コミュニケーションで重視しておきたい7つのスキル

新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言を受けて、在宅勤務をする人が増えている。対面での対話や会議がなくなり、ZoomやSkypeなどのネット会議システムを用いて、リモートでコミュニケーションをとることが常態化してきた。

筆者は職業柄、ビジネススキル発揮力を高めるプログラムを長年さまざまな企業で実施しているが、最近はリモートで双方向の演習プログラムが注目されている。

その中でも参加者から、リモートでのコミュニケーションに関する相談が急増し「相手と話がかみ合わない」「話の要領が得ない」「コミュニケーションに時間が余計かかる」という声をいただくことも多い。

在宅勤務が必要とされている状況下で、円滑にコミュニケーションを取るためにはどのようにすればいいのだろうか?

「コミュニケーションスキル」とはいえ、一概に説明することはできない。分解するとさまざまなスキルがあるのだ。中でも筆者は、表現力、構成力、説明力、返答力、誘導力、巻き込み力、合意形成力の7つのスキルが重視する必要があると考えている。

それぞれの内容は、以下の表のとおりだ。

起点は「説明力」 リモートワークで効果的な3つのスキル

実はこれらのスキル、対面で活用するか、リモートで活用するかで、発揮する効果が異なる。特に、説明力、返答力、誘導力はリモートで活用した方が効果が高いと筆者は考えている。

「リモートより対面の方が、そのスキルは役立つのではないか」と思う方もいるかもしれないが、これらのスキルの場合は、逆なのだ。

対面で効果を発揮しやすいスキルは、表現力の場合、表情、声、動作などの表現の組み合わせで発揮することが多く、それらを同時に繰り出すことで効果が高まる構造になっている。

一方、リモートで発揮しやすいスキルは、例えば説明力にしても、説明する内容そのものを工夫するというように単純化されており、その一点で効果をもたらしやすいのだ。

対面とリモートでは、カメラという隔たりが無いか有るか、立体か二次元か、全身か上半身か、熱量を感じようと思えば感じられるか感じにくいか・・・情報量が格段に異なる。

つまり、対面に比べてリモートの場合は、相手から受けたり、相手に与える情報量が限定される。その分、他のスキルの影響を受けにくいので、説明力、返答力、誘導力を高めれば、リモートでのコミュニケーションをより円滑にできるのだ。

また、この3つの中でも説明力は演習をしやすく、習得時間が短い。そして、説明力を身に付ければ、返答力が、返答力を身に付ければ誘導力が高まるというように、説明力は他のスキルを高める起点にもなっている。

キーパーソンに合わせた7つの“手法”で説明する

説明力を高めるための手法は7つ存在する。

まずは、時系列で順を追って説明する「経過手法」、掘り下げてフォーカスする点に着目して説明するのが「分解手法」、将来地点の姿から逆算して説明する、現在地点から積み上げて説明するのが、それぞれ「逆算方式」、「積上方式」だ。

また、フォーカスする視点を変えて、「重要度」、「緊急度」、「貢献度」に着目して説明する手法がある。

どのような人に対して使うかと言えば、日頃から「順を追って話してください」と言いがちな人には経過手法を使えばよいし、順を追って話していたら、イライラし始めて、「だから、何を言いたいのですか」と言ってくる人に対しては、分解手法を用いればよい。

「最終的にどうなるか早く言ってくれ」ということをよく言っている人に対しては逆算方式、「今何をしろというのか」「次にどうすればよいのか」ということが気にかかっている人に対しては積上方式で説明するのだ。

これを間違えると、せっかく説明しても相手に理解を促すどころか、逆効果になりかねない。ひとつひとつ段階を踏んで、時系列で話を聞いて、確認を積み重ねてくタイプの上司に対して、「結論は〇〇です」「最終的には△△になります」と将来地点の姿をいくら雄弁に語っても、「足元を見ろ」「現実的な話をしろ」「話を飛躍させるな」という反応を受けてしまう。

よかれと思って、丁寧に時系列で説明しても、とにかく結論を先に知りたがるタイプの上司からは、「まどろっこしい」「だから何が言いたいのだ」と叱られてしまう。

上の表の「効き目のある相手」に書かれているフレーズを口に出すような人は、ある程度の権限を持っていて、言いたいことが言える人で、組織のキーパーソンである人が多い。

読者の方も、自分のまわりに、この例に挙げたようなことを言う人が思い浮かぶに違いない。その人に合致する手法のひとつを試してもらいたい。

最初は、繰り出した手法のうちの一手法が相手に合致しないこともあるだろう。しかし、何度か繰り返し試していくと、相当程度の確率で、以前とは違う反応が得られるだろう。

自分ではなく相手に合わせた説明手法を使うことがカギ

説明力を発揮するというように言うと、自分が言いたい内容を、言いやすい方法で説明すると思いがちだが、相手が理解しやすい手法に合わせて、自分が説明することが肝心なのだ。

大事なことは、説明力の手法を頭でわかっていても、話法として繰り出せなければ何の意味もないということだ。

それも、どの話法を使うか、ああでもない、こうでもないと考えあぐねているうちに、時間が経過してしまっては、意味がない。集中的に反復演習すると2時間程度で説明力の7手法を瞬時に使い分けられるようになるので、2時間集中演習とまでいかなくても、対話のたびに、どの手法を使うか瞬時に選択しながら繰り出すことをオススメしたい。

対面と違って、リモートの場合には、上半身、場合によっては肩口から上、それも正面方向だけの相手に写らない。生身の姿と違って、体や表情や声から伝わる程度も格段に低下する。その分、説明力の7つの手法が相手に与えるパワーは高まる。

今、対面でのコミュニケーションが難しい状況下だからこそ、自分の説明力を見直してみてはどうだろうか。 リモートで役立つ手法ではあるもののも、対面でも十分に効果がある手法なので、ぜひ試してみてほしい。

文:山口 博