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普段外食多く料理スキルが低下したドイツ人、外食できず自炊に挑戦
世界各地では外出自粛・禁止が続いている。多くの人々は外食できず、自炊を余儀なくされている状況だ。
比較的自炊することが一般的な日本では、それほど大きな変化として捉えられていないが、普段自炊しない国々では様相が異なる。
ドイツの国際メディアDWは4月24日、「コロナ・パンデミックで露呈したドイツ人の残念な料理スキル」と題した記事で、国内の食事事情が大きく変化していることを伝えている。
同記事によるとドイツ食品飲料産業連合組合(BVE)の代表、クリストフ・ミンホフ氏はドイツ通信(DPA)の取材に対し、労働時間が増えたことなどを背景に、ドイツでは自炊する人が少なくなり、国全体で料理スキルが著しく低下したと指摘。ファストフード、カフェ、レストラン、冷凍食費に頼る傾向が強くなったという。
このことを示すかのように、現在スーパーでは冷凍食品の売り切れが続出しているとのこと。
パンデミックを受け閉店中のドイツ・シュトゥットガルトのマクドナルド(3月28日)
ただし同時に、健康を気にする人も多く、料理に挑戦するケースが増加中だという。ドイツの雑誌出版社がDPAに語ったところによると、パンデミックでの外出自粛・禁止を受け、料理企画への需要が急増。特に、スーパーで入手できる材料を使ったレシピを求める声が大きくなっているという。
自炊需要の増加は、ドイツのレシピ共有プラットフォーム「Chefkoch.de」へのアクセス増加にも見て取ることができる。
同サイト運営会社Gruner + Jahrによると、アクセス数は普段最も流入数が伸びる12月クリスマスシーズンの水準に達したとのこと。パンケーキ、パン、ピザ生地、ラザニアのレシピが人気だという。この人気を示すかのように、ドイツでは小麦粉やイースト菌が売り切れているという。
このほか、自炊メニューとして米やパスタの人気が高く、米の需要は170%増、パスタの需要は179%増加。トイレットペーパーの需要増加率118%を上回った。
ファストフード大国・米国でも節約や健康理由に自炊トレンド
「ファストフード大国」や「ファストフード帝国」などと呼ばれる米国でも、食事に関して変化の兆しがあるようだ。
閉鎖を知らせるニューヨークのレストラン(4月7日)
ニューヨークとロンドンを中心に事業展開する広告代理店Hunterが実施した最新調査で、米国では自炊の頻度が増えていること、またパンデミック終息後も自炊を続ける意向が強いことなどが判明したのだ。
4月2日に米国在住の1,005人(18〜73歳)を対象に実施された同調査。パンデミックをきっかけに料理をする頻度が増えたとの回答は54%、また(パンやケーキなどの)焼き料理(bake)をする頻度が増えたとの回答は46%に上った。
これに伴い、料理スキルに自信を持つ人も増えている。実に50%が自分の料理スキルに対する自信が高まったと回答。また26%が料理スキルを一層高めるために学習しているとのこと。さらに、35%が今までにないほど料理を楽しんでいると答えている。
どのような種類の料理が増えているのか。トップは、パスタ/米などの主食(72%)。次いで卵料理(66%)、野菜(66%)、赤肉(55%)、サラダ(53%)、スープ/シチュー(52%)などが人気だった。Hunterは、サラダやスープなど、健康を気遣ったメニューが増えていることが特徴的だと指摘している。
レシピは、ウェブサイトを参考にするという割合がトップ(66%)。次いで、58%がソーシャルメディア、52%が友人/家族、41%が料理本、34%がテレビを参考にしていると回答。ソーシャルメディアの中で、最も参考にされているのはフェイスブック(71%)。これに、YouTube(60%)、インスタグラム(58%)、ピンタレスト(54%)、ツイッター(31%)が続いた。
この調査で最も興味深いのは、外食・ファストフード消費が大きな米国で自炊カルチャーが根付く可能性を示唆している点だろう。実に51%が自炊を継続すると回答しているのだ。
その理由のトップは、節約できるからというもの。その割合は58%に上った。このほか、自炊することで健康的な食事ができる(52%)、新しいレシピに挑戦したい(50%)、料理しているとリラックスできる(50%)などの理由が挙げられている。
日本は揚げレンコンが人気?ピンタレストが分析した世界各地の人気レシピ
上記Hunterの調査が示したように、ソーシャルメディアのレシピを参考に料理する人は少なくない。同時に、そのようにしてつくった料理の写真をソーシャルメディアでシェアすることも1つのトレンドになっている、
ピンタレストはこのほど、ロックダウン中ピンタレストユーザーがどのような料理をつくっているのか、同プラットフォームのデータを分析し、国ごとの傾向をあぶり出している。
それによると、ドイツで人気の料理はグリッシーニ(スティック状のパン)とガーリックブレッド。上記DWの報道では、ドイツでは小麦粉とイースト菌が売り切れているとのことだったが、ピンタレストのデータも小麦粉とイースト菌需要の高さを示すものとなっている。
ドイツで人気のスティックブレッド
一方米国で人気のレシピは、ナバホブレッド(揚げパン)とビーフパイ。
このほか、フランスでは日本式ブリオッシュ(パン)、英国では卵を使わないケーキ、スペインではチュロス、トルコではバナナブレッド、カナダではアスパラガスパスタ、インドネシアではポテトドーナツの人気が高いことが判明。日本のピンタレストユーザーの間では揚げレンコンが人気とのこと。
現在、一部の国ではロックダウン解除や外出自粛・禁止が緩和され、普段の生活が戻りつつある。パンデミック後、世界の食事事情はどう変わっていくのか。これまでの状態に戻るのか、それとも新しいカルチャーが根付くのか、その変化が気になるところだ。
[文] 細谷元(Livit)