時間も伸びているとのこと。3月最初の2週間、米国ではストリーミング視聴時間が34%増加。また、Media Partners Asiaによると、東南アジアでは、スマホにおける動画ストリーミング視聴時間が、2020年1月〜4月11日で60%増加した。
ユーザー数や視聴時間において動画ストリーミングが伸びているのは、こうした数字に加え、友人・家族の動向を見ていると実感できるのではないだろうか。
ロックダウンで新規ゲームユーザーも増加、ニンテンドースイッチは前年比2倍の伸び
動画ストリーミングに負けていないのがゲームだ。
米メディアHollywoodReporterが伝えたニールセン・ゲームの調査によると、3月23〜29日の間に調査対象となった4カ国すべてで、ゲームプレイ時間が増加。増加率が最大だったのは米国で、45%だった。これに、フランス(38%)、英国(29%)、ドイツ(20%)が続いた。
この増加率は、オンラインと非オンラインのゲームを合わせたものだが、オンラインゲームのみの数字も増加している。パンデミック後、友人らとオンラインゲームをプレイする時間が増えたとの回答は米国で29%、英国で17%、フランスで12%となった。
同調査は「積極的にゲームをプレイする」いわゆるゲーマーを対象に実施されたもの。もし、普段あまりゲームはしないが、パンデミックをきっかけにゲームをプレイするようになった層を考慮した場合、上記の数字はさらに大きなものになる可能性がある。
このようなパンデミックをきっかけにゲームをする人が増えたことは、コンソール(ゲーム機)の販売データに如実に示されている。
米国の市場調査会社NPDによると、2020年3月のゲーム機売上高は、前年比63%増の4億6,100万ドル(約500億円)。伸び率が最大だったのはニンテンドースイッチで、前年比で2倍以上も伸びたという。PlayStation4とXboxもそれぞれ前年比で25%以上増加した。
米メディアVentureBeatによると、PlayStation4とXboxの販売数と売上高はこのところ減少傾向にあった。3月の売上増は新規ゲームユーザーが流入したことを示すものだと指摘している。
ニンテンドースイッチの販売数増加も新規ゲームユーザーの流入を示すもの。同ゲーム機の販売数が極端に伸びた背景には、ロックダウンで世界的にゲーム需要が伸びたことに加え、新作ソフト「あつまれ、どうぶつの森」のローンチが深く関わっているようだ。
「どうぶつの森」単月販売数で世界記録更新、世界中で人気の理由
日本でも話題のニンテンドースイッチの新作ゲーム「あつまれ どうぶつの森」。マスクより入手困難といわれるほどの人気だが、その人気は日本にとどまらず、世界中に拡散。英語圏の大手メディアがこぞってその人気ぶり取り上げている。
どうぶつの森の英語タイトルは「Animal Crossing: New Horizons」。グーグルトレンドで、英語タイトルの検索トレンドを調べてみると、発売日の3月20日の少し前から検索数が増加。3月22~28日週にピークに達し、その後検索指数は若干下がったものの、5月6日時点でも75以上で推移しており、注目度が依然高いことを示している。
ニールセン傘下のゲーム市場調査会社SuperDataの推計では、2020年3月単月で、どうぶつの森の販売数が500万本となり、コンソールゲームの単月販売数で、過去どのゲームをも上回ったという。それまでの記録は「コールオブデューティ・ブラックオプス4」だった。
SuperDataは、どうぶつの森が記録更新した要因について、ソーシャルな特性とリラクシングな設定が、ロックダウンで自宅にいる人々にとって魅力になったと分析している。
BBCは4月12日に「コンピュータゲーム:ロックダウン時、暇つぶし以上の存在に」と題した英語記事で、ロックダウンが続く欧米でゲームが人々の孤立化を防ぐなど、単なる暇つぶし以上の存在になっていることを伝えている。
この記事で特筆されているのがどうぶつの森だ。ゲーム内でオンラインでつながった友人らと釣りや楽器演奏を楽しんだり、デートをしたり、社会的なアクティビティに興じる人が増えているという。
今ではWHOもゲーム推し、ソーシャル空間としてのオンラインゲームの可能性
オンラインゲームのソーシャライズできる特性は、WHOも注目。3月28日には、Riot Gamesなどゲーム産業の主要企業18社と共同で「#PlayApartTogether」というキャンペーンを実施にするに至っている。
このキャンペーン、オンラインゲームの世界的なネットワークを生かして、ソーシャルディスタンスや手洗いなど、新型コロナの感染拡大を防ぐメッセージを広めることを目的としている。
また同時に、ゲームを通じて、StayHomeを促進しようというものでもある。「Play Apart Together」という言葉が示すように、物理的に離れていても、オンライン上で友人などと一緒にゲームができるオンラインゲームのソーシャルな特性を生かし、特に子供たちの孤立化・孤独化を防ごうという狙いもあったようだ。
ゲームというと、昨年WHOが「ゲーム障害」を国際疾病分類に加えたことで、依存症リスクなどのネガティブな側面がフォーカスされることが多くなっている。実際、パンデミックによるゲームプレイ時間の増加に比例し、ゲーム依存者が増えることを警告する専門家もいる。
一方、ゲーム依存の研究者マーク・グリフィス氏が指摘するように、ゲームに限らず、人が酒やギャンブルなどに依存するとき、そこには文脈的な要因が潜んでいる。それらを抜きに短絡的にゲーム=依存とするのは乱暴な議論なのかもしれない。子供のときの社会的な孤立は、健康リスクや学歴にネガティブな影響を及ぼすとの研究もある。
パンデミック時で孤立しがちな今、ソーシャル空間としてオンラインゲームがどのような可能性を秘めているのか、そのポテンシャルを議論することが建設的なのではないだろうか。
[文] 細谷元(Livit)